私たちの暮らしを守ってくれる猟友会の苦渋の方針だ。
北海道猟友会は、自治体からのヒグマ駆除の要請を今後、拒否することを検討していることがわかった。
北海道猟友会が苦渋の方針
2024年も出没が相次いだヒグマ。
この記事の画像(18枚)人や車と近づく衝撃的な様子を何度もカメラが捉えた。
目撃件数は2400件を超えている。
札幌では2021年に東区の市街地に出没。
襲われた男性が大けがをした。
そうした際、最前線でクマと向き合うのがハンターだ。
クマが出没した際、多くの自治体では、北海道猟友会の支部に出動を要請し、ハンターが駆除する。
しかし、北海道猟友会は今後、駆除の要請を拒否するよう各支部に通知することを検討していることがわかった。
背景には、2018年、北海道砂川市のハンターが、クマ駆除のための発砲をめぐって猟銃所持の許可を取り消された問題がある。
猟銃所持の許可 取り消され―
所持の許可を取り消された道猟友会・砂川支部長・池上治男さん。
「ヒグマにあたった弾が跳ねてあっちにいったりこっちにいったりすることは物理的や数学的に考えられない」(道猟友会・砂川支部長 池上治男さん)
駆除の際、池上さんが、発砲した弾が、付近の建物に当たる可能性があったとして北海道公安委員会から猟銃所持の許可を取り消された。
池上さんは道に処分取り消しを求める裁判をおこしたが、10月、札幌高裁は池上さんの訴えを退けた。
「拒否するんじゃなくてみんな猟友会の人は、人のためにやっていますよ。そういう意味にあっては、やれなくなる状況になることは本当に困ったもんだなというだけです」(池上さん)
「駆除要請拒否」はハンターを守るため
猟友会の幹部は「街中や住宅が近くにある場合など駆除が難しい場所の判断をハンターに迫られ、責任を負うのは問題だ」と話していて、ハンターを守るための方針だとしている。
理事会などを経て、道内71の支部に通知する方針だ。
札幌のヒグマ防除隊(札幌)の隊長・玉木康雄さんは、すべてをハンターが、担うのは無理があるという。
「どこまではハンターの責任にもってこれるのか、ここからここまでは、ハンターに指示した側でもって負うべき責任なのか、あるいは保険を導入するとか、そういったインフラ整備が必要かなと思います」(札幌市ヒグマ防除隊(札幌) 玉木康雄隊長)
住民には不安広がる
2021年、札幌・東区の住宅街にクマが出没し男女4人が重軽傷を負った。
今回の問題を受け住民は。
「かなり大きかったので、おっかないですよね。猟友会が拒否したら、それはちょっと困りますよね」
「この家の前を通っていたので。でも、他にどこへ頼んだらいいんですかね。そこで、どうにかしてくれるなら、どこでもいいですけど」(いずれも札幌市民)
北海道東部で2019年から4年間にわたり、ウシ66頭を襲った「OSO18」。
5頭が被害にあった標茶町の農家は。
「標茶町の猟友会の人たちには、いろいろな面で助けてもらっていたので。シカの被害もひどい。民家の方にもクマが来ている。ハンターを大事にしてもらわないと」(標茶町の酪農家 佐藤守さん)
今回の問題について、野生動物管理学が専門の東京農工大、梶光一名誉教授は。
「誰が業務を依頼したのか、誰が周辺の安全確認をしたのか当事者がいる。警察や行政が表に出てこないで、依頼された側が処罰の対象になる。誰が責任をとるのかあいまいのまま、これまでの慣習で猟友会に依存し甘えてきた。何かあれば当事者に責任を負わすという、理不尽なことがあってはならない」(東京農工大学 梶光一名誉教授)