「これでは使えない」という声は多いだろうが、守りの能力が高い小林が打てないのなら、打撃コーチが打てるように教えたらいいではないか。小林だって、2019年シーズンは92試合に出場し、打率.244の成績を残している。

頭角を現したのが岸田だった

岸田も社会人野球の大阪ガスから入団して6年目の28歳で、打力は一定の評価があったが、これまでの最多出場は2023年の46試合だった。

捕手出身の新監督にチャンスをもらった2人のうち、新たに頭角を現したのは岸田だった。88試合に出場し、打率.242、本塁打4、二塁打10、得点圏打率.203。

小林も打率は.152ながら42試合に出場し、前季の21試合から倍増している。6月以降は出場機会が減少し、おもに相性のいい菅野(智之)とバッテリーを組んだ。

この阿部のライバル作戦は、前年まで正捕手だった大城にも刺激を与えた。

今季は開幕から調子が上がらず、5月は3試合出場でノーヒットだったが、6月に一塁に入ってから目が覚めたように復調した。とくに6月23日以降、3番・ヘルナンデス、4番・岡本(和真)、5番・大城のクリーンナップが定着してからは巨人の白星も多くなった。

正捕手争いの焦りとストレスから解放されて、バッティングに集中できたのかもしれない。

なぜ菅野を開幕投手にしなかったのか

私が腑に落ちなかったのは、なぜ開幕投手を菅野智之にしなかったのか、ということだ。

私だったら開幕投手は戸郷翔征ではなく菅野にしていた。いや、巨人の開幕戦にはエースの菅野を使うべきだった。

たしかに最近の戸郷は成長している。2022年からは3年連続で12勝を挙げた。2023年は24試合に登板し、防御率2.38で登板数、投球回、防御率とも菅野を大きく上回ってエースの座を奪い取った。

開幕投手はチームの士気を高めることが大事(画像:イメージ)
開幕投手はチームの士気を高めることが大事(画像:イメージ)

数字、実績とも菅野より戸郷のほうがベンチの信頼が大きかったのはわかるが、「コイツが行けばみんなは黙って従う」というような、チームの士気を高めるピッチャーでないと開幕投手には値しない。