7月の大雨で、山形・鮭川村では特産のキノコ栽培工場が水没し、ブナシメジの菌が全滅。8月に菌が入った瓶の廃棄作業が始まった。また、被災者の生活支援制度が適用された酒田市では支援金の申請の受付が始まった。
鮭川村でキノコ工場の菌が全滅
鮭川村中渡にあるブナシメジの栽培工場・荒木バイオ。7月の大雨で裏手にある曲川がはん濫し、工場が浸水した。
7月31日の時点では、工場内はまだ水浸しで、従業員たちが懸命に泥をかき出していた。

大雨から1カ月、再び工場を訪ねると床はきれいになっていた。しかし、泥水をかぶり全て故障してしまった機械はそのまま。そして、“工場の宝”ブナシメジの菌も全滅。
荒木バイオ・荒木淳一社長:
本当は19~21度くらいで部屋を管理しているが、この水害で空調が故障し、今は38度とかに上がってしまって、もう全滅。発芽もしないし、これから廃棄。

培養室にあった瓶に入ったブナシメジの菌は全滅。瓶の数は70万本にも上る。
荒木バイオでは8月26日から、この瓶を廃棄する作業にとりかかかった。

「瓶の廃棄はもったいないとは思ったが、早く復興するためには早く廃棄して、また新しい環境を整えてやれるのならやりたい」と話す荒木社長。通常であれば、出荷が終わると瓶は再利用するが、今回は菌が死んでしまった瓶が多すぎるため、“瓶ごと”廃棄する決断をした。
本来、ブナシメジは9月ごろに出荷のピークを迎えるはずだったが、今の工場には出荷できるものが何もない。

荒木社長は「片付けのめどがなかなかつかない状態。年内にできるかできないか…。それもはっきりしない」と落胆を隠せない様子だ。
瓶の廃棄には全ての従業員、10人で当たっている。元々は14人いたが、高齢の人を中心に今回の大雨を機に4人が退職したという。
荒木バイオ・荒木淳一社長:
従業員が辞めていくかたち。今まで何十年も一緒にやってきたからね…。

国は8月15日、鮭川村を「局地激甚災害に指定する見通し」と明らかにした。
局地激甚災害は、被害額が一定基準を超えた市町村が対象で、中小企業の再建支援を手厚くするものだ。具体的には、再建を目指す中小企業が金融機関から資金を借りる際、金利が1%ほど優遇されるなどの支援が受けられる。
しかし、荒木バイオでは被害総額が1億円を超えるとみられ、高額で、果たして再建できるのか難しい選択を迫られている。

荒木社長は、「年だし、人もけっこう必要だし。再建したいが、それも無理してやっても資金もかかることだし。そこまでまだ考えられない。またこの場所で同じことが起きたら立ち上がれない。もし再建するなら別の場所も考えている」と話していた。
酒田市では計782棟の住宅被害
大雨での酒田市の住宅被害は、全壊12、半壊250、床上浸水31、床下浸水489の計782棟に上る。

県は、住宅被害が相次いだ酒田市と遊佐町について、住宅の被害の程度に応じて国から支援金が出る「被災者生活再建支援法」の適用を決めた。
「全壊」は最大300万円、「大規模半壊」は最大250万円、「中規模半壊」は最大100万円の支援金が支給される。

酒田市では、支援金の申請の受付が26日に始まった。り災証明書などを用意した上で、市役所の窓口か郵送で申請する必要がある。
また、遊佐町では支援金の対象者向けに説明会が開かれているが、申請の受付開始はもう少し先になる見通し。
(さくらんぼテレビ)