富士山が開山し多くの人が登山や観光に訪れる中、心配されるのが滑落や遭難だ。静岡県警によると2024年は7月だけで遭難事故と救助要請が24件あり(開山以降)、4人が死亡。静岡県警では52年前から山岳遭難救助隊を組織していて、このうち富士山・富士宮口登山道を管轄する富士宮警察署の救助隊には2024年度新たに1人の隊員が加わった。
先輩の姿を見て志願
この記事の画像(10枚)富士宮警察署 富士根交番に勤務する岡本憲伍さん(21)。
拝命3年目の若手警察官で、主な仕事は事故の初動対応や地域のパトロール、それに各家庭や企業を訪問しての防犯指導だ。時には小学生の登下校を見守っている。
学生時代は陸上競技に打ち込んだという岡本さん。
スポーツの世界で勝負するという夢を叶えるため、高校を中退してボートレーサーの養成所の門をたたいた。
しかし、足首のケガなどもあってボートレースを断念。地元に戻り、幼少期に憧れていた、もうひとつの職業の警察官を目指した。
そして、2024年4月には志願して富士宮署の山岳遭難救助隊に入隊。
富士宮署山岳遭難救助隊・岡本憲伍さん:
実際に出動して活躍している先輩や上司の姿を見て、「自分もこういう風になりたい。現場で救助活動に従事したい」という思いや憧れを持って希望しました
高山病や低体温症を想定し救助訓練
富士山・静岡側の開山を目前に控えた7月上旬。富士山富士宮口5合目では、岡本さんも参加しての救助訓練が行われた。
「高山病の疑いがあり、動けなくなった。震えや寒気もあり、手足の指先の感覚がなくなってきた」との通報を受けた想定で、搬送用具や低体温症に対応できる道具を積んで現場に向かう。
入隊から3カ月の岡本さんも、これまでに学んだ先輩隊員の動きを思い出しながら、要救助者への対応を実践。
要救助者役:
手がしびれて指先も足先も全然だめです
岡本さん:
しびれですかね。頭痛はありますか?
要救助者役:
はい、寒いです。ちょっと気持ち悪いです
先輩のアドバイスを参考に
もちろん、最初から完ぺきというわけにはいかない。
先輩からは、指などを触って感覚があるか尋ねるようアドバイスを受けた。
岡本さん:
指先をちょっと握りますよ。(私の指を)握れますか
要救助者役:
これが限界です
岡本さん:
ちょっと力が入らないですかね
隊員たちは要救助者の症状や訴えから自力での歩行は不可能と判断し、担架を使って安全な場所へと運び出し訓練は終了となった。
岡本さんは「きょうは低体温症の要救助者を救助する訓練で、現場でよくあるケース。自分はまだ経験がないので勉強になりました」と参考になったようだ。
「山を知っている男になって」
まだまだ学ぶべきことが多い岡本さんだが、その意欲的な姿勢に対しては先輩隊員も期待を寄せている。
県警山岳遭難救助隊・武藤諭 副隊長:
山を知っている男になってもらいたい。趣味で登るのもそうだし訓練もそうだが、とにかく山をたくさん知っている男、「岡本がいればもう山は大丈夫だ」という男になってもらいたい
富士宮署山岳遭難救助隊・岡本憲伍さん:
現場は危険なところが多いので、そういったリスクとかも考えつつ、現場に果敢に立ち向かっていける、どんな救助者でも助けるという強い気持ちを持って取り組める隊員になりたい
山岳救助のエキスパートになるために。
岡本さんの夏は始まったばかりだ。
(テレビ静岡)