産直通販サイト「食べチョク」で評価の高い生産者を選ぶ「食べチョクアワード2024」で、広島県呉市の「石野水産」が全国1万以上の生産者の中から“総合1位”に輝いた。シラスやひじきなど島の恵みを活かした水産物と、家族の手作業にこだわった製法が全国の消費者の心をつかんでいる。

目立たないが、リピート率、評価が高い

1月21日、産直通販サイト「食べチョク」の「食べチョクアワード2024」で、広島県呉市倉橋町の「石野水産」が1位を獲得した。

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「食べチョク」は、全国の生産者と消費者を直接つなぐ日本最大級のオンライン直売サービスだ。年間を通じてリピート率や顧客評価をもとに最も支持された生産者が選ばれる。

石野水産が扱うのは、ちりめんや釜揚げシラス、乾燥ひじきといった海産物。家族経営で代々受け継がれてきた小さな業者が、なぜ全国1位に選ばれたのか?

「寒ひじき」こだわりの漁と加工が全国の食卓を魅了

1月31日午前2時半。石野水産の社長・石野忠勝さんが船を出し、目指すのは海藻の宝庫の岩場。

収穫されるのは、この時期にしか獲れない「寒ひじき」。

「瀬戸内海のひじきは潮の流れが緩やかなせいで、細めで、食感が良い」と石野社長。
潮が引くまでの約3時間が勝負。この日は3人がかりで約500kgのひじきを収穫した。

ひじきを薪で釜茹で
ひじきを薪で釜茹で

数日後、石野社長は海岸で朝から釜炊きの作業に追われていた。乾燥させたひじきを水で洗った後、えぐみや磯臭さを抜くために、薪を使って釜茹でする。薪で炊くことで風味がひじきに移るそうだ。この薪炊きのひと手間が、石野水産のひじきをより美味しくする“秘訣”だ。

石野社長は「気に入るものを作ろうと思ったら、手をかけないと。ちょっとの油断で失敗したりするので」といい味を出すための労はいとわない。

このおいしさを素早く全国に知らせたいという思いを実現したのは、商品の販売を担当する石野智恵さんだ。

島の魅力を全国へ!ネット販売で地方活性化

これまでは地元の市場や業者を通じた販売が主だったが、石野智恵さんが中心となり、お客さんと直接やり取りができる産直通販サイト「食べチョク」に参入した。

「この島には観光客が来るような場所はないが、インターネットを通じて全国のお客さんとつながれる」と智恵さんは「食べチョク」の効果を強調する。

「食べチョク」では、購入者が生産者に対してレビューを投稿したり、SNSのように購入者と生産者が直接やり取りできる掲示板機能があるが、商品に対する“こだわり”と、親近感の湧く“コミュニケーション”で高いリピート率を獲得し、「総合1位」という栄冠につながったのだろう。

智恵さんは「外から来た人の声で、自分たちの魅力に気付けるようになった。もっと呉やこの島を知ってもらいたい」と受賞を機に、島の魅力をもっと発信していきたいという。

生産者のこだわりや手間は、商品を見ただけでは伝わらないが、ネット上でその顔やビハインド・ストーリーが見えると、消費者とのパイプが一挙に太くなる。人口減少が進む地域にとっては、自分たちの日常に思わぬ付加価値があることを気づかせてくれる。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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