指先を美しく彩ってくれるネイルアート。鹿児島で今、ネイリストの資格取得を目指す人が増えている。背景には、美容だけでなく、医療の現場でもネイルの技術が求められていることが分かった。

ネイルの資格を目指す人たちが増加

鹿児島市にあるネイルの専門学校「鹿児島ネイルカレッジ」では、20代から40代の女性たちが、資格の取得を目指し、専用の機械を使って指先を整える作業を練習していた。

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保育士からネイルという全く別の世界に飛び込んだ人や、母親にジェルネイルをしてあげたいと語る人など、様々だ。

ネイリストになるのに必ずしも資格は必要ないが、ネイリスト技能検定試験を受験し、資格を取得するのが一般的だ。

登録されている鹿児島県内のネイルサロン数を表したグラフ
登録されている鹿児島県内のネイルサロン数を表したグラフ

鹿児島ネイルカレッジでは、資格の取得を目指す受講生の数が前年比の2倍で推移することもあるなど、ここ数年、増加傾向が続いている。鹿児島ネイルカレッジ・豊法子校長によると、個人で独立する人も増えていて、ネイルサロンの数は増える傾向にあるという。
WEB予約サイトに登録されている県内のネイルサロンの数をみても、ここ数年増加傾向にあり、県内でも新たなサロンが増えていると見られる。

自宅でネイルサロンをオープン

実際にサロンを開いた女性・小村佳珠世さんを訪ねてみた。

ネイルサロンを開いた小村佳珠世さん(左)
ネイルサロンを開いた小村佳珠世さん(左)

小村さんは、6年前にネイリストの資格を取得し、自宅の一室で施術をスタート。コツコツと実績を重ね、2022年には自宅敷地内に完全個室のサロンをオープンした。

小村佳珠世さん手掛けたネイルアート作品
小村佳珠世さん手掛けたネイルアート作品

サロンを始める前はパートで働いており、通勤時間が往復で1時間ほどかかっていたが、今はその時間を家事や家族との時間にあてることができるようになった。客の予約の合間に自宅とサロンの行き来ができ、その間に掃除や夕飯の下ごしらえをしている。子育てが終わったら店をもう少し大きくしたいという。

医療の現場で求められるネイルの技術

個人でも生かせるネイルの技術は今、意外な場所でも活用されている。

鹿児島市の相良病院で、放射線技術士として働く原口織歌さん
鹿児島市の相良病院で、放射線技術士として働く原口織歌さん

乳がんなど女性のための医療で知られる鹿児島市の相良病院で、放射線技師として働く原口織歌さんは月に1回、がん治療で入院している患者の爪のケアを行うプログラムに参加している。

原口さんは放射線技師として患者に接するうちに、抗がん剤の副作用で爪が黒くなったり波打ったりする悩みを持つ患者が多いことに気づいた。そこで原口さんは2023年、ネイリスト検定を受検し合格。2024年から院内でネイルケアを行っている。

ネイルケアをする原口織歌さん
ネイルケアをする原口織歌さん

この日訪れたのは、抗がん剤治療を始めて5カ月になる女性だ。この女性は痛みから自分の爪を触りたくなくなっていた。治療で柔らかくなった爪は、爪切りで切ると割れてしまうことがあるため、原口さんは少しずつ削って整える。

ネイルケアを受けた女性の感想
ネイルケアを受けた女性の感想

日本ネイリスト協会によると近年、抗がん剤の副作用が出た爪のケアを提供する機会が増えているという。背景には、爪が割れるのを防ぐのはもちろん、がん治療をしながら仕事をする人が増えていることから、見た目が気になるという声や、細やかな心のケアが求められていることなどが挙げられるようだ。

原口さんのネイルケアを受けた女性は、「抗がん剤治療は見た目が変わってくるから、とてもうれしい」と声を詰まらせた。原口さんは「少しでも爪がきれいになることで気分が晴れて、治療にも前向きになってもらえたらうれしい」と優しい表情で語った。

日本ネイリスト協会によると、技術を学ぶ人の中には、原口さんのように医療に携わる人や、実際にがんを経験した人もいるそうだ。

ネイルの技術は、美容だけでなく医療の現場でも求められる。ネイル業界で働く人も、施術を求める人も今後、増えていきそうだ。

(鹿児島テレビ)

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鹿児島テレビ
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