『真相を知りたい』妻の願いの実現へ、一歩前進だ。
森友学園をめぐる公文書改ざん問題。自殺した財務省職員の妻が、国に、『改ざんに関わる文書』の開示を求めた裁判で、大阪高裁は一審判決を取り消し、「逆転勝訴」となった。
■【動画で見る】「森友公文書改ざん問題」の文書不開示訴訟 逆転勝訴で真実に一歩近づく 国の決定取り消す判断
■亡くなった夫のため裁判でたたかってきた妻 逆転勝訴で喜び語る

自殺した赤木俊夫さんの妻・赤木雅子さん:きょう朝、起きた時に何となく、『きょう勝つんちゃうかな』と思った。『きょう勝ってくるよ』と伝えてきたので、だからきょうは(夫は)喜んでくれてると思います。(弁護士の)先生たちを信じてやってこれてよかった喜びですね。先生に対する感謝を感じました。
逆転での勝訴に喜びの言葉を口にするのは、赤木雅子さん。
財務省近畿財務局の職員だった夫・俊夫さん(当時54)の自殺の真相を知るためにたたかってきた。
■財務省が公文書を改ざん・破棄…作業を強いられた赤木さん

その背景にあるのが、8年前の「森友学園公文書改ざん問題」だ。
大阪府豊中市の国有地が、8億円以上値引きして学校法人に売却され、財務省が関連する公文書を改ざん・破棄するという前代未聞の事態。
俊夫さんは、この改ざん作業を強いられていた。
自殺した赤木俊夫さんの妻・赤木雅子さん:『犯罪行為をしてしまった、僕は犯罪者なんだ』、『内閣が吹っ飛ぶようなことをしてしまったんや』とは言っていたので。『死ぬ、死ぬ、もう僕は死ぬんだ』ということばっかり言って。

雅子さんはうつ症状について主治医に説明するため、俊夫さんの様子を撮影していた。
自ら命を絶つ3日前に撮影された動画だ。
<2018年3月亡くなる3日前の動画>
赤木俊夫さん:わし車で出かけるから、それだけ許してくれ。
妻・雅子さん:いけん、絶対に嫌じゃ。
赤木俊夫さん:ほな、一緒に行こう車で。
妻・雅子さん:嫌だ、眠たいのに。すぐ警察呼ぶ。
赤木俊夫さん:車で一緒に行こう。
妻・雅子さん:そんなんで死ぬって、頭おかしくなってるよ。
■真実を知るため『改ざんに関わる文書』の開示を求めた裁判 1審では敗訴

財務省は調査報告書で、当時の佐川宣寿理財局長が、「改ざんの方向性を決定づけた」と結論付けたが、『いつ・誰が・どのような』指示を出して、改ざんが進んでいったのか、その詳細は今もなお明らかになっていない。
こうした状況で、雅子さんが真実を知るための手段が2つの裁判だ。
佐川元理財局長に対し損害賠償を求める裁判は現在、最高裁判所へ上告中。
そして30日、大阪高等裁判所で判決が言い渡されたのは、改ざんについての文書の開示を求める裁判。
赤木さんの当時の上司(実際の音声):例えば、データとかあったとは思うんですけど、隠さず、全部(検察に)出てますから。
雅子さんは、財務省と近畿財務局に対し、検察に任意で提出したとみられる文書の開示を求めまたが、返ってきたのは「不開示決定」。
「捜査に支障がある」として、国はそうした文書が有るかないかも明かさなかった。
そこで雅子さんは、国に対し決定を取り消すよう求めて裁判を起こしたが、1審では国の主張が全面的に認められ、敗訴。
■2審判決では「不開示決定は違法」と逆転勝訴

こうして、迎えた30日の2審判決。
大阪高裁 牧賢二裁判長:原判決を取り消す。行政文書の不開示決定を取り消す。
大阪高裁は、そもそも国が文書の有無を明かさないことについて、「法律では、文書の存在を明らかにした上で、開示か不開示を決めることが原則」、「例外的に存否を明かさない場合であっても、行政機関長の裁量で決められない」と指摘。
また、国側の「開示することで捜査に影響が出る」という主張については、「事件は不起訴処分がなされ、捜査は終結しているため、支障を及ぼす恐れがあるとはいえない」とした。
そのうえで「文書は不開示とする」国側の決定を認めた1審判決を破棄し、国に対し不開示決定は違法として取り消すよう命じた。
■「喜んでだけはいられない」と事件から8年 ようやく真相に一歩近づく

1審からの逆転勝訴。
この瞬間、弁護士から握手を求められ、勝ったことに気づいた雅子さんは、弁護士とがっちり手を握りながら涙を流し判決を聞いていた。
自殺した赤木俊夫さんの妻・赤木雅子さん:今まで苦労してきたことが、ちょっと報われたような気がしました。ただ、これからまだあるので、喜んでだけはいられないと思います。改ざんは、なぜ夫のところまできて、することになったのか、発案したのは誰か、何のために改ざんしたのか知りたいです。
事件から8年、ようやく真相に一歩近づく判断が示された。
今後、国の対応が注目される。
(関西テレビ「newsランナー」2025年1月30日放送)
厚生労働大臣指定法人・いのち支える自殺対策推進センター
https://jscp.or.jp/lp/selfcare/