少子化や価値観の多様化で、2023年の日本の結婚件数は戦後最低となったうえ、結婚しても結婚式をしないケースが増えている。G7サミットのメイン会場となった広島市の元宇品地区にはホテルを含めた結婚式場が4つ集中しているが、ライバル同士がタッグを組んで式場巡りツアーを始めた。
海沿いの狭い地区に4つの結婚式場が集まる
広島市南区の元宇品地区は、橋でつながった小さな島で、2023年5月のG7サミットのメイン会場となったホテルを含め、4つの結婚式場があるブライダル激戦区。7月にライバルの4つの式場がタッグを組み、それぞれの施設を回る合同のブライダルツアーを企画した。
この記事の画像(19枚)7月中旬、4つの施設の代表者が集まり、ツアーについて話し合った。コロナ禍以降の苦しい状況はどこも同じで、それぞれの思いをぶつけあった。
グランドプリンスホテル広島・平岡千枝さん:
この島の中に4つも式場があって、みんなで一緒に何かができたらと思った。私たちはホテルだが、ゲストハウスもみて、その良さを感じていた。
今回のツアー企画の背景には、結婚式を挙げる人の減少がある。2023年、結婚した男女は、約47万5000組で、戦後初めて50万組を下まわった。ピーク時の1972年の約110万組からの落ち込みは大きい。
ブライダル業界にとっては、結婚件数の減少も深刻だが、結婚しても結婚式をあげないカップルが増えていることがより大きな問題だ。これに対しては、新たなブランドを打ち立て、集客することが必要と業界の人たちは感じているようだ。
ザ サウスハーバーリゾート・小林優さん:
コロナ禍で結婚式をしない人や、結婚に対してもネガティブなイメージを持ってる人も増えてきていると感じたので、「結婚っていいもの」とか「結婚式って素晴らしいんだ」ということを感じてもらえるきっかけになればと思う。
それぞれが工夫した演出を展開
イベント当日、ツアーは、G7広島サミットの会場にもなったグランドプリンスホテル広島からスタート。ツアーに参加したカップルに同行した。
この施設には個性の違う2つの施設がある。リゾートホテルならではの瀬戸内海を一望できるチャペルと見晴らしのいい披露宴会場。
また、テラスなども使い、全体をゲストハウス風に演出することもできる。
ツアーに参加したカップルからは、「ゲストハウスと2階のチャペルだけでも迷う」との声が…。
このホテルから車でわずか5分の所にあるのは、ルメルシェ元宇品。25年前、中・四国、初のゲストウェディング会場として誕生した。
アプローチや庭には、緑豊かな木々が植えられ、チャペルは参列者と近いつくり。海が見える庭と一体化した披露宴会場は、一軒家を貸し切りでブライダルという演出になっている。
ルメルシェ元宇品・阿部千絵さんは、「とてもきれいなガーデンと2人の家として利用してもらうようなアットホームな結婚式場」とアピールする。
また、海外のリゾート地の雰囲気が売りなのが、ザ サウスハーバーリゾート。非日常を演出するコンセプトだ。
ザ サウスハーバーリゾートの小林優さんは、「広島で感じることができる唯一のリゾートウエディングをテーマに元宇品の中でもリゾート感が最もある会場だと思っています」と自信を見せる。
ツアーに参加したカップルは「宴会場などで意外と席が近かったりして思ったよりアットホームな感じ」という反応だ。
ツアーの最後がリーベリア。こちらのチャペルは、120年以上前に、イギリスのマンチェスター地方で使われていたものをそのまま移築したそうだ。庭を使った、ガーデン挙式など、ユーザーの幅広いプランに対応可能な設計になっている。
リーベリアの水津侑香さんは、「波音が聞こえるくらいの近さで自然を感じてもらえるような会場」とアピールする。
4つの施設を実際に見てもらうことからスタート
1施設、1時間、4つの施設を一気に回る弾丸ツアーを体験したカップルは「もらったパンフレット見返して悩みます」と、どことは決められず迷っているようだった。
変化するブライダル市場に対応するため、ライバル同士がタッグを組んだ企画の手ごたえはあったのだろうか?
グランドプリンスホテル広島・平岡千枝さん:
元宇品の中にある会場は全部テイストが違うので、お客を取り合うのではなくて、マーケットをうまく盛り上げていくことが、持っていきやすいエリアだと今回改めて思いました
リーベリア・原本 隆さん:
次につながるイベントになったと思うので、そういう意味では個人的には成功だと感じています
ライバル同士がタッグを組んだブライダル戦略で、地域のブライダル市場を再活性化させることが期待されている。
今の若い世代は、結婚式に対する考え方や価値観の変化で、大勢の人を集めて行う披露宴を開くなら、そのお金を別のところに使いたいと考えるカップルが増えているようだ。人生の節目の祝福の時をどう演出して見せるか、それぞれの施設の取り組みはこれからも続く。
(テレビ新広島)