2024年、鹿児島の気象・自然は、“異常”や“運用統計開始以来初”という言葉で形容されることが多い、異例ずくめで不安定な年だった。悪影響は、鹿児島の特産品であるフルーツや野菜にも及び、価格も高騰した。
11月の大雨特別警報 前例のない事態
解析雨量は1時間に120mm以上…それは他のあらゆる音を覆いつくす轟音(ごうおん)だった。道路に激しく打ちつける雨、氾濫した川。

11月9日未明、与論町に線状降水帯が発生、解析雨量は1時間に120mm以上となり、気象庁は大雨特別警報を発表した。2013年の運用開始以来、11月に大雨特別警報が出されるのも、与論町のある鹿児島・奄美地方に大雨特別警報が出されるのも、これが初めてだった。

この大雨による人的被害はなかったが、雨が上がった与論町内には無残な光景が広がっていた。地元の商店には、店内まで泥水が押し寄せ、片付け作業が行われていた。

「まさかこんなにすごいことになるとはね」「恐怖しかなかった」とぼう然とする住民たち。大隅半島の肝付町では、10月に記録的短時間大雨情報が出されるなど、梅雨以外の時期でも大雨が起こることを見せつけた。
統計開始以来、最多の猛暑日
大雨とは正反対の、熱い日差し。これもまた、2024年の鹿児島の気象を象徴する出来事だった。日傘をさしたり、日焼け止めを塗っても、照りつける日差しの強さは耐えがたいものだった。

鹿児島市で35度以上の猛暑日となった日数は、7月が13日間、8月が26日間。いずれも1883年の統計開始以来、最多となった。
農作物にも影響…キャベツ価格は約3倍に
異常な暑さは農作物にも悪影響を与えた。

奄美大島・瀬戸内町の特産品パッションフルーツは、全体的に色ムラが早くなったり、果実が軟化していく現象が発生していた。生産農家によると、「いい色づきをしているものは、探すことが困難」とのことだった。

同じく奄美大島・宇検村のタンカンは、強い日差しで実の一部が黄色くなっていた。「商品価値ゼロ。出荷できない。(表面が)焼けている」と生産者は落胆していた。

暑さは11月になっても影響を及ぼし続けた。指宿市のキャベツ農家は、高温多湿に伴う虫の発生や病気で、1割から2割が影響を受けていた。「とろけてしまっているというか、なくなってしまう」と語るキャベツの被害は甚大だった。
加えて、猛暑で植え付けが遅れたために品薄が加速し、それまで1玉150円前後だったキャベツが480円に値上がりしたこともあった。スーパーで野菜を品出し中のスタッフは、「作物が育ちにくい環境になっていって、今からも相場的にそんなに安くはならないのでは」と先行きを懸念した。
過去最強クラスの台風10号が直撃
8月、台風10号が鹿児島を直撃した。中心気圧は最大で935ヘクトパスカル。九州南部に接近する台風としては、過去最強クラスだった。

「枕崎市です。体がよろつくほどの風が吹いていて、ホテルの天井はパネルが剥がれているのが確認できます」「冠水した道路が川のようになってしまっています。ガードレールは三分の一ほどが水につかっています」ニュース映像に残る記者の生々しいリポート。台風の脅威を物語っていた。
推定樹齢3000年の弥生杉が倒壊
台風10号により、鹿児島県内では1人が死亡、22人が重軽傷を負った。

また、台風による強風は、屋久島の弥生杉を根元からへし折った。無残な姿をさらす太さ7.6メートル、推定樹齢3000年の巨木。自然の猛威を見せつけるかのような光景だった。
大崎町で震度5強の地震発生
8月8日夕刻、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。
宮崎県と境を接する志布志市では、幅約30メートル、高さ約50メートルに渡って土砂が崩れ、鹿児島テレビ(本社・鹿児島市)の報道フロアでも、下から突き上げるような揺れを感じた。

県内で観測された最大震度は大崎町の震度5強。4人が軽いけがをしたほか、住宅5棟が損傷するなど、地震は大隅半島を中心に被害をもたらした。

気象庁は、南海トラフ地震の臨時情報「巨大地震注意」を初めて発表。この地震はいずれ起こるとされる南海トラフ地震を、私たちに強く意識させるものとなった。
大雨・猛暑・台風・地震。鹿児島は2024年、様々な自然災害に直面した。またこれらの災害は、過去の観測・統計データから予測することが難しい事象が目立った。
地球温暖化が進むことよって、今後も予測困難な災害の発生が想定されると思われる。私たちにとって大切なことは、このことをしっかり受け止め、日頃から十分な防災への備えを心がけることではないだろうか。
(鹿児島テレビ)