今関心の高い話題を詳しく解説する急上昇ニュースのコーナーです。今回は、有害性が指摘されている有機フッ素化合物PFASが岡山県の吉備中央町の浄水場から基準値を超えて検出された問題についてお伝えします。
2023年10月、岡山県吉備中央町の円城浄水場の水から発がん性などの有害性が指摘されている有機フッ素化合物、PFASが国の暫定目標値を超えて検出されていたことが発覚しました。
国の暫定目標値は飲料水1リットル当たり50ナノグラム。吉備中央町ではその28倍の高濃度のPFASが検出されました。町が設置した有識者委員会は2024年、水源近くに置かれていた使用済み活性炭が原因と結論付けました。
PFASとは優れた撥水性や耐熱性を持つ化学物質で調理器具のコーティング剤など多くの製品に使用されています。PFASの中でも特に、PFOAやPFOSなどと呼ばれる物質は有害性が指摘されています。
京都大学大学院の原田浩二准教授はこれらの物質による人への健康リスクについてこう話します。
(京都大学 原田浩二准教授)
「血液中のコレステロールが上昇する。甲状腺に関わる病気、妊娠高血圧症候群、腎臓がんの確率が上がることなどが複数の研究で示されていることから懸念すべきだと言われている」
一方で、個人への影響を調べた十分なデータが蓄積されていないとして、継続的な検査が必要だと指摘します。
(キャスター)
ここからは担当の森岡さんに解説してもらいます。問題となった円城浄水場の水を実際に飲んでいた住民にとっては非常に不安ですよね。
(森岡紗衣記者)
「吉備中央町はこの問題が発覚してから、住民説明会や有識者による原因究明委員会などを設置するなどの対応を取ってきました。現在は、安全性が証明された水道水が供給されているということですが、やはり、長年飲料水として使用してきた住民らには、健康リスクへの懸念や作物の風評被害など多くの不安があるのが現状です。
町は住民からの強い要望を受け、2024年11月に、全国で初めて公費による血液検査の実施に踏み切りました。その結果が先月公表されたのですが、そこで、衝撃的な数値が明らかになりました。」
1月28日、町は会見を開き、2024年11月から12月にかけて公費で実施したPFASの血液検査の結果を公表しました。検査は血中のPFASの濃度を調べるもので、検査を受けたのは円城浄水場の水を飲んだとされる2歳~102歳の住民ら709人。PFASのうち有害性が指摘されるPFOAやPFOSなど7種類について調べた結果、血液1ミリリットル中の平均値は151.5ナノグラムでした。
これはアメリカのガイドラインで、健康リスクが高まるとされている指針値の20ナノグラムを大きく上回っていて、検査を受けた約9割が指針値を上回っていることが分かりました。
(吉備中央町 山本雅則町長)
「思った以上に高いというのが率直な気持ち。今後しっかりと調査する必要がある。」
中でも2歳~12歳の子供も約8割が指針値を超える結果となり、住民からは憤りの声も聞かれました。
(住民は)
「ショックとしか言いようがない。いろんな未来がある中でそれを阻害する可能性があるものを(体内に)取り込んでいることは子供たちが本当に心配」
(キャスター)
「人体への影響がはっきりと分からないのがさらに不安ですよね・・・」
(森岡紗衣記者)
「有害性が指摘されているPFASを巡っては現在、国際的にもその健康リスクが問題視されていて、研究が進められています。
有害性が指摘されているPFASに関して、各国で設けられている基準です。日本ではPFOSとPFOAを合算した数値で水道水1リットル当たり50ナノグラム。一方でアメリカではPFOS、PFOAそれぞれ4ナノグラムと日本に比べて基準が厳しいことがわかります。
ただ、日本でも現在環境省の専門家らによって数値の見直しが検討されています。その一方でPFASが与える健康への影響については世界的に研究が進められているものの知見が少なく、はっきりとどんな影響があるのかが明らかになっていないのが現状です。アメリカやドイツでは既に集団数値としての指針値は示されていますが、あくまで集団の数値なので個人への影響を示したものではありません。
環境省によると影響が明らかになるまでは相当な時間が必要だということで、やはり長期的な検診が必要不可欠であるということです。」