吉野家が創業以来初となる麺メニュー「牛玉スタミナまぜそば」を期間限定で発売する。牛丼の具材を活用しつつ、別添えだれやトッピングでカスタマイズが可能。

専門家は、コスト対策や経営多角化の一環としての戦略的な判断とみている。

吉野家がまぜそば導入で新たな挑戦 

吉野家で初めての麺類の提供が始まり、まぜそばが食べられるようになる。

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牛丼でおなじみの吉野家では、過去には、ダチョウ肉を使用したローストビーフ丼に、カロリーを牛丼の6割ほどに抑えたキムチクッパなど、メニューの多角化を進めてきた。

25日、次なる一手として打ち出したのが、125年の歴史で初めてとなる、麺類の新メニュー「牛玉スタミナまぜそば(767円)」だ。

ツルツルとした麺には、通常の牛丼と同じ味付けの肉のほか、天かす・青ネギ・卵がのり、別添えのニンニクだれや、トッピングを追加すれば、味変を楽しめる商品になっている。

CMに出演・藤田ニコルさん:
おいしい。また違う味わいで、食感がより楽しくなりますね。

吉野家・成瀬哲也社長:
200万食を目標としています。2029年までの中期計画「変身と成長」をテーマに、常に挑戦し続けるブランドでありたい。

吉野家は、米や牛肉といった原材料価格の高騰を背景に、牛丼を値上げしてきた。

主力となる牛丼以外のメニューを拡充し、顧客の選択肢を増やしている。

吉野家・成瀬哲也社長:
時代は常に変化し、お客様のニーズも多様化している。吉野家はこれからもうまい牛丼を提供するこだわりは変えることなく、手段・提供するメニュー・サービスは、時代の変化に合わせて柔軟に変わり続けてまいります。

牛玉スタミナまぜそば(767円)は、7月4日から8月末までの期間限定で販売される。

麺類進出の裏に経営と供給の柔軟性狙い

「Live News α」では、ソウジョウデータ代表取締役の西内啓さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
吉野家での麺類の提供を、西内さんはどうご覧になりますか?

ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
吉野家ホールディングスは過去数年にわたって、複数のラーメンチェーンへの出資や、M&Aを進めてきました。

その過程で、麺料理に関する味作りや、運営の知見を蓄積してきたのだと思います。味やコストはもちろんですけれども、什器とかオペレーションなどを踏まえて、「ついに吉野家の店舗で売れるメニューができたぞ」といった判断に至ったのではないでしょうか。

堤キャスター:
今回、ラーメンや、うどんではなくて、なぜまぜそばなんでしょうか?

ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
まぜそばは、一般的に、ラーメンよりもかなり粗利率が高いとされています。具材も、牛丼と共通化させやすいという特徴があり、吉野家としてはかなり相性が良いメニューという風に考えられます。

まぜそばを投入して、単にメニューを増やそうというだけではなくて、経営戦略上の意図もあるのかなと思いました。

堤キャスター:
その戦略というのは、どういうものでしょうか?

ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
吉野家は従来、牛肉と米にフォーカスし、シンプルな調達をすることで、価格競争力というのを維持してきました。一方で、直近、米の価格高騰によるコストの上昇が、大きな経営リスクとなる懸念があります。

ここで思い出されるのが、2003年、BSE問題が起きた際に、吉野家は牛丼メニューが提供休止に追い込まれて、大きな経営的なダメージを受けました。

牛肉と米に偏ったメニューを、今こそ見直して、小麦を主な原料とする麺類も提供するということによって、サプライチェーンの柔軟性を高める狙いもあるように思います。

選択肢広げ来店頻度・客単価の向上を促す

堤キャスター:
一方で、メニューの追加というのは、私たちにとっては選択肢が増えることでもありますよね?

ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
消費者視点で見ると、「やっぱり今日は牛丼でも、明日は混ぜそば」といった気分の変化がつけられるメリットもありますし、逆に吉野家の視点で見た場合、1人のお客さんから、より高いライフタイムバリューを獲得できる狙いもあるのではないかと思います。

総務省の家計調査では、1人当たりの外食回数は微増傾向にあるんですが、一方で、1回の支出は、ワンコインから700円台に集中しています。

そうした中で、ファーストフード業界の競争が激化しているんですが、吉野家としてはおそらくこのコストを抑えようと。ただ一方で、常連のお客さんの来店回数をいかに増やすかということが、課題として考えられているのではないでしょうか。
(「Live News α」6月25日放送分より)