専用ボトルにグラス一杯分のワインを詰めて販売しているブランド「MAIAM」(マイアム)。
ブランド名は、創業者である野木麻衣の名前のアルファベット表記を左右対称にしたもので、鏡に映った自分がより良い姿であれる提案をしていきたいという思いを込めて名付けられたものです。
「自分らしく生きること」をブランドコンセプトに掲げたMAIAMは、2024年9月末で創業から10年を迎えました。これまでの歩みや今後への想いについて、野木に話を聞きました。
ワインビギナーにワインの魅力を届けたい。ギフトにも喜ばれる、グラス一杯分のワインブランド「MAIAM」
――「MAIAM」が販売しているワインについて紹介してください。
野木:グラス一杯分のワインを特許を取得している特別なボトリング方法で詰めて販売しています。
現在取り扱っているのはフランスワインで、創業時から販売している一番人気商品の「Etoile(エトワール)」は、フランスワイン5大産地の赤·白·ロゼワインの5本セットです。すべて飲むとフランスを周遊した気持ちになって、各産地のワインを語れる商品なんですよ。
商品にはすべてQRコードを付けていまして、読み込むとワインの説明を詳しく書いているページに飛ぶことができます。ただ飲むだけではなく、フランスのどの地域のどんなワインなのかを知ってもらうきっかけにしてほしいなと思っての仕掛けです。私自身、ワイン好きではあるものの、知識に関してはビギナーだったからこそ、同じような方に届けたいなと思っています。
特に届けたいと思っているのはワインビギナーの方。そのため、フランスだけでもさまざまなワインがありますが、MAIAMで扱っているワインは代表的なもので、その土地らしい王道品種、味わいを体感してもらえる商品をご用意しています。
――今は20代、30代の女性のお客様が多いですね。
野木:そうですね。まさにMAIAMが届けたいお客様にご購入いただけていると感じています。ワイン好きだけれどあまり詳しくないからワインについて知りたいという方もいらっしゃいますし、一人暮らしの方や家族で自分しか飲まないからグラス一杯がちょうどいいという方、飲み比べを楽しみたいというお客様が多いです。
あとはギフト用ですね。グラス一杯のワインを楽しむ時間をプレゼントしたいという方にも好まれています。
フランスで過ごした経験から「自分らしく生きる」をコンセプトに、ブランド創業を決意
――「MAIAM」を立ち上げようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
野木:パリ滞在中に、パリジェンヌたちの生き生きとした姿を目にしたことです。パリ滞在時の私は、「どうすれば自分らしく生きられるんだろう」と将来について悩んでいた時期を過ごしていました。もともと、「こうあるべき」という規範に沿って生きるのが向いていなくて、そんな私がのびのびと過ごせたのがイギリスの大学で過ごした学生時代だったんです。
イギリスで過ごせた4年間は本当に過ごしやすかったのに、帰国後はまた生きづらさを感じるようになりました。同じようなリクルートスーツを着て、同じような髪形に整えて就職活動をする。そんなレールに乗ることがどうしてもできなかったんです。思えば大学受験のときも同じで、だからこそ日本の大学ではなく海外留学を選んだという経緯がありました。
学生時代を過ごしたイギリスも、語学留学のために滞在したパリも、私にとってすごく息のしやすい場所でした。特にパリで見た女性たちは、スタイリッシュな服装をしていて、自律的に生きている様子が印象的だったんです。
特に覚えているのは、テラスでワインを飲んでいた女性が、カトラリーを盗んでいこうとした男性にものすごい剣幕で怒っていた姿。エレガントだけれど強い、芯のある女性に憧れを抱きました。
「自分らしく生きる」をコンセプトにしたブランドを作りたい。人一倍自分に向き合ってきた人生を送ってきた私が行き着いた「やりたい」でした。
グラス一杯分にすることで、手軽に飲み比べができるニーズに応え、さらにご褒美やギフトとしても活用可能に
――「グラス一杯のワイン」をブランドの商品として選んだのはなぜですか?
