77人が犠牲となった広島土砂災害から10年がたち、改めて防災の重要性が叫ばれる中、広島市安佐南区では、学生と地域が連携し、土砂災害の教訓を呼び起こす防災イベントを企画した。

学生と地域がつくる防災の「結」

広島市安佐南区は、2014年の広島土砂災害で大きな被害が出た。

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ここにキャンパスがある広島経済大学は学生が地域と連携し防災をテーマにしたイベントを企画し、11月に開催した。テーマは「結」。地域住民とつながりながら、防災意識を高めることを目指したテーマだ。

大学と安佐南区の社会福祉協議会は2023年に地域連携協力協定を結び、災害時には学生がボランティアとして活動することなど、備えを共に考える取り組みを開始。

その一環として、今回のイベントでは社協や地域のボランティア団体と連携し、土砂災害を振り返るパネル展示やボランティア相談ブースを設置した。

イベント実行委員長の和田健人さんは「自分たちが風化させないという思いが強い」として、土砂災害の教訓を生かし、地域での防災意識の向上がイベントの意図だと説明する。

防災を体験し「自分事」にする

イベントの学生考案のコーナーには、住民が実際に体験を通じて防災を学べる企画も。

「防災バッグを作る」コーナーでは、避難所に持っていく1日分の非常食など防災グッズの品数や重さを体感することができる。

小学5年生の女の子が「意外といける!」とバッグを持ち上げる一方で、お母さんが「重たい」と驚くなど、家族で避難時の疑似体験をして、防災について考えてもらうのが企画意図だ。

また、牛乳パックを使った笛づくり体験も人気だった。孫と参加した女性は、「楽しいだけでなく、防災について考える良いきっかけになった」と話す。

防災コーナーを企画した学生の伊藤香さんは、「実際に体験してもらうことで印象に残るのでは」と語る。

未来に防災意識をつなぐ種まき

学生たちは、自らも防災について学びを深めようとしている。

2011年の東日本大震災で被災した宮城県仙台市の「海辺の図書館」館長、庄子隆弘さんを招き、地域づくりについて学ぶイベントを12月に企画した。

庄子さんは「非日常が日常になった中でも継続できるような人と場を持ち続けることが、風化を防ぐには大切」としたうえで、「復興の終わりはどこにあるのか」という問いに日々悩みながら活動しているという。

広島土砂災害から10年がたち、防災意識の再確認が求められる中、学生と地域が協力する試みは、防災を「自分事」として考え、いざという時に備えることの重要性を教えてくれる。

(テレビ新広島)

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