社会問題の1つになっている「空き家」。厄介だととらえる傾向がある一方で、有効活用できれば地域の大きな財産になる可能性も秘めている。空き家問題の解消に向け、ふるさとの秋田・大館市にUターンし、精力的に活動している男性がいる。
店はないのに店舗がそのまま
秋田・大館市役所のそばにあるビルの3階に「NPO法人 あき活ラボ」がオフィスを構えている。
この記事の画像(10枚)「あき活ラボ」は、大館市内でも増えている空き家問題を解消しようと、空き家の所有者や空き家を活用したい人からの相談を受け付けている。
法人の代表を務めている三澤雄太さん(35)は、大館市内の高校を卒業し、進学のため北海道へ。その後、東京に本社を置くIT系の会社に入社し、Uターンするまで配属先だった長野県に住んでいた。
そこは、古い町並みの商店だった場所などで移住者が新しく店を始めてみるなど、いわゆるリノベーションが活発なエリアだったため、秋田に帰省すると「店はなくなっていくが、空いたまま残っていて、店もどんどん減っていって人も減ってきている」と感じていたという三澤さん。
長野で色々な可能性を目の当たりにしてる中で、「秋田でももう少しできるんじゃないか」という気持ちが少しずつ大きくなっていったという。
相続や解体…各地で相談会を開催
秋田でも長野のようなことができるのでないかと考え始めていたころ、東京で開かれた大館市のイベントを訪れ、「地域おこし協力隊」の募集を目にした三澤さんは迷わず応募し、3カ月後にはふるさとの大館に帰ってきた。
その際、「住まいは空き家を活用しよう」と考えていたものの、情報の少なさに困惑したという。
三澤さんは「空き家は多いけど、何で情報としてこんなに出てこないんだろうと疑問に思った。“空き家”というキーワードを掲げて取り組む事業者は意外といないと思って、地域課題として取り組む組織を立ち上げて活動しようというのがきっかけ」と、NPO立ち上げに至った経緯を話す。
総務省の最新の調査(2023年10月)によると、秋田県内に空き家は6万9000戸あり、5年前の前回調査より8000戸増加し、過去最多となっている。
三澤さんが運営する「あき活ラボ」では、オフィスで個別に相談を受け付けているほか、定期的に秋田県内各地で空き家に関する相談会を開いている。「空き家を相続したが、どうしたらいいかわからない」「解体する場合、どのくらい費用がかかるのか」など、訪れる人の相談内容は様々だ。
放置せずに建物として新たな活用を
「あき活ラボ」には弁護士や司法書士、建設業者などが理事として所属している。スタッフが相談者の要望や悩みに合わせて専門家を紹介し、問題の解決までサポートに当たる。
一方で三澤さんは、空き家を活用する事業にも力を入れたいと、空き家を使った民泊を始めた。
三澤さんは「取得した空き家にそのまま住めるかというと、すぐには住めないことが多い。どういうふうにこの家から暮らしをつくれるかという想像力を膨らませることには難しさもある」と話す。
だからこそ「秋田にこれから住みたい人にとって、よりイメージを膨らませられるように、空き家を活用したらこういう空間になりましたとか、こういう暮らしをしていますという情報発信をもっとしていかないといけないと思っている」と、今後の活動に意欲を見せる。
あき活ラボは無料で相談を受け付けていて、2025年2月には秋田県内外を対象とした相談会を開催する予定だ。
空き家を空き家のまま放置するのではなく、建物として新たに活用する方法を見つけ、次の世代へ受け渡す。三澤さんはその橋渡し役として、これからも活動を続ける。
(秋田テレビ)