物価高、値上げ、家計圧迫、エンゲル係数…こんな言葉が日々目に飛び込んできた2024年。
各社食品メーカーが相次ぐ値上げを発表し、消費は頭打ちとも叫ばれたが、価格が倍以上にもなった「コメ」は買い占めが起きた。結果、スーパーの棚からはコメが消え、さまざまな課題が浮き彫りになった。

その正体とは何だったのか、今後、米の価格はどうなるのかー。

「コメがない」正体と「品薄のワケ」

日本は食料自給率がカロリー基準で38%と、アメリカの104%、フランスの121%と比べ著しく低い。ただ「コメ」はほぼ100%と安定供給の鏡とも言える。

店頭からコメが消えた…
店頭からコメが消えた…
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そんな米が店頭から消えたのはゆゆしき事態だった。
騒動の背景は需要と供給のミスマッチ。

猛暑でコメが白く濁るものが増え、主食用として流通する量が減った。また円安やウクライナ侵攻でその他の食品価格が上がる中、比較的手に取りやすかったコメの消費は上向きになった。

またインバウンド需要に加えて、8月には南海トラフ地震の臨時情報や台風による影響が、消費者の不安を高めコメの買い占めに拍車をかけた。

食品宅配大手「オイシックス」は9月に1年先にとれる「2025年度の新米予約」を始めた
食品宅配大手「オイシックス」は9月に1年先にとれる「2025年度の新米予約」を始めた

こうした中、食品宅配大手「オイシックス」は、9月に1年先にとれる「2025年度の新米予約」を始めた。
コメ不足による不安の高まりから、2024年の新米予約が1.4倍に増えたことを受け、予約開始の予定を大幅に早めたのだという。

ふるさと納税の返礼品も軒並み在庫無しで「受付停止」に。大手スーパーの西友は比較的割安な台湾米の販売を始めた。

問われた農政

品薄が解消しない事態をうけ、農林水産省は「主食用のコメの需給がひっ迫している状況ではない」と説明。新米が出回る前の時期だったことで、その時期に政府の備蓄米まで出回ってしまうと値崩れを起こすとし、「備蓄米は放出しない」と強調した。
その姿勢にSNSでは疑問の声も上がった。

2024年8月30日 坂本前農水大臣は閣議後の会見で「新米が出回れば品薄も解消する」と回答
2024年8月30日 坂本前農水大臣は閣議後の会見で「新米が出回れば品薄も解消する」と回答

農水省は8月27日に卸売業者や小売業者に対し「流通の円滑化」を要請した。
坂本前農水大臣は、要請のタイミングについて「遅きに失したというふうには思っていない」と述べ、「新米が出回れば品薄も解消する」と回答した。

実際に新米が出始めると品薄は回復したものの、価格の高騰が続いた。

今回の混乱では様々な問題が提起されたと考える。中長期的な対策の1つは猛暑対策だ。
高温に耐性のある品種を使うことで流通量の減少を防ぐ事ができただろう。再び品質が下がれば供給量の減少につながる。

いつコメは安くなるのか

当時は一時的と思われていたコメ価格の高騰だが、価格の高止まりが続いている。

11月の店頭価格は前年比6~7割ほど高く、年明けも値下げは見通しづらく全国農業協同組合連合会(JA全農)の担当者は、「少なくとも2025年の新米が流通する時期までは続くだろう」と語る。

新米が流通し始めた後も、流通業者のコメの買い付け競争は激しい状況が続いている。
小売り店など業界関係者の間でもコメ価格が落ち着くことは当面見通せないとの見方が多い。

2024年9月 店頭に並ぶ新米
2024年9月 店頭に並ぶ新米

ただ人口が減り続け、様々な食を楽しめる時代にコメがいつまでも需要が高いとはならないだろう。
なによりもこの騒動で分かったことは、日本のコメ政策がリスクに弱いということ。人口が減っていることや様々な食が楽しめる時代においてコメの需要が減るという見方を前提にした需給予測では、猛暑や予期せぬ災害の需要増に対応しきれなかった。
食料安全保障という点でも改めて強い供給力が急務となる。

砂川萌々菜
砂川萌々菜

フジテレビ報道局経済部記者。2023年7月から記者として活動開始。
農水省・食品・飲料・外食担当。2023年10月の酒税改正時にはビールメーカー各社の動向など取材。