警察官を養成する警察学校にテレビ新広島の新人記者が取材のため、体験入校した。トレーニングが中心の泊まり込みでの取材となったが、警察官の仕事を支えるチームワークの大切さを実感した。
新任警官候補生の訓練プログラムを体験
今回、広島県警の警察学校に2日間、体験入校したのは、4月に入社したテレビ新広島の新人記者で警察を取材している向井智美。
この記事の画像(22枚)4月に入校した新任警察官候補生は約140人で、向井記者が一緒に学んだのは大学卒業組の初任科生、男性15人、女性6人の「3班」
警察官に応募した理由を聞くと、「落とし物でお世話になったから」「白バイ隊員になりたい」など様々だ。
入校の挨拶を終えると、早速学生が毎日取り組んでいるというトレーニングに向井記者も参加。
持久力や筋力をつけるため、スピード感と大きな動きが特徴のウォーミングアップから始まった。トレーニングの内容は男女一緒。
向井記者:
足腰にきます…
素早い判断が求められる逮捕術
逮捕術のトレーニングは、剣道の防具をつけ、短い棒を使い、自分の命を守りつつ、犯人を捕まえる訓練。素早い判断と力強い打ち込みが求められる。
教官:
自分の命を落としてしまったら元も子もないので、空ぶってしまってもしょうがない。割り切って、まず間合いを取って、立て直したりとか、自分の中で切り替えて、最後までやってください。
向井記者も挑戦してみたが、どう打ち込んでいいのかが、よくわからない様子だ。
胴着や防具を着た状態では、なかなか力強く打ちこめない。学生にコツを聞いてみた。
学生:
手だけではなく、体全体でふったほうが力が入りやすいので、足とかを使いながらやるのがいいと思います。
鑑識で指紋の検出を体験
しっかり汗をかいた後、今回は特別に犯罪捜査にかかわる鑑識も体験。専用の粉をつけると指紋の部分に反応する。
学生たちは、ゼラチンでできた特殊なシートに気泡が入らないように指紋を写す。
学生:
人の人生を大きく変える証拠採取ですからね…真剣にやらないとまずいですよね。
指紋は捜査上、重要な証拠になるので、慎重に扱う必要がある。
重さ8キロの盾をバトンにリレー
向井記者は、最もきついといわれる盾を使ったトレーニングにも挑戦した。およそ8キロある盾を手にグラウンドをランニング。
さらに、このあとは盾をバトンがわりにしたリレーを2回戦も。最後は半周遅れの向井記者に、同じ班のメンバーが、励ましながら一緒に走ってくれた。
毎日のトレーニングは女性にとっては、かなり厳しいと感じたが、実際に女性はどう感じているのか。夜、女子寮で同じ部屋の学生が本音を語ってくれた。
学生A:
警察官は組織で動くので、足を引っ張らないように努力はしているんですけど、どうしても埋められない差がある。
学生B:
声を出すことが私はしんどい。「私は得意じゃないから」で許されるようなところじゃないので、本当に自分ひとりじゃないというのが大きな心の支え。
それでも、折れることのない警察官を目指す強い意志が彼女たちの背中を押す。
2日目を迎えた。警察学校の朝は早く、午前6時半過ぎから体育館で朝の体力トレーニングが始まる。
この日、学生たちは「夏季訓練納め会」を控えていて、朝から気合がみなぎる。向井記者は、皆さんの気合に圧倒されるばかりだ。
春から訓練を重ねた学生たちにとっていよいよ節目の大会が始まった。4か月の集大成、学生たちは日々の練習で培ったものを発揮する。
試合を終えた学生は…
学生:
これからも努力し続けて、県民の方を守れる力強い警察官になりたいと思っています。
初任科生たちは切磋琢磨しながら、半年間のカリキュラムを経て、一人前の警察官となる。
「仲間の絆」を実感した2日間
スタジオでは体験入校した向井記者が泊まり込みで取材して感じたことを振り返る。
向井記者:
本当にハードな2日間で全身が筋肉痛になりました。同じ班の学生は、みんな私と同じ年でしたが、日頃のトレーニングの差を見せつけられました。学生は基本、朝6時半から夕方5時まで授業や実習など半年間のカリキュラムを受け、ようやく警察官として現場に配属されることになります。
向井記者:
毎日が、かなりハードなスケジュールですが、私が今回、最も衝撃的だったのが、着替えの際に見えた女子学生たちの左肩にできた大きな痣(あざ)です。これは取材の最初にもあった逮捕術でできた痕ということで、相手を犯人と思って強く肩に打ち込むため、痣が絶えないということです。かなり痛々しく、学生たちの忍耐力を感じた瞬間でした。
コメンテーター 元広島東洋カープ・山内泰幸さん:
それにしても体力的にはほんとしんどそうでした。女性の方はしんどかったと思います。
向井記者:
精神的にもかなりハードなトレーニングですが、それだけに仲間でお互いを支えあいながら、同じ目標に向かって一緒に乗り越えていく仲間の絆が本当に重要だなと感じました。
文字通り「体を張って」取材した向井記者が、この貴重な経験を活かし現場で活躍することを期待せずにはいられない。
(テレビ新広島)