国では年収の壁や国民の手取り額を増やすことが議論されているが東京都の小池知事は、手取り時間を増やす目標を打ち出した。

1月6日、職員向けの年頭あいさつで、2025年のキーワードに「手取り時間」を挙げ、次のように述べた。

小池知事:
1日24時間0分0秒の時間をいかに節約し、スムーズな流れのなかに都民の自分時間、「手取り“時間”を増やす」か。デジタルの力が有効です。例えば、子供DXの保活ワンストップサービスは、面倒な手続きを一気に短縮できると、仕事に、子育てに忙しいカップルから大変好評をいただいております。これを局や分野を越えた「政策DX」とし、さらには、国や都、区市町村といった組織に横串・縦串を刺す業務改革をすることであります。職員の皆さんの“時間”も、これによって有効に活かせます。

保活ワンストップサービスは、保育園探しの手間と時間を省略できるスマホとDXを活用したサービスのことで、仕事と育児に追われる保護者にとって、保育園探しに充てていた時間が、別の目的に使える時間になる、つまり、「手取り時間」を増やすことを可能にした。

小池知事はDXをさらに発展させ、煩雑な手続きや申請、申し込みなどを時間と労力を使わなくてもできるようにすることで、1人1人の手取り時間を増やすことを2025年の目標として掲げた。

そして、小池知事は、フジテレビの単独インタビューに対して「手取り時間」を増やすことで、クールビズを越える行動変容が起こる可能性を示唆した。

行動変容とは、人々の行動や習慣が変化し、その変化が社会一般的に定着していくこと。

小池知事が提唱したクールビズは、どんなに暑くてもネクタイ姿で歩いていたサラリーマンの生活様式・習慣を一変させ、ノーネクタイを社会一般的に定着させた。

地球温暖化への抜本的対策のなかで、社会的習慣を変えることに成功した世界的に見ても稀有な成功事例だ。

小池知事は、今回の「手取り時間」が新たな行動変容をもたらすというのだ。

小池知事:
むしろね、世界の先を行っちゃってる部分があると思うんですが、結局1日24時間の時間が有効に使えるというのは、これは時間ボーナスになるんじゃないでしょうか。デジタルを東京風にアレンジして、デジタルで都民の時間をしっかりと作っていきたい。手取り時間を増やしたい、これを職員にも徹底して、それは結局、東京のこの都庁で働く職員の皆さんの仕事も効率化されていく。それを国とも一緒に横展開していくことによって、日本全体にそれが使われるということになると思います。

都庁の仕事も効率化され、手取り時間が増えれば都庁職員の残業も減り、趣味や自己研鑽に充てることができるようになる。

もし、都庁で働く時間を3時間減らすことができれば、午後出勤でよくなる。

たとえば、夏の期間は、気温が高くなる時間をさけて午前帯か夕方に出勤するなどということが可能になれば、省エネ対策や、地球温暖化対策の1つになりえるかもしれない。

手取り時間が増えることで、我々の生活がどのように変化していくのか、東京版DXの今後に注目していきたい。

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。