U18世代のトップチームが参戦するトップリーグで、高校生が審判や運営を務める取り組みが行われ、日清食品がその実現を後押しした。専門家は、こうした活動が企業と社会が共に価値を生み出す「共創型」のスポンサーの新たなあり方を示していると評価している。
高校生が自ら作る大舞台と企業のバックアップ
大人にはできない「高校生による高校生のための大舞台」。U18世代のトップチームが参戦する、高校バスケットボール最高峰のリーグ「U18日清食品トップリーグ」が行われ、選手が輝くそのコート上には、 “もう一人の高校生”がいた。
この記事の画像(13枚)鳥取城北高校3年・西村櫂B級審判員:
大舞台に来させてもらって、よし頑張ろうという気持ちになりました。とてもいい機会でした。
目指すは、“高校生による高校生のための大舞台”だ。年々価値を高めるその背景には、サポートする企業が持つ発想が一役買っていた。
国立代々木第二体育館で11月17日に行われたリーグ戦最終日。福岡大学附属大濠高校VS藤枝明誠高校の試合で、副審を務めることになったのが、鳥取城北高校3年生の西村櫂さんだ。
鳥取城北高校3年・西村櫂B級審判員:
自分、鳥取県(在住)なんですけど、あまりこういう大きい体育館がなくて。(いつもは)県の1回戦2回戦というレベルを吹いています。
普段、西村さんは地元の地区大会や、県大会などの試合で審判をしている。
大河原則人 S級審判員:
大事になってくるのは、どれだけみんなイライラしてるか。イライラしている時に、どう感情をコントロールしていってあげるかっていうのも大事になってくる。
プロさながらの会場演出のもと行われるトップリーグ。会場が満員となり、盛り上がりを見せる中、西村さんの緊張にも拍車がかかる。
鳥取城北高校3年・西村櫂さん:
迷惑を掛けないように、自分の中では、一生懸命走ったりとかプレーをしっかり見たり、自分のできることをやりました。もっとこういう舞台でたくさん(笛を)吹きたいなと思ってて、もっと上級、上を目指してこれからも頑張りたいです。
「高校生の大会に高校生の審判がいてもいいのでは」と、“プレーする”だけではないバスケットボールに関わる、さまざまな選択の可能性を広げる今回の取り組みを発案したのは、大会を支える日清食品だった。
日清食品HD・米山慎一郎執行役員:
ともすればトップリーグなので、日本で有数の実力者たちが集まってはいるものの、やっぱり社会に出るといろんな役割があって、審判というのもその一つだと思う。そういうところにスポットライトが当たるというのも、すごくいいことだなと思います。
ハーフタイムショーをはじめ、テーブルオフィシャルズやモッパー、試合を支える役員を高校生に任せてみるなど、この大舞台をあえて「高校生自らが作る大会」の場にした。
リーグをブランディングし、大会の価値を高める、スポンサーとしての新たな役割だ。
日清食品HD・米山慎一郎執行役員:
大人が考えた面白さっていうのでは、やっぱり世の中は響いてくれないと思っているので、それはスポーツでも通常の広告でも商品でもそうだと思うんです。
純粋にお仕事ではなく、純粋に楽しいか、純粋に盛り上がるか、本当に気持ちいいか、そういう気持ちをすごく大事にして、我々は普段マーケティングをしている。そういう気持ちで、一緒にやらせてもらっています。
アイデア・人材を共有する「共創型」スポンサーの新潮流
「Live News α」では、デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんに話を聞いた。
海老原優香キャスター:
高校生たちにとって、とても良い経験になりますよね。
デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
「高校生で全て行う大会」というアイデアが、とても良いですね。今回の取り組みは、企業にとっても、新しいスポンサーシップのあり方を示しています。
それが「共創型」で、企業とスポンサー先が一緒になって、人やアイデアを出し合っていくという考え方です。共創型が増えている背景には、情報量が多く変化が激しい時代に、単発なコミュニケーションではなく、持続的に志が合う相手と組むことによって、「持続的な認知を得ていきたい」という狙いがあります。
多様化するスポンサーシップの社会貢献モデル
海老原キャスター:
具体的には、どんな関わり方があるんでしょうか。
デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
色々な取り組みがありますが、例えば、「人材育成」では、スポーツチームとスポンサー企業が一緒になって、会場の運営を行って、課外活動、仕事の機会など人の育成に貢献することです。
スポンサー先の「営業支援」ということでは、地域の中で認知度を向上させる手伝いをするなどがあります。「環境保全」では、例えば、バスケットボールチームと、メーカーがタイアップして、競技場の中でマイボトル運動を促進することで、環境保全しています。
また「研究開発」では、サッカーチームの選手の睡眠データを取得して商品開発につなげるなど、研究開発的なケースもあります。こういった「共創型」のスポンサーシップに取り組むことによって、社会貢献の輪も広がるような展開に期待したいと思います。
海老原キャスター:
プロ選手と同様の競技環境が用意されることに加えて、責任のある立場を経験することで、更なる技術の向上にもつながりそうですね。
(「Live News α」11月29日放送分より)