精巧に描かれた“手”がX(旧Twitter)に投稿され、再現度の高さが話題となっている。
「シワを一本一本描いていたら一カ月がたっていました」というコメントとともに投稿された1枚の画像。そこには“左手”が写っているのだが、カメラで撮影した写真ではなく、投稿者が描いた作品なのだ。
投稿したのは、美術大学のデザイン系学部に通うななさん(@NANA_kome2017)。
描き始めてから1カ月が経ったという作品は、手のひらのシワや影、赤みを帯びた皮膚の色などが丁寧に細かく描かれており、写真と見間違えるほどリアルだ。
この作品を目にした人からは、「もはや本物。血管も影もお肌のきめ細やかさというか血の通った透明感もどれも素晴らしいです」「ええっ!?絵絵っ!?」や、英語で「A drawing? Wow!」「So skilled」などの称賛のコメントが寄せられ、38万いいねが付く大反響があった(8月26日時点)。
手がきれいに見えた光景を再現
骨格のカーブや皮膚など本物と変わらない作品は、どうやって描いたのだろうか?また、こだわった部分などについて、ななさんに聞いた。
ーーこの作品について教えて。
手は常に目の中に入るもので、暇があると、眺めています。今回は、バスの中で朝の光が当たった手がきれいに見えたので、その光景を再現しようと思いました。
ーー制作期間は1カ月なの?
毎日描いていたわけではなく、足掛け2カ月位です。暇があるとコツコツ描き足していました。細かい作業なので、時間がかかりました。
ーーどうやって描いたの?
iPadにあるメディバンという絵画アプリがメインで、時々フォトショップも使いました。
4本指の下、手のひら上部がポイント
ーーこだわった部分や難しかった部分はどこ?
色です。リアルさにこだわっているというわけではなく、人の手に流れる血液や体温をどうしたら表現できるかを考えながら色を重ねました。面倒だったのはシワです。
ーーお気に入りのポイントは?
シワなどがよく注目されますが、自分としてはシワより、4本指の下、手のひら上部が気に入っています。手の湿気や筋肉を覆う皮膚感がうまく描けたと思います。
手のひら上部は主に赤、ピンクを使いつつ、グレー、黄色を光と影に使用しました。全体的に、絵の具で描くように、厚塗りしたり水で薄めたような透明度の高い色を使ったりしています。
この点では絵の具とは変わらないのですが、デジタルなので、複数のレイヤー(透明フィルムを重ねて、1枚1枚別に描く)を使いながら、細部への描き込みへ進みました。
ーー出来栄えはどう?
今、持っている技術でいろいろ工夫して描けたので、この絵の出来栄えは満足していますが、練習やお試し作のようなものと考えています。これはこれで完成としました。
お気に入りは絵の具とボールペンで描いた作品
ーー絵はいつから描いているの?
絵は好きで、物心ついた時から描いていました。
ーーお気に入りの作品を教えて
緑と黒の絵が気に入っています。
美大受験予備校で出された、影は絵の具、稜線(面と面の境界線)と描き込みはボールペンで描くという課題を自分なりに再解釈して描いたものです。
絵の具は何色を選ぶか、かなり悩んだ末、ベリルグリーンというこの色にしたのですが、発色よく、気に入っています。
手やサザエ、それぞれの質感を描き分けることを意識し、かなり時間をかけました。
ーー作品に反響があったけど、どう思う?
海外からの反応の方が国内より多くて驚いています。皆さん、フレンドリーにいろいろな言葉をかけてくださり、楽しいです。
今後も描きたいシチュエーションの手を描いたり画材を変えて好きに絵を描こうと思っています。
シワを一本一本描いていたら一カ月がたっていました pic.twitter.com/Z71m9oRcJb
— なな (@NANA_kome2017) August 16, 2024
コツコツと描き続ける集中力と細部まで色を探究する心が、作品にも表れているのだろう。これから生み出される作品も楽しみだ。