そうした状況を避けるために、トヨタではただ手を抜くのではなく、それによって起こりうる問題やリスクをあらかじめ想定し、対策を用意していました。
トヨタで理想とされるのは、手を抜くことによって生じる間違いやミスを避けるために、「間違えたくても間違えられない仕組みづくり」です。

例えば、顧客訪問後にお礼メールを送る業務を想定してみましょう。
最初は丁寧に一つひとつ文面を変えて作成していても、担当先が増え1日に複数の顧客訪問を行うようになると手が回らなくなります。
つい、過去メールを安易に流用してしまうこともあるでしょう。誰もがやりがちな「手抜き」です。
前提に「人間はミスをする」
このような、「安易(いい加減)な手抜き」にはリスクがつきもの。うっかり顧客の会社名や担当者名などを変え忘れて送信してしまった経験をお持ちの人もいるでしょう。
私は、こうした手抜きに伴うリスクを最低でも2つ以上挙げて(これがマジメに考えること)、事前にその対策を施すように教えられてきました。

ここで示したお礼メールの流用では、いったん立ち止まって、対策を「マジメに」考えて「手抜き」のリスクを排除します。
トヨタには、「人間はミスをするもの」という前提で対策を講じる、という考え方があります。理想とするのは、間違えたくても間違えられない仕組みづくりです。
「なんか面倒だな」と思ったら、はじめに「手抜きありき」の視点で手を抜くことを考えましょう。
そのうえで、手抜きしたときに生じるリスクを2つ以上挙げて、その対策を打ち、実行に移しましょう。トヨタ流の方程式は「マジメ×手抜き=超効率化」です。

森琢也
株式会社クック・ビジネスラボ代表取締役。中小企業診断士。2007年明治大学商学部卒後、トヨタグループの大手自動車部品会社(デンソー)に入社。約10年の勤務後、リクルートマネジメントソリューションズに転職し、研修講師の採用・育成を担当し、2020年に独立