年明けから12月まで止まらない熊本市電の運行トラブル。12月24日には有識者による最後の検証委員会が開かれた。委員会が最も強く指摘したのは組織内のコミュニケーション不足だった。
起こしたミスを申告できる職場環境づくり
2024年5月、熊本市電の運行トラブル5件が発生した時点で、初会合が開かれた有識者による検証委員会。7月に中間報告書をまとめたあとも、トラブルは続き脱線や信号無視など2024年12月24日までに15件の運行トラブルが発生している。

12月24日は、まず前日に発表された15件目、イチョウの葉で軌道が滑り、交差点で横断歩道を過ぎて停止したインシデントについて意見が出された。

かつて熊本市交通局安全統括管理者を務めた宮崎輝昭委員は「(滑り止めの)砂まきをしていたが、(人手が)足りない時は事務職が出て一緒にやった。滑る箇所が出てきたら、すぐ対応できるようにしてほしい」と述べた。

熊本大学名誉教授(社会心理学)で委員会の吉田道雄会長は運転士が報告していなかったことを重視し、「報告書の検討にも関わるが、『言った方が長い目でみるとプラスになる』という価値観を許容して、『よく言ってくれた』という環境になるかどうか」と意見を述べた。
検証委員会の報告書は年明け市長へ
検証委員会6回目のこの日は、近く提出する最終報告書の案を検討した。熊本市交通局側はインシデントへの長期的対策として、無理のないダイヤ作成など勤務と勤務の間隔が十分確保できる態勢、制服の刷新といった、意識を変えることを促す取り組みなどを新たに示した。

そして委員側も乗務員など職員へ、独自に行ったアンケートをもとに課題を整理した。吉田会長は「(組織内に)正論を言っても通じないという関係が出来上がっている。基本は元々守られないものと考えた方がいい。幻想でありそれが安全のリスクマネジメントだ」と述べた。

宇都宮ライトレール常務取締役・安全統括管理者を務める中尾正俊委員は「組織の風通し。『新聞テレビニュースで知った、なぜ先に我々に言ってくれないのか』と。ちょっとした気遣いをやってもらったら事故はぐっと減る」と指摘した。

また、宮崎委員は「上はどうしても、下の方には『伝えた』と言うが、なぜ下の答えの確認をしないのか。意見のやりとりが不足していたことが、アンケートから分かる」と述べた。

社労士法人TrueWorks代表社員でもある本藤小百合委員は「睡眠の問題がある。信号冒進(信号無視)をした運転士に『脳疲労』を言った人もいた。本当にストレスの原因になると思う。睡眠が2~3時間の時もあるというのは厳しい状況」と、勤怠管理について指摘した。

吉田会長は最終報告書に、職場環境とコミュニケーションの改善、業務負担の軽減と適正な人員配置などについて指摘する考えを示した。

熊本市の井芹和哉市交通事業管理者は「再度いただく報告書の内容を見て、これからの安全対策に間違いなく生かしていきたいと思っています」と述べた。

8カ月に渡って続けてきた熊本市電インシデントの検証、最終報告書は年明けに大西市長へ提出される予定だ。
(テレビ熊本)