しかし、これまでにボイトレの生徒さんで、声のエネルギー源を「呼吸」と答えた人はほんのひとにぎりでした。

それほど、呼吸は当たり前すぎて、意識しない存在になっているのです。

そもそも、声が出るしくみをご存じでしょうか?

しっかり息を吸って

私たちの声は、息の力で声帯をぶるぶる振るわせて生まれます。

話すためには、しっかりと息を吸うことが重要です。にもかかわらず、息を十分に吸わずに話しはじめる人がとても多いと感じます。プロでもほとんどの人が気づいていません。

当然、私のボイトレに来る人たちも、「話す前に息をしてくださいね」と教えるととまどいます。

話し始める前はしっかり息を吸うこと(画像:イメージ)
話し始める前はしっかり息を吸うこと(画像:イメージ)

十分に息を吸わずに声を出すのは、車にガソリンをほとんど入れずに走り出すようなもの。

声の小さい人、通らない人はまず、目の前にある「自然の恵み」=「空気」をいつもより3〜5倍吸うことを心がけましょう。それだけで声はよくなります。

うまく息が吸えない人という人は、次の例文を歌わずに読んでみてください。

【さいた さいた チューリップの花が】

いつも通りの声ですね。

今度は、これを歌詞として歌ってみてください。

すると、「さいた」の「さ」と歌い出す前に、自然と「スーッ」と息を吸ったのではないでしょうか? 

この感じで息を吸って話をするだけでも、「伝わる声」に近づきます。

このように、無意識にしていた呼吸を意識的に整えることが、「伝わる声」への第1歩なのです。

『あなたの話が「伝わらない」のは声のせい』(飛鳥新社)

墨屋那津子
アナウンサー(元NHK)/キャリアカウンセラー
30年以上にわたる幅広い経験を通じて培った「声のキャリア」と「声の原則」を基盤に、声の出し方を変えることで誰でも瞬時に「伝わる話し方」を実現する「スミヤメソッド」を確立。「自分本来の声」を最大限に引き出し、声の力で多くの人の課題解決に貢献。人生を好転させるサポートをしている。

墨屋那津子
墨屋那津子

アナウンサー(元NHK)/キャリアカウンセラー
石川県生まれ。NHK『おはよう日本』『ニュースウオッチ9』ニュースリーダー、NHK Eテレ『100 分de名著』語り手などで活躍。30年以上にわたる幅広い経験を通じて培った「声のキャリア」と「声の原則」を基盤に、声の出し方を変えることで誰でも瞬時に「伝わる話し方」を実現する「スミヤメソッド」を確立。「自分本来の声」を最大限に引き出し、声の力で多くの人の課題解決に貢献。人生を好転させるサポートをしている。即効性が特徴で、「同じ話をしても印象が変わる」「滑舌が劇的に改善」「話し方に説得力がついた」と評判を呼び、口コミだけで2,000人以上が受講。また、カナダ・トロント大学と専修大学で実践的講義を行う。企業のコミュニケーション顧問やセミナー講師も務める。国内外のCEO、要人、アナウンサー、ナレーター、会社員、学生など幅広い受講者の声を変えてきた実績がある。伝統工芸「真田紐」の織元の家に生まれ、2男1女の母でもある。