全国有数の温泉地、山形・大蔵村肘折で進められている“観光客も避難対象とした”全国初の新たなハザードマップ作り。2023年に始まったマップ作りは最終段階を迎え、11月4日、大規模な“実践訓練”が行われた。
水害で従来のマップの課題明らかに
大蔵村肘折地区の新たな防災マップ「まるごと里ごとハザードマップ」は、洪水や土砂災害から観光客・宿泊客も守ろうと、国土交通省新庄河川事務所と大蔵村が2023年から作成を進めている。
この記事の画像(11枚)住民たちが肘折の“暴れ川”として恐れている銅山川。4年前の水害では温泉街を襲い、護岸が大規模に崩れ落ちたほか、道路が崩落して寸断され、集落が孤立する被害があった。
かつて安全だった場所も危険なエリアに様変わりし、従来のハザードマップでは「安全な誘導ができない」との声が強まり、新たなマップづくりが不可欠となっていた。
渋滞や混乱避けるルール盛り込む
4日の訓練は、大雨で銅山川の水位が上がり、肘折地区に避難指示が出たとの想定で行われた。これまで定まっていなかった避難経路を明確に定め、地図に落とし込んだハザードマップの「最終案」に基づいて行われた。
肘折温泉は車がすれ違えないほど狭い道が多いため、新たなハザードマップには「避難所に車で向かう場合は一方通行とする」など、渋滞や混乱を避けるルールが盛り込まれている。
肘折地区代表・大友久士さんは「高齢者が多く、実際に住民のほとんどが車を使った避難になる。安全に落ち着いて、速やかな避難できるよう常に想定した避難訓練を重ねていきたい」と話した。
新ハザードマップは今年度中に完成
事前の告知はしていなかったが、訓練には宿泊客の姿もあった。神奈川県から訪れていたという人は「出先でも自分の安全を確保できるかどうかは普段は意識できていないが、いざという時に大切。こういう訓練があるのは素晴らしいこと」と話した。
今回の訓練は、想定した時間内に避難誘導を完了できた。参加した住民や観光客の意見も反映させた新たなハザードマップは2024年度中に完成し、肘折地区の全世帯と各旅館などに配布される。
(さくらんぼテレビ)