2025年1月13日午後9時19分ごろ、日向灘を震源とする最大震度5弱の地震が発生した。発生当初は「津波なし」と出たものの、10分後には「津波注意報」が発表されるなど、情報が錯綜したのはなぜか?さらに、1996年の2つの地震との関連も気になる。京都大学防災研究所 宮崎観測所の山下裕亮助教に、今回の地震について詳しく聞いた。
地震直後、情報が錯綜

13日の地震の情報発表の時系列を整理すると、最初の発表ではマグニチュード6.4だったが、19分後に6.4から6.9に更新。最終的には6.6に更新された。また、発生直後は「津波の心配なし」と出たが、その10分後に「津波注意報」が発表された。こういった変更は、なぜ起きたのか?

京都大学防災研究所宮崎観測所 山下裕亮助教:
今回の地震は、おそらく複雑な地震の起こり方をしている。気象庁は頑張って早く情報を出そうとする。最初のマグニチュードはかなり過小評価になってしまい「津波の心配なし」になったが、後から精査したらマグニチュードが大きくなったので、「津波注意報が出た」ということだと思う。こういうことは、よくあるとは言わないが、たまに起こることではある。
今回を教訓に、「津波の心配なし」と出た後でも10分ぐらいは「津波注意報」が出る可能性があるという意識は持っておいたほうが良さそうだ。
5カ月前の地震、そして28年前の地震との関連は

京都大学防災研究所宮崎観測所 山下裕亮助教:
今回の地震は陸に近い場所で発生した。そのすぐ南東に、約5カ月前(8月8日)の地震の震源がある。かなり近いところで地震が起こったことがわかる。
日向灘では、28年あまり前の1996年10月と12月、立て続けに2回の地震が発生している。2つの地震を合わせてマグニチュード7ぐらいの規模だった。山下助教によると、今回の地震は5カ月前(8月8日)の地震発生時に、「割れ残り」と言っていた1996年12月の領域のど真ん中で発生した。
京都大学防災研究所宮崎観測所 山下裕亮助教:
今回の地震は、1996年10月と12月の領域を破壊し尽くした可能性がある。つまり、「割れ残り」と考えられる部分が、今回の地震である程度は力を解消したのではないかと見ている。
解消されたならば…今後は大きな地震の心配ないのでは?と考えてしまうが、山下助教は、「ここは非常に慎重になるべき。全体が本当に力を解消したかどうか、今の段階では判断するのが難しい。今後いろんな解析結果を精査して、本当に全部解消しきったのかどうかを確認していく必要がある。」と話す。“解消しきってない”という前提で、引き続き対策をとっていただくことが重要と言う事だ。
南海トラフ地震臨時情報は「調査終了」

今回の地震で気象庁は、南海トラフ地震臨時情報(調査中)を発表した。その後専門家による評価検討委員会を開き、調査の結果、「南海トラフ沿いで大規模地震が発生する可能性が平常時と比べて高まっていない」と結論づけて、調査を終了した。

「南海トラフ地震臨時情報」が出るのは2024年の8月に続いて2回目だが、視聴者の皆さんに“臨時情報を理解できているか?”というアンケートを行ったところ、“理解できている”か否かで半々ぐらいの結果となった。

また、8月地震の発生を受けて、“安全な行動を取れたか?”については、半数以上が“行動できた”“迅速に行動できた”と回答している。5カ月前の地震が教訓となり、迅速な行動につながったと言えそうだ。
視聴者からのメッセージ
宮崎市の30代女性から、「海岸沿いに住んでいるので、避難する基準を知りたい。」という質問を頂いた。山下助教は、「自宅がどういう場所にあるのか、海岸近くなのか、ちょっと離れているのか、マンションなのか、木造の一軒家なのか、これによって変わっていくが、まず前提としては、津波警報が出たら必ず避難してほしい。」と話す。

京都大学防災研究所宮崎観測所 山下裕亮助教:
どんなお住まいに住んでいても、「津波警報」が出たら安全な場所に避難する。「津波注意報」の場合は基本1メートルが前提なので、1メートルの津波で危ないところであれば避難した方がいいし、例えばマンションの2階にお住まいだったら、避難しなくてもいい。自分が住んでいる場所をよく理解して、自分の家が安全なのかどうかをこの機会にしっかり確認していただくことが大事だと思う。
空振りになってもいいと思って避難することも大事。危ないと思ったらもう避難していただくのが一番いいという事だ。
(山下裕亮助教)
京都大学防災研究所宮崎観測所。観測地震学が専門。日向灘の地震などを研究している。
(テレビ宮崎)