SNSなどで「絶対に儲かる」などとうたい金をだまし取る。いわゆる「SNS型投資詐欺」の被害が全国で急増している。沖縄県内でも2024年に入って被害額は7億円を超えた。その巧妙な手口の実態に迫った。
高まる投資熱 増加する詐欺被害

株式投資や資産運用に関する書籍が所狭しと並ぶ那覇市の書店。政府が推奨する新NISAが始まったこともあり、県民の投資への関心は非常に高まっている。ジュンク堂那覇店でも若者や女性、ビジネスパーソンなど様々な人が投資の本を手にする。「どうやったら株式投資をやることができるのか」という初心者向けの本の問い合わせが多いという。こうした投資熱の高まりに乗じて沖縄県内で横行しているのが、身近なSNSを使って投資を持ち掛け、金をだまし取る「SNS型投資詐欺」だ。
沖縄県警によると、2024年1月から7月末にかけて確認された「SNS型投資詐欺」の件数は50件で、被害額の合計は7億円を超えている。InstagramやFacebookには「絶対に儲かる」「投資のコツを教える」などうたう広告や投稿が頻出する。それらを入口にLINEなど個別に連絡が取れるメッセージアプリへ誘導し、投資を持ちかけるのが手口の特徴だ。

被害者を信用させるため犯人側は様々なアプローチを取るという。
玉城友也 捜査二課 次席:
犯人側と直接のやり取りが始まって、長い時間をかけて被害者を信用させ、利益が出ているように見せかけられる。しかし利益を引き出そうとしても応じてもらえず、不信に思って被害に気付くという流れになります
2億円近く騙し取られた男性のケース 記者のスマホにも「絶対もうかる」
2024年7月、沖縄本島南部に住む50代の男性がSNSで知り合った男から投資話をもちかけられ、約1億9500万円を騙し取られた。被害者の男性は投資で利益が出ている虚偽の画像で相手を信用した。しかし口座から金を引き出そうとしたところ連絡が取れなくなり、被害に気が付いたという。
詐欺の魔の手はどのようにして私たちに忍び寄るのか。「投資で儲かる」とうたうSNSアカウントに記者がアクセスしてみた。
沖縄テレビ記者:
SNSで「投資・儲かる」と検索すると出てきたこちらの投稿。アカウントのURLをタップすると…「私のレクチャーで全て解決します」とうたうホームページが出てきました。このホームページでは、投稿主が投資で大きな利益を得ていると紹介されていて、高級なブランド品の写真が載っています

記事には、投稿主の指導を受けて儲かったという人とのメッセージのやり取りが掲載されていて、終わりには「稼ぎたい人は登録してください」とLINEアカウントの追加画面が表示された。LINEアカウントを追加してやり取りを続けると、海外の投資サイトに誘導され、口座を開設するよう求められた。
狙われる人の特徴とは
SNS型投資詐欺に詳しい髙良祐之弁護士は「よくある詐欺のやり方のひとつではあるので、詐欺の可能性もある」と指摘する。詐欺グループが狙うのは仕事を退職した人や家族と疎遠な人など周囲との関係が希薄な人。その心の隙をついてくるという。
髙良祐之 弁護士:
犯人側は社会的なつながりが薄くて、孤独を感じている方を詐欺のやりとりにはまらせてしまう。時間をかけてじっくりじっくり信頼を得て大きくだます。最後に根こそぎ剥ぎ取る
また、SNSの操作に不慣れな人やネット犯罪の知識に乏しい人も被害に遭いやすいという。では、被害に遭わないためにはどのような心がけが必要か。髙良弁護士は、「投資の負の側面として、必ず悪意を持って詐欺をはたらくグループがいるため、それを見抜く注意力をしっかりと持たないといけない」と話す。悪質な広告を規制する法制度は未整備でSNSを利用する個人のリテラシーに委ねられているのが現状だ。
髙良祐之 弁護士:
SNSの広告はまだまだ無法地帯の状態がしばらく続きます。その状態で出ている広告を信じることは、非常にリスクが高い
「絶対に儲かる」「人生が変わる」といった甘い誘惑にあふれるSNS。詐欺被害の危険は、私たちの身近に潜んでいる。