7月26日から全国公開されている仮面ライダーの映画最新作。「VFX」のクリエイターとして島根・出雲市在住の男性が制作に携わり、大迫力の世界観を演出している。制作秘話とリモートでの仕事ぶりを取材した。
最新作の“重要場面”ロケ地に決定
7月26日、出雲大社前の神門通りに島根県の観光キャラクター「しまねっこ」とともに姿を見せたのが「仮面ライダーガッチャード」。
この記事の画像(12枚)島根県と関わりの深い映画最新作をPRするため、ここ出雲に現れたのだ。
26日から全国公開された特撮2大ヒーローによる豪華2本立ての劇場作品。このうち「仮面ライダーガッチャード」の作品では、重要なシーンのロケ地として出雲市と雲南市が選ばれ、2024年5月に各地で撮影が行われた。
その1つが出雲市にある「出雲ドーム」だ。
ファンがロケ地を巡る、いわゆる“聖地巡礼”で観光への波及効果を期待できることから、出雲市が地元出身の制作スタッフに打診し、島根県での撮影が実現した。
出雲市と雲南市、それに島根県の3者が、撮影経費などであわせて800万円を支援している。
東映テレビ・プロダクション 永井大裕さん(出雲市出身):
東映本社のプロデューサーたちといろいろ相談をして、周りのみんなが面白がってくれて「島根で撮りましょう」となった。
竹下登元首相の孫でタレントのDAIGOさんも出演するなど、島根県との関わりがいくつもあるこの映画だが、実はもう1つ島根とのつながりがあった。
出雲市から映画制作に携わる男性
出雲市に住みながらこの映画の「VFX」=「視覚効果」を手がける、VFXデザイナーの高橋泰孝さん(47)だ。
ワイヤが映らないよう消したり、アクションシーンで武器からの光線や爆発などをCGで加えることで、特撮ならではの迫力あふれる映像を作り出している。
高橋さんの仕事場は、出雲市内にある実家の蔵を改装した秘密基地のような空間だ。
今回の映画で特にこだわったのが、出雲ドームに無数の敵が集まるシーン。
「ドームいっぱいに敷き詰めてください」という監督の要望に応え、デジタルで、敵の兵隊の人数を実際より増やしているのだという。「監督も簡単に言うなって思うのだけど(笑)」と、高橋さんは笑って振り返る。
また、飛んでいく動きはキャラクターを1人ずつ動かすという。編集過程の映像を見ると、パソコンの画面上からもそのこだわりが垣間見えた。
VFXデザイナー・高橋泰孝さん:
メインの作業のレイヤーが、100ぐらいある。その1つの中に、40個ぐらいレイヤーがある。
1日の作業時間を聞くと、「ずっとやっています」と話す高橋さん。徹夜してしまう時もあるそうだ。
当時の業界はリモートワーク珍しく…
高橋さんは地元・出雲高校を卒業後、東京都の映像系の専門学校で3DCGを学んでいた。その頃に仮面ライダーの制作関係者に声をかけられ、この仕事を始めた。
2000年に始まった平成仮面ライダーシリーズから制作に関わり、長男として実家に戻るため、2010年に出雲市へUターンした。
当時、業界ではリモートで働く人は珍しく、インターネットの通信速度も今ほど速くなかったため苦労が絶えなかったという。
VFXデザイナー・高橋泰孝さん:
「島根の人に仕事を出すか?」みたいな雰囲気も多分あった。全く知らない関係だと(継続は)難しかったと思う。(編集した動画が)ネットワークに上がりきらないことがあって、ハードディスクを買ってきて、直接、速達で送ったりした。
コロナ禍を経て、今では当たり前になったリモートワークに、高橋さんは先駆的に取り組んでいた。
VFXデザイナー・高橋泰孝さん:
東京に行かないとだめだと思っている人もいると思う。東京に行くのはいいのだけど、(地元に)戻ってきてもできる。ローカルでもクリエイティブな仕事はできることは伝えていきたい。
仮面ライダーだけでなくスーパー戦隊シリーズなど、数々の作品に携わる高橋さん。これからも出雲の地で大迫力の映像を作り出し、特撮ヒーローを支える。
(TSKさんいん中央テレビ)