「ツインデミック」への懸念

この冬、新型コロナウイルスとインフルエンザが同時に流行する「ツインデミック」への懸念が高まっています。

そのため、厚労省の対策として昨年よりも7%増、6300万人ほどのインフルエンザワクチンの供給量を準備し(2015年以来過去最大)、10月上旬より65歳以上の高齢者、10月後半からは、医療従事者、子ども(乳幼児から小学校低学年まで)、妊婦、65歳未満の持病のある人へ優先的にワクチン接種を呼びかける方針が打ち出されました。

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それ自体はありがたい話です。
しかし、気になる。
その時期、子どもが熱を出したらどうすればいいのだろう?
小学生2児の母として痛感します。
子どもは急に高熱を出す。あたふたすることも、しばしばです。

同時流行期に子どもが発熱したら・・・

しかも、新型コロナもインフルエンザも、「咳、倦怠感、発熱」と、初期の自覚症状は似ています。

これまでの自粛期間中子どもが熱を出せば、新型コロナに感染したのか風邪なのか違う理由なのか、かかりつけ医に受診していいものかどうか、例年とは違う緊張感とともに生きる日々。同時流行がやってくると仮定すれば、判断に迷うだろうと想像がつきます。

どこに連絡すればいいの?コロナなの?インフルエンザなの?どこで診てもらえばいいのだろう?

その疑問に対し、ご自身が小学生3人の子育て中で、「ママ目線を診療に生かす」がモットーの、有明こどもクリニック豊洲院の村上典子医師は、取材に対しこう答えてくれました。

「まず親としてできることを。」

有明こどもクリニック豊洲院の村上典子医師
有明こどもクリニック豊洲院の村上典子医師

インフルエンザワクチンを接種しよう

ーーこの冬、まず親としてできることは何でしょうか。

村上医師:
コロナ禍以降病院に行くこと自体を恐れて、子どもにワクチン接種するのをためらう人が劇的に増えていると実感しています。産後1ヶ月の健診を終えると、かかりつけの病院は、産婦人科から町の小児科へと変わります。そうすると、新生児を連れて小児科に行くということを怖いと感じる方もいらっしゃるのですね。クリニックでは、そういった母子を支援するため、予防接種を含め往診を始めましたが、それでも昨年の同月比に比べて、ワクチンの接種も、それ以外の受診も50%減の状態が続いています。

全国的にも昨年に比べ、特に小児科の受診がほぼ半減というのがニュースになったばかり。私自身の子どもたちには持病があるため、予防薬をいただく目的で毎月受診する必要がありますが、その時、あまりに小児科がガランとして予約が取りやすいことに、「受診控え」が起きていることを肌で感じます。

村上医師が往診でヒアリングする中で、本来であれば生後2ヶ月から始める必要のあるヒブワクチン、さらにはBCGや4種混合等の接種が半年以上遅れている例が、後を絶たないそうです。

それに対して、村上医師は「安心してワクチン接種できるよう、クリニックでは、予防接種や健康診断の方限定で受け付ける外来日を設けるなど、対応を進めています。だからこそ親としてできることは、まずは子どもにインフルエンザワクチンを接種させることだと思います」。

慌てず騒がず半日経っても熱が続いたらかかりつけ医を受診

ーー同時流行が起きて子どもの体調不良を感じたら、どこに連絡して診てもらえばいいのでしょう?

村上医師:
現在の症例報告では、家庭内感染は増えているものの、子どもたちは新型コロナに関して無症状のことが多いです。ですから、発熱して続くようならばインフルエンザの可能性が高いと考えられます。インフルエンザは、熱が出て咳もひどく痙攣を起こすこともあり、また脳症になって毎年命を落とす子どももいます。特に、1~2歳までの子どもを中心に、就学前の子どもでは、(毎年変化はあるものの)少なくとも100~200人程度の重症化の症例が報告されています。脳症になると、その3割のお子さんは死に到り、半数は重度の後遺症が残ってしまいます。クリニックではコロナ禍でオンライン診療も始めていますが、インフルエンザかどうかは来院して検査していただかないと確定できません。しかし確定さえできれば処方薬もあるので、ぜひかかりつけ医に受診してほしいのです。最近は発熱している患者はインターホンで連絡し、入り口から診察室への導線も別途隔離できるクリニックが多くなりました。だから、ためらわず決して受診控えしないで!とお伝えしたいのです。

過度に行動を制限しないで

ーー今後、同時流行が懸念される時期に備え、さらに親としてできることはあるのでしょうか?

村上医師:
手指消毒、うがいの徹底等、感染症予防対策が行き届いて風邪など引くことが少なくなっているのかもしれない、それはそれで喜ばしいことです。また子どもは風邪などを通して免疫力を高めるから、過度に行動を制限する必要もありません。

ただ今後新型コロナとインフルエンザが同時流行すれば、まず症状の有無によって「インフルエンザ」を疑い、適切な処置をすることが子どもの命を守ることにつながるのです。

新型コロナウイルス
新型コロナウイルス

話を伺って、改めて考えます。子どもたちにとって彼らの日常生活を維持できること、学ぶ環境や人と触れ合う成長の場が不可欠です。2つのウイルスを闇雲に恐れるより、そのうちの1つ・インフルエンザにはワクチンも対処法もあります。病気を正しく恐れて、親としてできるベストのことを・・・。

今後も、その方法については注視して発信していきます。

【執筆:フジテレビ アナウンサー 佐々木恭子】

佐々木恭子
佐々木恭子

言葉に愛と、責任を。私が言葉を生業にしたいと志したのは、阪神淡路大震災で実家が全壊するという経験から。「がんばれ神戸!」と繰り返されるニュースからは、言葉は時に希望を、時に虚しさを抱かせるものだと知りました。ニュースは人と共にある。だからこそ、いつも自分の言葉に愛と責任をもって伝えたいと思っています。
1972年兵庫県生まれ。96年東京大学教養学部卒業後、フジテレビ入社。アナウンサーとして、『とくダネ!』『報道PRIMEサンデー』を担当し、現在は『Live News It!(月~水:情報キャスター』『ワイドナショー』など。2005年~2008年、FNSチャリティキャンペーンではスマトラ津波被害、世界の貧困国における子どもたちのHIV/AIDS事情を取材。趣味はランニング。フルマラソンにチャレンジするのが目標。