イオンは26日、コード決済の「AEON Pay」とタッチ決済の「WAON」を統合した新サービスを発表した。アプリ一つで決済手段が選べるようになり、利便性と地域貢献機能が特徴とされる。専門家は、価格還元や生活関連サービスとの連携が、今後の競争力に直結すると指摘する。
決済機能を一本化…ユーザー体験を刷新
「AEON Pay 」と「WAON」の統合で、決済サービスの強化を図る。

26日、イオンが発表したのは、コード決済の「AEON Pay (イオンペイ)」と、タッチ決済の「WAON(ワオン)」の統合による、新しい決済サービス・新「AEON Pay」 だ。

「コード決済」と「タッチ決済」の2種類の決済サービスをまとめることで、コード決済のみだったAEON Pay が一つになる。

丹羽うらら記者:
コード決済の残高から1000円をチャージすると、タッチ決済の残高が追加されます。

コード決済残高の移行を可能にしたほか、タッチ決済の利用もできるようになった。

イオンカード・コード・タッチと、アプリ一つで利用シーンに合わせて支払い方法の選択が可能になり、利用者の利便性向上につなげる狙いだ。

決済システムを巡っては、三井住友カードの「Olive」と、ソフトバンク傘下の「PayPay」が連携、「d払い」を展開するNTTドコモが、住信SBIネット銀行を買収するなど、いわゆる「経済圏」を拡大しようとする動きが激しくなっている。

そんな中、今回の統合で、新「AEON Pay」 は、利用箇所が約430万カ所と1.4倍に拡大する。

さらに、海外でも利用可能になるほか、将来的には、新たな決済システムの構築も目指したいとしている。

イオンフィナンシャルサービス 決済商品本部・橋本壮一郎 本部長:
手のひら認証の決済を導入したい。事前に登録しておけば、手のひらをかざすだけで決済ができるようなサービスを、実験だが導入していきたい。うまくいけば全国とか、グループ以外とかでも展開していきたい。

イオンは2026年度までに会員数2000万人、2030年度までにコード決済市場でシェア1位を目指すとしている。
利便性・地域貢献で差別化図るイオンの新戦略
「Live News α」では、大阪公立大学・客員准教授の馬渕磨理子さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
決済サービスの統合を、馬渕さんはどうご覧になりますか。

大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
決済プラットフォームの再構築を図り、先行するPayPayや楽天ペイなどに対して、本格的な巻き返しを図る、イオンの経営戦略の一環と受け止めています。
ただ、PayPayや楽天ペイが築いた「圧倒的な認知度とユーザー囲い込み」を崩すのは容易ではありません。
実際、イオンとしても、ユーザーに寄り添ったさらなる付加価値の充実に努めています。
堤キャスター:
その付加価値とは。
大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
最大の特徴は、コード決済とタッチ決済を1つのアプリに集約していることです。これは確かに便利です。
さらに、約180の地域・団体への寄付機能を組み込んだ点です。この「決済を通じた地域貢献」は、他社がすぐには模倣できない独自のポジションと言えます。
生活インフラとして実質的な還元と差別化を両立
堤キャスター:
今後、ユーザーを増やしていくためには、どんなことが鍵になるのでしょうか。

大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
昨今の物価高で、消費者の「実質的な値引き効果」への期待は高まっています。
具体的には、グループ横断での日常的なポイント優遇や、食品・日用品といった、物価高の影響を受けやすい商品カテゴリーに限定した還元策などが有効でしょう。
もう一つは、小売だけでなく、金融、ヘルスケア、住まいなど、様々な事業を展開しているイオンならでの強みを生かすことです。
暮らしを支えるサービスと新しいAEON Payをシームレスに結びつけ、例えば「イオン銀行の口座連携による還元増」などは、単なる決済を超えた「生活インフラ」としての差別化につながります。
堤キャスター:
人や地域に、どれだけ寄り添えるのかが、問われるのかもしれませんね。
大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
全方位で先行するPayPayなどに対抗するのではなく、「地域貢献型決済・物価高対策・生活インフラ連携」の3つを軸に、コアな支持層を確実に取り込みつつ、さらに、イオングループの外の展開を着実に進めることが、現実的な成長シナリオだと思います。
その際、イオンの「総合力」と「地域密着型のブランド」を、どこまでスマホ決済の世界に持ち込めるかが、勝敗を分けるポイントになると考えています。
(「Live News α」6月26日放送分より)