野木:パリ滞在中に巡っていたワイナリーで、素晴らしいボトリング技術に出会ったことがきっかけでした。向こうではサンプル用のワインを詰めるために使われているものだったのですが、ぜひこの技術を使って商品を作りたいと思ったんです。
惹かれたのは、グラス一杯分というサイズ感でしたね。ワイン好きでも、ひとりでフルボトルを一気には開けられない人は多いですよね。そんなときに、グラス一杯分のワインという選択肢があれば飲みたいというニーズがあるのではないかと思ったんです。
なるべく美味しく、良いワインを詰められれば、自分のご褒美用としてもギフト用としても使える。そんなアイディアが浮かびました。このときに、ワインの産地を知るためのカードを付けたいというアイディアもすでにありました。
あとは、ワインを飲み比べるなかで、人と似ているなと思ったこともワインを取り扱いたいと思った理由でした。ワインの原料となるブドウは、「この場所なら育つのに、別の場所だと美味しく育たない」といったことがあり、居場所や環境が良ければ健やかに育つのは、人もブドウも同じだなと思ったんです。
ブランド立ち上げにあたり直面した偏見や厳しい声。それでも自分の経験を信じて信念を貫き通した道のり
――ブランド立ち上げで大変だったことは何でしょうか。
野木:1番つらいなと思ったのは、日本での「若い女性」への偏見でしたね。当時、20代半ばの私に対し、フランスでは誰もがビジネスパーソンとして真剣に接してくれたのですが、日本では「若い女の子が何か言ってるな」という感じだったんです。フランスではプロフェッショナルとして真剣に聞いてもらえるのに、日本では小馬鹿にした感じで接する人が多く、「できるわけない」「そんなの誰が買うの?」と心ない言われ方をされることが多くありました。
まず、グラス一杯分のワインを売ることに理解が得られなかったんですよね。「そんなの利益が出るの?」「ビジネスとして価値があるの?」と言われることが本当に多くて。でも、私は「やりたいからやる」だったんですよね。儲かりそうだからやろうとしているわけではなかった。その感覚が、当時話していた日本人男性には理解しがたかったのでしょう。
――そうした困難がありながらも、諦めずに挑戦できたのはなぜでしょう。
野木:「やりたいと思って突き進めば、いつか道が開ける」と思えていたからだと思います。パリに行く前、日本で俳優のアシスタントとして芸能界で働いていた経験が影響している部分があるのかなと。芸能界って、「こうしたら成功する」というセオリーがないんですよね。いい大学を出たから成功するわけでもない。それは俳優だけではなく、カメラマンなど芸能界に携わる人たちみんなに言えることで、自分の生き方を貫いている人が多いんですよ。
そうした厳しい環境に身を置いていたからこそ、私も自分の生き方を貫けば大丈夫、やってやれないことはないだろうと思えているのだと思います。
会社作りの知識をはじめ、販売までの全てが初めての経験
――その他、立ち上げから今に至るまでで印象に残っていること、直面した壁についてはいかがでしょうか。
野木:大変だったのは、商品作り以外の何もかもですね。商品作りは自分のやりたいことだったので、難しさがありながらも純粋に楽しめたのですが、それ以外の会社作りに関する部分は、「やりたい」というよりは「やらなければならない」ことだった上、何も知識がなかったため大変で。
登記から資本金から、お酒を売るための免許取得、流通、Webサイト作り、梱包や発送など、すべてを自分の手で取り組みました。
売れ行きに関しては、ありがたいことにスタートからスムーズでした。「メディアが紹介したくなるものを作れば、取り上げてもらえるはず」という狙いが当たり、雑誌やテレビにも取り上げていただくことができ、そこからホテルなど販路も広がりました。一気に拡大が進んだ結果、現場が回り切らなくなったり、きちんと採用をせず友達を安易に雇ってしまったりという失敗もしましたが、商品が全く売れなくて困るということはなかったです。
「自分らしく生きたい女性に届けたい」という気持ちから、ブランドをリニューアル。共感を呼び、売り上げ向上へ
――MAIAMは2019年後半にリニューアルをしました。これはどのような判断だったのでしょうか。
野木:「もっといいブランドにできないか」という試行錯誤の結果がブランドリニューアルだった、という形ですね。ブランド立ち上げ当初は、良い商品を作りたい一心で、ブランディングについてはあまり考えられていなかったんです。そのため、取り上げられる雑誌はメンズ雑誌が多く、商品自体も黒いギフトボックスに入れていました。商品の価格帯的に30-40代が買ってくれるだろうと思っていたのですが、当時の私はその年代よりも下だったため、背伸びして考えていた部分もあったなと思います。
年数が経ち、私自身とブランドが並べるようになったことで、「20~30代の女性の日常の贅沢」という今の軸に行き着きました。箱をベージュにし、ボトルのデザインも好みのものにチェンジ。このリニューアルが女性の共感を呼び、より売上が伸びたんです。
ただ、「ワインを楽しんでほしい」という最初に抱いた思いは今も変わりません。変わったのは、「楽しんでもらえるなら誰でもいい」から「自分らしく生きたい女性に届けたい」という部分ですね。届けたいお客様のイメージをしぼっても大丈夫なんだと自信を持てたからこそ、「MAIAM」というブランドの輪郭をより明確にできたのだと思います。
「グラス一杯の幸せ」を伝えたい想いは変わらず、新しく日本酒を世界へ広める挑戦もしていきたい
――ここから新たな10年、どのようなブランドにしていきたいですか?
野木:10年という節目を迎えるにあたり、改めて最近原点回帰する時間を持つことができ、色々なことを考えていますが、ある意味この10年間は、周りに助けられながら進んできた準備期間だったなと思っています。自分が10年間で学んだことはお金で買うことができない本当に大切なもの。今まで培った経験や感覚を活かして、これからはもっと自分らしく「グラス一杯の幸せ」を伝えていきたいです。
野木:私ひとりの「やりたい」から始まった会社ですが、挑戦を続けていくなかで、会社としての可能性を感じられるようにもなりました。もっとやれること、世の中に貢献できることができるんじゃないか。例えばワインだけではなく、日本酒でも一杯分の幸せを届けられるかもしれない。そしてそれは「日本酒を海外へ」広める一助にもなれるのではないかと思っているんです。その可能性に挑戦していく10年にしたいですね。
これからも、「グラス一杯分の幸せ」をより多くの人に届けられるよう、取り組んでいく
――最後に、本STORYを通して伝えたいメッセージをお聞かせください。
野木:ブドウと人とは似ているというお話をしました。私が今、自分らしく生きられているのは、私が生きやすい場所を探して動き、見つけられたからだと思っています。美味しく育つ場所で実ったブドウで作られたワインを飲むことが、自分に向き合い、自分らしく生きようと思うきっかけになってくれれば嬉しいです。これからも「グラス一杯分の幸せ」を、ひとりでも多くの人にお届けできるよう、メンバーと共に取り組んでまいります。
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