7月の記録的な大雨で被災した地域では今も復旧作業が続いている。その大きな助けとなる「ボランティア」だが、大雨から1カ月がたち、そのニーズや受け入れの態勢も変化してきている。
経験豊富な団体が現地を支援
今回の大雨で荒瀬川がはん濫し、多くの住宅が浸水した山形・酒田市では8月29日も復旧作業が進められていた。
この記事の画像(10枚)酒田市常禅寺地では重機の免許を持ったボランティアが、住民の依頼を受けて家の前の道路にたまった土砂を撤去していた。
さらに、重機を使って手際良くかき出していたのは側溝にずっとたまったままだった泥。雨水の行き先を確保し、これから接近してくる台風10号にも備える。
ボランティアを行っていたこの団体は「DRT JAPAN YAMAGATA」。現役の消防士や土木関係者でつくる団体で、2024年1月に発生した能登半島地震でも現地で復旧作業を行った。
DRT JAPAN YAMAGATA・佐藤信一さん:
重機やチェーンソー・ロープワーク・高所作業などができるよう普段から訓練している団体。知識・技術を生かした活動がこういった場面で有効になる
災害支援活動の経験が豊富でスピード感のある対応ができるため、こうした団体の協力は大きな力になる。
受け入れを終了した市町村も
県内を襲った7月の大雨から1カ月。ボランティアへのニーズも変わってきている。
佐藤さんは「最初は家の中からぬれた家財道具や目に見える土砂を出したりという依頼が多かったが、1カ月がたち一段落し、道路に残ったものや床下にたまった土砂の搬出など、いままで見えてこなかったものへのニーズが増えている」と感じているという。
また、ボランティアの受け入れ態勢にも変化が起きている。
当初は、被災したそれぞれの市町村が災害ボランティアを募集していたが、現在も受け入れを続けているのは酒田市と遊佐町だけだ。
戸沢村は新たなボランティアの受け入れを停止し、9月以降は団体応募に限り受け付ける。最上町は受付を一時停止中。鮭川村・新庄市はすでに募集を終了した。
ボランティアに、どの地域でどのような活動をしてもらうのか。
被災した自治体と綿密に調整を進めているのが、ウェザーハート災害福祉事務所の代表・千川原公彦さんだ。
千川原さんは「ボランティアへの依頼が収束したということではない。次のフェーズでの調整に入った」と話す。
酒田市のボランティアセンターには、発災直後には1日250人近い申し込みがあったが、現在は土日で100人程度・29日は約50人と減り、今でもボランティアは足りていない。
センターに寄せられている約120件の依頼のうち、約50件は依然として手をつけられていないのが現状。また、被災した人が希望通りのタイミングでボランティアを受け入れることが難しくなっているケースも出てきている。
千川原さんは「1カ月がたち被災者の仕事が始まり被災した家にいないケースが増えている。住民が戻ってきたタイミングに合わせて、ピンポイントでボランティアが活動できるようにマッチング・調整が必要になっている」と実情を語る。
「助けが必要になる時期は必ず来る」
復旧作業には長い時間がかかる。被災地の復旧を早めるため、千川原さんが重要だと強調するのは、県外ではなく県内のボランティアによる息の長い支援だ。
ウェザーハート災害福祉事務所・千川原公彦さん:
いままで県外の企業・NPO・ボランティアに協力してもらった。1カ月たって県外のみなさんの参加率が減ってきている。これからも復旧・復興にはかなりの時間がかかる。県内の協力が必要。ぜひ週に1回、月に1回でも構わないので、県内のみなさんに協力してもらいたい
県内ではすでにボランティアセンターが閉鎖した地域もあるが、各社会福祉協議会は被災者からのボランティアのニーズの確認を今も続けている。
千川原さんは、ボランティアの募集を一度締め切った地域でも、今後また県内のボランティアの力が必要になる時期が必ず来ると考えていて、みなさんの協力を呼びかけている。
(さくらんぼテレビ)