新潟市で12月に犯罪被害者支援フォーラムが開かれた。その講演会で弁護士の上谷さくらさんが性暴力の現状について講演した。全国での相談件数は後を絶たず、SNSの普及により低年齢層の被害は増加し続けているという。こうした現状に私たちができることとは…
“性暴力”の現状は…被害者が気付いていない場合も
「無理やり体を触られた」
「電車内で痴漢に遭った」
「性的なことを言われた」
「体を触らせる代わりにお金をもらった」
これらはすべて性暴力である。

同意のない性的な行為だけでなく、断れない状況や、はっきり嫌だと言えない状況で性的な行為があっても、本当の同意とは言えない。
内閣府の調べでは、無理やり性行等を受けた経験がある人が、女性で14人に1人、男性で100人に1人となっている。
「性犯罪に関する刑法改正検討会」の委員をしていた弁護士の上谷さくらさんは、女性の被害を例にとり、「14人のうち13人が性暴力にあったことがない。そんなはずはない。もっとたくさんいる」と訴える。

その理由に、盗撮など、被害者が被害に遭っていることに気付いていない場合があるとした。
SNS普及で被害“低年齢化” 性的同意年齢引き上げも…
また、上谷さんは性暴力の被害が低年齢化していることに強い危機感を覚えている。
2023年、SNSに起因する性犯罪の事案として、被害児童数は139人に上った。2014年と比較して3倍以上に増加している。

上谷さんは、スマートフォンの普及により、小学生でもSNSを利用する今、保護者にこの現状を知ってもらいたいと訴える。
こうした現状を受け、2023年に刑法が改正され、性的同意年齢が引き上げられた。改正前の性的同意年齢は1907年に定められた13歳で、先進国の中でも最も低かった日本。
刑法改正により、16歳まで引き上げられ、16歳未満の子どもに対して、性交等やわいせつな行為をすると、「不同意性交等罪」や「不同意わいせつ罪」として処罰される。
上谷さんは、性的同意年齢の引き上げは大きな進歩だとしているものの、「5歳差要件」という条件がついていることに、反発している。

「5歳差要件」により、被害に遭った人が13歳以上16歳未満の場合でも、相手の年齢が5歳以上離れていなければ、不同意性交等罪などは成立しないのである。
例えば被害者が13歳の子どもであれば、相手が18歳以上の人に対してのみ罰則が適用され17歳以下の相手には適用されない。
上谷さんは「5歳以内の年齢差なら性行為をしてもいいと捉えられてしまう。なぜ16歳以上と一律にしないのか」と現行法を非難した。
子どもたちを守るために大人ができることは?
大人が子どもたちを守るためにしてあげられることは何か。上谷さんは、スマートフォンを渡す際の約束事を最初に挙げた。

「約束を守らなかった場合、1週間預かるなど、スマートフォンを渡す前に約束をする。最初に何もしないで渡してしまうと、子どもにとっての既得権益となってしまうため、最初が肝心」
SNSが当たり前となった現代では、裸の画像を要求され、送ってしまうなどの児童ポルノ被害が増加している。こうした被害を防ぐため、スマートフォンの使用には約束事を決めることが大事だと上谷さんは強調する。
また、家庭内で普段から性について話せる環境をつくることも大切である。
身近な関係から性についての会話に、恥ずかしさを覚えるのは当然だが、万が一、自分の子どもが性暴力被害にあっていたら黙っていることはできないと主張する上谷さん。
「『お父さん、お母さん、急に何言っているの?』とならないように、日頃から性に関して話しても大丈夫な環境づくりを心がけることが必要」
大人たちが性被害を軽視せず、国全体で大人が子どもを絶対に守るという意識で、性暴力被害の問題に取り組む必要があるだろう。
(NST新潟総合テレビ)