出生数2万人を割り込み、少子化に歯止めがかからない広島県。そんな中、湯崎英彦知事が県民と話し合う車座会議が県内各地で行われている。7月末、「子育てや教育にかかる費用を社会がどこまで負担すべきか?」をテーマに意見を交わした。
子育て世代含む7人が知事と意見交換
広島・三次市の子育て施設「みよし森のポッケ」で行われた車座会議。広島県の湯崎英彦知事を囲んで輪になり、7人のメンバーが意見交換した。

地域活性化や社会システムデザインが専門の叡啓大学・早田吉伸教授や県子ども真ん中応援サポーターの久保田夏菜さんをはじめ、三次市在住で子育て真っ最中のパパ・ママ、祖父母世代、独身層など様々なメンバーが集まった。

湯崎知事が「みなさんのご意見をうかがえると楽しみにしております」とにこやかにあいさつ。続いて、広島県子ども未来応援課の小田純子さんが少子化の現状について「出生数・合計特殊出生率はともに減少しています。合計特殊出生率は全国平均を上回っていますが、少子化に歯止めをかけることはできていない状況です」と説明。

広島県の出生数は1973年以降減少が続き、2020年に2万人を割り込んだ。その後も低迷し、2023年は1万6,682人。

2023年の調査で広島県内の18~49歳が希望する子どもの数は、8割以上が子ども2人以上を、3割以上が子ども3人以上を希望していた。しかし、31.1%は希望をかなえられていないことがわかった。希望の子ども数を持てない理由に「出産や子育て・教育にお金がかかる」や「時間的な余裕がない」が多くあげられる。もう1人出産・子育てをする意思決定につながる支援を問うと「経済的負担のさらなる軽減」を望む回答が39.4%で、最も多かったという。
増える子育て支援「上はきりがない」
少子化の現状を踏まえ、今の子育て支援についてメンバーに質問。充実しているは「〇」、充実していないは「×」の札を上げてもらった。
ーー経済的な子育て支援は充実している?

〇(充実している)
子ども真ん中応援サポーター・1歳、4歳の2児のママ・久保田夏菜さん:
私が子育てを4、5年して現時点では満足と感じています。支援策が増えれば増えるほど納税の負担も拡大していくと思うので、そのバランスを考えると、あまり多すぎてもなって部分もあります。

〇(充実している)
7歳、10歳、13歳、17歳の4人のママ・ 角佛里恵さん:
充実しているなと思います。一番上と一番下が10歳離れていて、10年の間にどんどん支援が増えました。それがゆえに乳幼児医療費が500円だから大したことないけど病院に行ったという方も結構いらっしゃるので、使う側の意識もちょっと気になります。

〇(充実している)
20代の孫がいる祖父・桑原利治さん:
税金を投入して子どもを大きくさせてもらえるのはびっくりです。昔は考えられなかったことですけどね。上は天がきりがない。やっぱり自分が作った子どもは、自分で責任をもって大きくしてやるのが本来の姿ではないだろうかと思います。
最年長の桑原さんの意見に対し、最年少からは異なる意見も出た。

×(充実していない)
独身・伊藤晴美さん:
給付金の制度があると、これから先、子どもを作ることを考えられるというか安心感があると思います。
叡啓大学・早田吉伸 教授:
経済的な面も含めて、子育てに安心感を持ちたいという意見がみなさん共通なのかなという感触はありましたよね。
これ以上の税負担には厳しい声も
県の予算が限られる中、少子化対策に新たな制度を導入した場合、財源はどれぐらい必要になるのか?

0~2歳児の保育料の無償化で約47億円、県民1人あたり年間約3,200円の負担が必要になる。小・中学校の給食費の無償化は約110億円、県民1人あたりの負担は年間約7,600円。また高校授業料の完全無償化は約71億円、県民1人あたり年間約4,900円と決して少なくない負担だ。
そこで、次の質問。
ーー財源確保、どこまで負担する?
負担できるは「〇」、これ以上無理は「×」の札を上げてもらった。

〇(もっと税金を負担してもいい)
16歳、20歳の2人のママ・山崎浩美さん:
私は自分の時代に支援を受けているので、負担は仕方ないなと思うんです。うちの子は女の子で、将来、たぶん結婚して子どもを産んでというのを考えたら親世代は仕方ないなと思います。

×(これ以上無理)
1歳児のパパでシンガーソングライター・佐々木良さん:
財源の透明化がすごく大事なんじゃないかなって思うんです。
ーー財源が透明化されたら×が〇に変わる?
変わります。クリアになればもっと僕は出したいです。健全な政治の中で、きれいに子どもたちに税金を使っていただきたい。

×(これ以上無理)
7歳、10歳、13歳、17歳の4人のママ・ 角佛里恵さん:
私も佐々木さんの意見に少し似ていますが、行政はその年の間に予算を使い切らないといけないって、それ無駄じゃない?って思うんです。税金の負担を増やす前にやり方を変えてみてはどうかなと。
納税で少子化を自分事としてとらえる
一方、独身の伊藤さんからはこんな意見も出た。

×(これ以上無理)
独身・伊藤晴美さん:
今、自分の生活を保っていくのに必死な状態で、さらに納税ってなると自分の生活がどうなるのかなって思います。

〇(もっと税金を負担してもいい)
子ども真ん中応援サポーター・1歳、4歳の2児のママ・久保田夏菜さん:
何百円なのか、何千円なのか、何万円かで状況は変わってくると思いますが、税金を払うという形でかかわることで人口減少や少子化を自分事としてとらえるきっかけになってほしいです。
×(これ以上無理)
20代の孫がいる祖父・桑原利治さん:
お金だけ突っ込んでいって、子どもの数が増えていくのであれば一番いいですけれども、なかなかお金だけではない。
×(これ以上無理)
1歳児のパパでシンガーソングライター・佐々木良さん:
人と人のふれあいがあるところであれば、極端な話、お金がそんなになくても子育てはできます。三次市には人とのふれあいがすごくたくさんある。安心感ですね。お金で買えない価値というのはそこにあると思います。

叡啓大学・早田吉伸 教授:
キーワードは“安心感”に尽きたなと感じます。安心感の中で子どもが産める状態を作れるかどうかっていうのが肝になってくるのかなと。

1時間に及ぶ車座会議を終えた湯崎知事は「特徴的だったのが、確かに子育て支援はもっとあったらいいと思うけど、そもそも税金の使い方が不明瞭だったり、もっと良い使い方があるんじゃないかという点です。そういうご意見はごもっともだと思うんですよね。お金の使い方の説明をしながら、一方で子育て支援もしてほしいという要望をどう満たしていくかということを考えなきゃいけないと思いました」と述べた。
(テレビ新広島)