長野県南部の売木村には、人口472人の村で唯一のガソリンスタンドがある。ガソリン価格の高騰により経営は厳しさを増しているが、村の補助を受けながら運営を続けている。冬場も車の給油や灯油の購入のため1日に20~30人が訪れるこのスタンドは、地域にとって欠かせないインフラとなっている。村民からは「使って残したい」という声が上がっている。
「ギリギリの利益水準」
売木村の中心にある「うるぎ600道の駅前PS」。
1月21日時点でのレギュラーガソリン価格は1リットルあたり193円。価格高騰の波が押し寄せている。
うるぎ600道の駅前PS・後藤文登所長(66)は「過疎地の人口が少ないスタンドとしては(高騰は)すごいマイナスだなと思う」と語る。

70代の村民は「(昔は)1リットル100円くらいが普通だったのは、倍近くになってきました。この地方は車がないとやっていけないし」と価格上昇に戸惑いを隠せない様子だ。
村民有志が運営引き継ぐ
2014年、設備の老朽化を理由に当時営業していた唯一のスタンドが撤退の危機に直面した際、村民有志が「残す会」を立ち上げ運営を引き継いだ。
後藤所長は当時、「なくてはいけないと存続を考えた。(村は)Iターンの人も多い。村に来て住もうかと思った時にガソリンスタンドもないのかと思われたらマイナス」と語る。

2020年には国内初の「地上タンクのスタンド」に生まれ変わり、営業を続けてきた。
全国3位のSS過疎地割合
長野県では全町村の45.5%にあたる35町村でガソリンスタンドが3カ所以下の「SS過疎地」に該当し、これは全国3番目の高さだ。
中山間部で高齢化が進む地域が多く、利用者は少ないものの、住民の暮らしに欠かせないインフラの一部となっている。

村民からは「ガソリンだけじゃなくて灯油も当然、暖房に使うから本当に重要です」「村に唯一しかないし、ここがないと困るからみんなの支えになっている」といった声が聞かれた。
経営維持に向けた取り組み
長野県のガソリン価格は1月27日の調査でレギュラーが1リットル193.7円で全国2番目の高さだ。
県と石油商業組合の意見交換では、県内の価格が高い理由として、製油所からの距離や中山間地での販売量の少なさなどが挙げられた。
組合側は「経営の統合などでコスト削減、価格抑制に向けて努力したい」としている。

売木村のスタンドは村からの補助金もあり、何とか経営を維持しているものの、ガソリン価格の高騰でさらに厳しさを増している。

後藤所長は「こっちとしてはギリギリの利益水準でやっているもので、これ以上は下げられない。(村民に)ぜひ使っていただきたい、それしかないですね」と訴えている。
村の大切なインフラを守るため、地域全体での支援が求められている。
(長野放送)