保健所などによると、東京都内の大きな繁華街がある新宿区、渋谷区、台東区、千代田区などでネズミが急増中だという。

千代田区では、道路などでネズミの死骸が発見され回収された件数が、2022年度は154件だったのが23年度は333件に、24年度は8月までで177件とさらに数が増えそうな状況だ。
そのため、千代田区では、ネズミの生息数を把握するため、定期的に実態調査を行っている。
11月末、保健所、清掃事務所などの職員らが町会長とともに現場へ向かう。
調査方法は、えさを入れた箱を設置して、かじられた回数を調べることで、周辺にいるネズミの数を把握するというものだ。

現場に行ってみると、飲食店から出されたゴミ袋に穴が空いていた。
ネズミの巣がある場所とは…
ネズミにかじられた跡だという。実に多くのごみ袋にネズミがかじった痕跡がみつかった。
ゴミとして出された残飯がネズミたちのえさになっているのは間違いなさそうだ。
現場調査に同行した保健所の職員が、「周辺のどこかにネズミの巣があるはずだ」と言って、探し始めた。
ネズミは1.5センチの隙間があれば出入りができる。
巣は、割れたコンクリートの裂け目、ビルとビルの狭い隙間、道路脇の植栽など土がむき出しの場所にあることが多いという。
巣穴から、下水管を使っていろいろな場所に行き来している可能性があるほか、地下鉄など温かい空気があるところも、好んで巣をつくる習性があるそうだ。保健所では巣穴をコンクリートなどで固めたり、殺鼠剤を使ったりして駆除する。

現場で、保健所の人がネズミの巣のありそうな場所をみつけた。
ひとが1人通れるかどうかの、狭いビルとビルの隙間だった。一同が隙間に入ろうとしたそのとき。
「きゃー」職員の並木さんの叫び声が聞こえ、物陰に隠れていた大きめのネズミ2匹を視認。
体長40センチ超の特大ネズミも出現
騒ぎに驚いたネズミたちは姿をくらまし、どこかへ行ってしまった。
捕獲される懸念が少ないからなのか、ネズミたちは、日中にもかかわらず、人の往来のあるすぐ近くまで出ているようだ。
大きさも巨大化しているようで、体重454グラム、体長43.7センチの“特大ネズミ”も出現している。

樋口高顕千代田区長は、「ネズミ問題は経済的損失や区民の安全にもかかわる」として、ネズミ駆除の現場で陣頭指揮をとっている。
「ごみを放置しないこと」が重要に
ある町の町会長も、「区長が顔を出してくれると、飲食店や町会の皆さんの団結力が上がる。対策にとても協力してくれています」と話す。
樋口区長は、「ネズミは『サルモネラ菌』などの細菌を媒介する衛生上の問題や配管とか電線をかじるということで経済的な損失もあります。区内では10月に神田駅でネズミの体を通して通電したと思われる火事も発生しました。
また、寝たきりの高齢者の方が室内に入ってきたネズミを追い払うことができず、体をかじられてしまったという事例の報告を受けています。ネズミの被害を防ぐためには、極めて具体的に取り組まなければいけないと考えています。
大きくは2つです。とにかく餌場となるごみを放置しないこと。2つ目は隠れ家となるような巣をなくしていくことです」と話す。

この町会では、飲食店などが決められた時間にゴミを出すことにしたほか、ごみ袋の路上出し原則禁止、ネズミが入れないように、ごみをふた付き容器に入れて出すことに変えた。
区の清掃事務所、保健所、そして飲食店を含む地域が一体となった取り組みを行うことで効果を上げている。
対策のポイントは、ネズミにえさを与えないこと。
ネズミはえさと巣があれば、どんどん増え続けるので早めの対策と継続的な対策が重要だ。
(執筆:フジテレビ社会部 大塚隆広)