7月の記録的な大雨で大きな被害があった山形・戸沢村蔵岡地区で、「集団移転」に向けた話し合いが行われた。村は、住民の7割以上が賛成すれば集団移転事業を進めるとの見解を示した。
新生活を補償する国の制度を提案
7月の記録的な大雨で最上川がはん濫し、集落全体が水に浸った戸沢村蔵岡地区。村は8月、地区会長など一部の住民に対し、新天地での生活を補償する国の制度「防災集団移転促進事業」を提案していた。
この記事の画像(7枚)9月19日の会合で初めて、69世帯の全ての住民に事業の概要が説明された。
会合は冒頭のみ公開され、その中で村の担当者が、集団移転には「全世帯の同意が必要」で、「半数にあたる35戸以上が新たに整備する住宅団地に転居すること」が要件になると説明。
事業費の4分の3は国が助成し、移転者の土地の買い取りや新天地の宅地造成・インフラ整備は村が行い、建物の解体費用や住宅ローンの残金なども補償金として住民に支払われる。
「住民の7割が賛成」で事業を進行
住民には集団移転の賛否を問うアンケート用紙が配られ、回答期限を9月25日としたが、住民からは「住民の多くが賛成に傾き、すでに機は熟している」「集団移転のその先のスケジュールまで早く示してほしい」などの意見が出た。
加藤文明村長は「住民の7割以上の賛同を得られれば間を置かず事業を進める」と応じたという。
集団移転に「賛成」の考えを示す住民は、「どう進んでいくのかわからなかったので一歩前に踏み出せた。スピード感をもって進めてほしい」と期待を寄せた。
25日までの回答期限だが、アンケート用紙に即記入し投かんした住民が多かったといい、蔵岡地区の山崎昇会長は「“新生蔵岡”を目指して、地域住民、手を携えながら頑張っていきたい」と表明した。
住居の建て直しを進めている住民は…
一方で、移転者の土地の買い取り対象に田畑が含まれないとの説明に対し、農家からは「農地も対象としなければ生活再建などあり得ない」などの不満の声が上がったという。
また、現在住居の建て直しを進めているという住民は「移転しない。気持ちは変わらない」と話す。ただ、7割が賛成し集団移転の話がまとまるなら反対する気はないといい、「推移を見極めた上で最終的な判断をする」と考えているようだ。
話し合いを終え、加藤村長は「大きな転換点・分岐点になったとは思うが半歩前に進んだだけ。まだ一歩に至ってない。しっかりと住民の声に耳を傾け前に進める」と述べた。
村は今後、アンケートを回収して住民の考え方を確認した後、具体的な意向調査を進める方針。
(さくらんぼテレビ)