まもなく多くの学校で授業が再開され、保護者にとって大変だった給食のない夏休みが終わる。夏休み期間中は多くの家庭で普段より出費がかさむ中、特に影響を受けたのがひとり親家庭だ。その現状とひとり親家庭を支える取り組みを取材した。

食費・光熱費…出費かさむ夏休みに苦労も

新潟県加茂市で8月14日に行われた加茂川夏祭り。

夏休み中のこの祭りを楽しみにしていたのは、佐野智子さんと小学5年生のくるみちゃん、4年生のひなたちゃん親子だ。

佐野さん親子
佐野さん親子
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笑顔の多い佐野さん親子だが、1年半前に離婚し、ひとり親家庭に。

夏祭りを楽しむ佐野さんは「ちょっと寂しい思いをさせている部分もあるので、こういうときは思いっきり楽しんでもらいたい」と話す。

現在は以前から住んでいた家に3人で暮らしている佐野さん親子は、元夫からの養育費と母子家庭手当、そして智子さんの収入で生活しているが、離婚前に比べて収入は大きく減少。

こうした状況で迎えた夏休みはふだんに比べ、さらに出費がかさんでいた。

「きょうはフレンチトーストとブロッコリーとミニトマトとコーンスープ。8月はお昼だけでもやっぱり1万円は違う」

昼食
昼食

学校があるときには必要のない昼食の費用や日中につけるエアコンなどの光熱費が家計を圧迫。佐野さんは自身の食事量を減らすなどしてやりくりすることもあるという。

「食費をいかに切り詰めるかとか考えてしまうが、育ち盛りの子どもなので、なかなか切り詰めるというのが難しい」

民間団体の行った調査では、夏休み中における子どもの食事回数が1日2食以下となっているひとり親家庭が34%いることが明らかに。

こうしたひとり親家庭などの支援に日々奔走しているのがフードバンクだ。

人とのつながり・思い届ける食料支援

企業や個人から寄付された食料品などをひとり親家庭などに無償で提供しているフードバンク。この日は小学1年生の娘を持つひとり親家庭のもとへ食料品の配達に訪れていた。

ひとり親家庭のもとへ食料品を配達
ひとり親家庭のもとへ食料品を配達

県フードバンク連絡協議会の山下浩子会長は「夏休みの思い出自体が、なかなかどこにも行けなくてとか、家でずっとお留守番というと、へこむようなことも多いけど、そうではなくて、夏にはお菓子を持ってきてくれたおばちゃんいたよねとか、あのお菓子おいしかったねとか、かわいかったねとか、一つでも楽しい思い出を積み重ねていってもらえたらうれしい」と話す。

県フードバンク連絡協議会 山下浩子 会長
県フードバンク連絡協議会 山下浩子 会長

人とのつながりや思いも届けるこの食料支援は佐野さん親子も受けていた。

「コメはこの間いただいて、あとコーンクリームとか。食費が大きいので、頂けるのと頂けないのでは全然違う」

夏休みの思い出づくりに!無料キャンプを企画

県内でフードバンクを利用するひとり親家庭は2024年4月時点で8500世帯を超えていたが、夏休みに入り急増。新たに500世帯ほどの申し込みがあったという。

こうした中、県フードバンクなどは夏休み中に旅行やイベントなどに出かけられない子どもの思い出づくりにも一役買っていた。

この日、企画されたのは2泊3日のサマーキャンプ。地元企業などの支援を受け、本来は数万円かかるキャンプ費用を無料に。

参加した親子からは「母子家庭では体験させてあげられない楽しそうなスケジュールがいっぱいあったのですごい魅力を感じて申し込んだ」「カレーライスづくりが楽しみ」などの声が聞かれた。

県フードバンクが企画したサマーキャンプ
県フードバンクが企画したサマーキャンプ

流しそうめんにバーベキューなど、普段はなかなかできない体験が詰め込まれたこのキャンプには、くるみちゃんも参加していた。

フードバンクへの寄付が減少…協力呼びかける

思いのこもった支援が届けられる一方で、フードバンクにも近年の物価高などの影響が出ている。2023年にフードバンクの倉庫の入り口まで積み上がっていた寄付品は、今はほとんどない状態に。

寄付品が激減
寄付品が激減

4月から5月にかけての寄付の量を2023年と比較すると、県内のほとんどの団体が9割近く減少。全県を担当している県フードバンクへの寄付量は99%も減っていた。

県フードバンク連絡協議会の小林淳事務局長は「通常だと、だいたいひと月に1回は食料支援しようとやっているが、もう2~3カ月もお渡しができていないという世帯が大変増えてきていて、苦境に立たされているところがある」と話す。

県フードバンク連絡協議会 小林淳 事務局長
県フードバンク連絡協議会 小林淳 事務局長

県フードバンクでは国からの補助金を活用して支援を続けているが、支援継続のためには社会全体による協力が不可欠だという。

山下会長は「未来の大人たち、子どもたちの育ち、心を支える育ちというところにご協力をしていただけたらとてもありがたい」と協力を呼びかける。

こう話す山下会長自身もひとり親家庭で子育てに奮闘していた時期に支えてもらったことへの感謝の思いが活動の原動力になっているという。

「世の中の皆さん方から支えられて今に至って、私の子どもは成人をしたということもある。困っている子どもたちの親御さん方が安心して子どものことを育てていけるように、できることがあるならばということで動いている」

誰一人取り残さない社会を目指して。

支援を受ける佐野さんは「困っている人のために寄付してくださる方の思いもしっかり受け取って、本当にいつか恩返しはしたい。私も困っている人に色んな形でお返しできたらいいなと思っている」と話す。

思いを乗せたバトンは渡されていく。

(NST新潟総合テレビ)

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