長野市が動物愛護のためのふるさと納税を再開し、犬や猫の殺処分ゼロを目指す取り組みを進めている。寄附金は保護された動物の治療費や、猫の繁殖制限事業に充てられ、過剰繁殖問題の解決に向けた活動が行われている。市は2018年度以降、不要な殺処分をゼロに抑え、2024年度には猫の収容数も減少傾向にある。一方で、路上で命を落とす猫も多く、市は去勢・不妊手術への助成を増やすなど、さらなる対策を講じている。
「毛玉だらけ」から柔和な表情に
2024年11月、長野市内で推定10歳の耳の聞こえないオス猫「雷」(仮名)が保護された。
保護ボランティアの後藤久美さんは当時の状況を「毛玉だらけで糞尿まみれ、臭いもすごかったので、ガリガリに痩せていましたし、表情もないというか」と振り返る。

全身の毛を短く刈り、動物病院での治療を経て、「雷」は少しずつ回復。後藤さんは「表情も柔らかくなったし、世話にくると、『うれしい、来てくれた』って喜んでくれるようになった」と変化を語る。
ふるさと納税で2億円超え
長野市は2018年度に全国の自治体に先駆けて動物愛護のふるさと納税をスタートさせた。
4年間で2億4800万円余りが集まり、老朽化した犬舎の改修や猫舎の建設にも活用された。

2024年度の予算2200万円のうち、約6割は猫の繁殖制限事業に充てられている。
年間2500匹の猫に不妊手術
しんけん動物病院の松木信賢獣医師は、移動手術車で各地を回り、野良猫や地域猫の去勢・不妊手術を行っている。
年間約2500匹の手術を実施し、「殺処分」をなくすことが目的だ。

松木医師は「地域におけるネコの過剰繁殖が問題になっていて、多頭飼育崩壊であったり、糞尿、環境被害の相談が非常に多かった。そこに関して(獣医師として)お手伝いしたい」と語る。
路上で命を落とす猫も
市内では2023年度、保護した数よりも多い224匹の猫が路上で命を落とした。
これを受けて市は2024年度から去勢・不妊手術への助成を増額。オスは1万円、メスは1万3000円とし、住民の負担をなくした。

その結果、2024年度の手術件数は200件増え、1100件になる見込みだ。
「命を守るプロジェクト」
松木医師は「(問題解決へ)舵をしっかり切られたので、ぜひ、成し遂げてもらいたい。命を守るプロジェクトを完遂させてもらいたいという強い思いでいます」と期待を寄せる。

長野市動物愛護センターの関口徳之課長補佐は「長野市は長く"殺処分ゼロ"を目指して取り組んでいます。今後もそれを維持するため協力いただければと思っています」と呼びかけている。
(長野放送)