兵庫県の斎藤知事は26日に会見を行い、30日での失職を表明し、再選を目指す出直し知事選に出馬する意向を示した。失職を選んだ理由は、再選時の4年の任期を確保し、自らの責任を否定する姿勢を保つためと思われる。
4つの選択肢で失職を選択
兵庫県庁で26日午後3時頃、斎藤知事の会見が行われた。この中で斎藤知事は、9月30日での失職の意向を表明した。出直し知事選が、斎藤知事にとってどんなメリットがあるのか、法政大学大学院・白鳥浩教授と見ていく。

青井実キャスター:
辞職・失職・議会解散など4つの選択肢がある中で、斎藤知事は10日以内に辞職も議会解散もせずに失職をして、出直し知事選に出馬する道を表明しました。なぜ失職を選んだと思いますか?

法政大学大学院・白鳥浩教授:
失職の場合だと、(再び)当選した場合には4年間できるということになるので、斎藤知事にとっては長く、今自分がやっている改革を前に進められるというメリットがあるのだと思います。
宮司愛海キャスター:
辞職ではなく失職を選んだ理由というのは、再当選した時の任期というところが、一番大きな要因なんでしょうか?
法政大学大学院白鳥教授:
そうですね、任期ということも一つあると思います。もう一つ、失職の場合は、法の規定にあるように、自分が「辞めさせられた」ということになります。辞職してしまうと自分が悪かったとして辞めたように見えてしまうため、「自分は全く悪くないが、結果として責任をただ取らされている」というスタンスだと考えられます。

青井キャスター:
斎藤知事は会見の中で、「不信任決議の可決というのは議会の判断だけれども、本当にそこまでいかないといけなかったのか?」という風に述べていたんですが、白鳥さんはこの発言についてどう思われますか?
法政大学大学院白鳥教授:
これは、斎藤知事の本音が出ているのだろうと思います。ただ議会が全会一致で不信任を可決するのは、ほぼ異例なことでして、それだけのことをやっているということがあまり伝わってないように見えます。

青井キャスター:
今回失職を選んだわけですが、これは斎藤知事にとってのメリットデメリットは、どういうことが考えられるのですか?
法政大学大学院白鳥教授:
失職の場合はメリットとしては、当選した場合には4年間、これからも県政を担当し続けられるということで、しかも「自分は悪くないんだ」というスタンスは崩さないことになります。
デメリットは、10日間待たなければ失職にならないので、10月6日までは針のむしろに座ったような状態になると思います。
青井キャスター:
この先考えると、その後の4年の方がいいのではないかという考え方なのかもしれないですね。
法政大学大学院白鳥教授:
そうですね。そういう判断だと思います。

青井キャスター:
今回のこの判断について、大阪市長時代に出直し市長選挙を行ったことがある、元大阪府知事・橋下徹さんにお話を伺いました。
元大阪府知事・橋下徹氏:
不信任決議を突きつけられた知事が、知事をやり続けたいのであれば、これは議会解散しかないと思います。不信任を今の議会に突きつけられたので、不信任ということは「もうこの知事と一緒にやっていけない」ということです。
それでも知事をやりたいということになれば、今の議会のメンバーを入れ替えないと難しいです。議員の過半数を自分の味方として擁立して当選させるというのは、ものすごい至難の業ですが、それができないのであれば、知事は辞めるべきだと思っています。
当選したら全部チャラになると思っているのは、大きな間違いだと思っています。そういう意味では不信任決議が出た後の出直し知事選は、邪道中の邪道で、もし本当にやるのなら不信任決議が出る前にやるべきだったと思います。

ポイントは、議会がはっきり言えるかどうかです。「斎藤さんが当選したとしても、不信任の意思は変わりません」という風に言うと、県民は斎藤さんになかなか投票できないと思います。斎藤さんが当選する時の県民の意思と、議会が当選した時の県民の意思、これは別物です。
議会はちゃんと理由をつけて、百条委員会をもとに不信任を突き付けたわけですから、斎藤さんがもう一回知事に再選したとしても、「我々の意思は変わりません」ということを言えば、もう斎藤さんとしては出られないと思います。今後のポイントは一つ、議会の覚悟と決意と根性だけだと思っています。
SPキャスター パトリック・ハーラン:
橋下さんがおっしゃる通り、普通は不信任決議案が可決されたら、議会を解消するのセオリー通りの動きなんですが、今回は自分の人格が問われているところの不信任決議案であって、本人はこの指摘に「ありがたい」と言っています。
ここで解散してしまったら、それに抵抗することになるんですよね。それを受け止めた上で、今まで進めてきた改革の続きまで続けてやらせてくださいと県民に直接訴えているように感じます。
議会にケンカを売るんじゃなくて、県民の民意をもう一回問いたいと言ってるんです。自分の味方を過半数当選させることは、今回の選挙は難しいと思います。ただ、民意を持ってもう一回続投させてもらうことができたら、次の選挙でどうなのか、協力してもらえるという見方をしてるのかと思います。
斎藤知事が勝つことは0ではない
青井キャスター:
その「民意」について、どう思っているのか兵庫県民に聞いてみました。

兵庫県民からは、「出直し選挙で票を入れる人はいるのかな。自分の道を自分であれやこれやと考えてるけど、やはり世間の声を聞くべきだと思う」「もっと早く決断すべきだった。そしたらもうちょっと出直し選挙でも票伸びたやろうし」「たたかれすぎてちょっと心苦しい。正直ね、頑張ってほしかった。でも難しいかも、世間が許さない」といった声が聞かれた。
立石修フジテレビ解説委員室長:
かなり厳しい声が出ていて、常識的には斎藤知事が勝つのは難しいんですが、決してゼロではありません。というのも、自民と維新が対立候補の擁立では1本化が非常に難しい状況になっているようです。
維新からは片山大介参議院議員などの名前が挙がってきていますが、自民党兵庫県選出の国会議員たちは元キャリア官僚を推す動きがある一方で、これに対して自民党の県議が反対をしているようなんです。ここで候補者の1本化ができない場合、もしくは乱立してしまった場合には、斎藤知事が勝つという可能性もあります。

青井キャスター:
このシナリオとしては、どういうことが想定されますか?
法政大学大学院白鳥教授:
候補が乱立して票がかなり割れてくると、斎藤知事の場合は今回の件で、圧倒的に知名度を持ってしまったので、「無名よりは悪名の方がいい」というような話もあるので、場合によっては今後の選挙戦の行方というのは、非常に注目されることになると思います。
青井キャスター:
知事選挙の日程は、現段階では11月10日もしくは17日かということで、9月30日に正式に発表ということになっています。
(「イット!」 9月26日放送より)