長崎県佐世保市出身の漫画家でイラストレーターの大原由軌子さんが長崎の街を巡りながら目的地である神社で「御朱印」を集める企画をシリーズで紹介する。2回目は雲仙市千々石町の橘神社を目指す。(2021年4月取材)

懐かしい汽車の記憶

この日の舞台は雲仙市千々石町。

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神社への道中、思いがけない出会いが待っていた。地元の男性から、かつてこの道を走っていた汽車の話を聞くことができたのだ。島村巧さんはその廃線跡へと案内してくれた。「ここは駅のプラットホーム」と男性は懐かしそうに指さす。

かつては旧小浜温泉鉄道が走り、島村さんが案内してくれた場所には「上千々石駅」の跡を示す石碑が建てられていた。

旧小浜温泉鉄道は大正から昭和初期から「愛野~小浜温泉(約17km)」を走っていた。廃線の跡は県道201号となっている。

画像提供:小浜歴史資料館
画像提供:小浜歴史資料館

島村さんは汽車に乗った当時を思い出し「子供だった時は喜びよりも、この電柱が後ろの方に飛ぶように見えて驚いた」と、車もない時代、汽車のスピードは子供にとって驚きと怖さもあったという。

約10メートルの鳥居が名物 橘神社へ

いよいよ橘神社へ到着。まず目に飛び込んでくるのは巨大な鳥居だ。大原さんは約10メートルもあるという鳥居の圧倒的な存在感に驚いていた。

橘神社は昭和15年に創建され、「軍神・橘中佐」を祭っている。橘中佐は大正天皇の教育係や陸軍学校の校長などを歴任した教育者としても知られる。

しっかりと地面を踏みしめる姿に力強さを感じることができる。

人形代と季節の花々をモチーフにした御朱印

橘神社では「人形代(ひとかたしろ)」という人の形に切り抜いた紙に、名前と年齢、住所を書き込んで、頭の先から足の先まで体のあらゆる部分を人形代で体をなでて3回息を吹きかけることで、心身のけがれや罪をはらい清めるという。人形代は毎年6月に神社で行われる「夏越祓(なごしのはらえ)」で千々石川で流し清められる。

「50年も生きていると色々たまっているな~と、モヤモヤしたものが湧き出てくるが、人形代で払うと気持ちが楽になりますよね」と、SNSを見てネガティブな感情にこのところ少々疲れ気味だった大原さんは少しスッキリした表情を見せた。

橘神社の御朱印は季節の花をモチーフにしたもので、人気を集めている。取材に行った2021年4月は「ツヅジ」が絵柄が美しい御朱印だった。

橘神社の御朱印(2021年4月取材当時)
橘神社の御朱印(2021年4月取材当時)

橘神社では月替わりで季節の花の手作りゴム印を押していて、神社を彩る植物の移り変わりを見ることができる。

ゴム印を手掛ける権禰宜(ごんねぎ)の橘豊美さんは、「コロナ禍で皆さん自粛自粛、やっぱり外に出る機会がやっぱり少ないかなと思ったので、花を見て楽しむ」という思いから、この御朱印を始めたそうだ。

手作りのゴム印には境内の様々な季節の植物がモチーフになっている
手作りのゴム印には境内の様々な季節の植物がモチーフになっている

繊細な絵柄と色使いに感動すること間違いなしだ。

心が整いました!

大原さんは、毎回御朱印さんぽの思い出をイラストにしている。「スタートの時にいろんな人とお話できたらいいなと思っていたが、まさか本当にこんないい出会いがあるとは思ってなかったので最高だった。鳥居をくぐった後から、境内の新緑の美しさや花を見て、まさに整ったって感じですね」と今回のさんぽを振り返った。

季節の移り変わりを感じ、懐かしい記憶に触れ、そして何より自身の心を浄化するいい時間となったようだ。

大原由軌子さんのプロフィール

長崎県佐世保市出身。パニック障害+神経症持ちの夫との日々を描いた『大原さんちのダンナさん このごろ少し神経症』で漫画家デビュー。著書に思春期の問題をテーマとした『大原さんちの不登校』などがある。

(テレビ長崎)

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