実際にトヨタグループで仕事ができる人たちは、こういったコミュニケーションがとても得意でした。具体的に、どのように対処していたのか?

私が上司や先輩から学んだポイントは、意見や価値観の異なる相手の話は「受け入れる」のではなく、「受け止める」、という対応です。

「受け止める」は話を聞くが同意賛成でない

例えば、職場の新人の育成法について、考えや価値観の異なる人が、延々と自身の考えを主張しているシーンを想定してください。

相手の話を「受け入れる」ということは、「その通りですね」と同意や賛同、共感を示すことです。

真面目な人ほど、相手の話を「受け入れよう」と取り組む方が多いのですが、無理して「(自分と異なる考えを)受け入れよう」とすればするほど、心の中で拒絶反応が起きます。

異なる意見や考えは無理やり取り入れようとしない(画像:イメージ)
異なる意見や考えは無理やり取り入れようとしない(画像:イメージ)

自分と異なる意見や考え(=異物)を無理やり取り入れようとして、「いや、やっぱりこの考えには同意できない」「そこには賛同できない」となり、「心理的なアレルギー反応」が生じるわけです。

そして、つい「でも」「しかし」という反論が口に出てしまい、対立を生んでしまいます。

一方、相手の話を「受け止める」とは、相手の話をきちんと聴くものの「無理に同意や賛同」はしません。同意や賛同をしない代わりに「そうなんですね」と相槌を打つのです。

むやみに敵をつくらず、戦略的に人を巻き込み、価値観の合わない人も自分の味方にしてしまう、そんな人間関係を構築するためには、「受け入れる」以外に「受け止める」の選択肢を持ち、場面に応じて使い分けることがおススメです。