山形市の東北芸術工科大学では2025年2月6日から卒業制作展が始まり、学生たちの個性が光る500以上の作品が並んだ。

プロダクトで「不便さ」解消へ

東北芸術工科大学のキャンパス全体が会場となる「卒展」。2025年は、2学部16学科の548人の学びの集大成が並んでいる。

まずは、プロダクトデザイン学科61人の作品がある会場へ。

一見すると義足のよう?実は「松葉づえ」
一見すると義足のよう?実は「松葉づえ」
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一見、義足のように見える松葉づえを制作した清水颯さん。
かつてバレーボール部に所属していた際、足をけがした時に使う松葉づえを見て、手がふさがれてしまう不便さを感じ、その悩みを解消しようと制作した。

プロダクトデザイン学科・清水颯さん:
バネがあるので推進力があって歩きやすいが、その反面、まだ安定感が足りない。

作者のプロダクトデザイン学科・清水颯さん
作者のプロダクトデザイン学科・清水颯さん

3Dプリンターで部品を作り、軽くて歩きやすい作品に仕上げた。
なぜ「義足」のようなデザインにしたのかについては、「今の義足はおしゃれに、逆に目立たせる。私たちが眼鏡をかけるような感覚で義足をつけようという、悪目立ちさせないデザインが流行っている。病人のように見えてしまう松葉づえにも応用できたらと思って」と語った。

「一番気持ち良い」を試行錯誤

続いて、デザインが特徴的な椅子。

特徴的なデザインのイス
特徴的なデザインのイス

背もたれが20本の木材でできていて、座ってみると、ソファのように柔らかい。1本1本が背中にフィットして、気持ちよく座ることができる。

「ウィンザーチェア」からインスピレーションを受け、長さの違う木の棒を背もたれに使用している
「ウィンザーチェア」からインスピレーションを受け、長さの違う木の棒を背もたれに使用している

大学の講義で学んだイギリスの伝統的な椅子「ウィンザーチェア」からインスピレーションを受け、3種類の長さの木の棒を組み合わせて制作したという作者の村田海さんは、作品について「ウィンザーチェアは棒に笠木といって、上に支える木をつけるが、そうすると背中に動きがなくなってしまうので、伝統的なデザインはある程度残しつつ自分の研究にあった椅子を作るために、支えがないベンチを作った」と説明。

体を細い棒だけで支えるため、すぐに壊れてしまいそうな不安もあったそうだが、「何本の棒で作れば一番気持ち良く座れるか」アンケートをとりながら、何度も検討を重ね完成させた。

作者のプロダクトデザイン学科・村田海さん
作者のプロダクトデザイン学科・村田海さん

プロダクトデザイン学科・村田海さん:
人に座ってもらって初めてわかるというのもあるし、最初に座ってもらった時はとても怖かったが、実際座ってもらうと「気持ちいい」と言ってもらえて、涙が出そうなくらいうれしい思い。

集大成として「人生最大の絵を」

大きな絵画が出迎えてくれる建物の中には、日本画や洋画が展示されている。

洋画コース39人の作品の中で最優秀賞に輝いたのは、縦3メートル・横8メートルの大きな虎が目を引く作品。制作期間は約2カ月半だという。
虎の先にあるチョウは「未来」を表していて、この先の人生に対する不安に負けないよう、にらみつける虎の表情が繊細に・鮮やかに描かれている。

作品を制作した美術科・洋画コースの吉田ひなのさん
作品を制作した美術科・洋画コースの吉田ひなのさん

美術科の吉田ひなのさんは、「壁に布を貼りつけて、脚立に上りながらヘルメットをかぶって描いた。離れて見ながら描いた方がバランスがとれるが、スペースも限られているので難しいところはたくさんあった」と制作時のことを振り返った。

大迫力の大きさと、毛並み一本まで細かく描かれた作品に、「すごく細かくてきれい」「目・口の中が細かく色が塗られていて、写真とかではなく本物みたい」「大きな絵で迫力があって、顎あたりに白い毛が細かく描かれていてすごい」など、会場を訪れる人たちも引き込まれていた。

学生最後の集大成として、誰よりも目を引く、人生で最大の絵を描きたかったという吉田さん。

来場者の中には「購入したい」と話す人もいるそうで、「褒めてもらうことが多くて、一生懸命かじりついて頑張ったかいがある。恐縮です」と笑顔を見せた。

4年間学んできた「学びの集大成」にかける学生たちの思いや熱意を感じられる卒業制作展は、2月11日まで開かれている。期間中に足を運んでみてはいかがだろうか。

(さくらんぼテレビ)

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