昔食べたあの店のあの料理、大好きで通い続けている、そんな素敵な「味」の思い出はないだろうか。愛媛・伊予市にある明治創業の料理店には、時代を越えて愛されている看板メニューがある。

創業130年超 地域を代表する老舗店

伊予市にある伊予鉄道・郡中駅。その駅前周辺は古くから残っている建物もあり、歴史と文化を感じる町並みが広がっている。

この記事の画像(23枚)

町を歩くと老舗の雰囲気、風格が漂う建物があった。店の中もレトロな雰囲気だ。
この店は、伊予市湊町の料理店「濱田屋」。創業は今から130年以上前の明治25年で、地域を代表する老舗店の1つだ。

店を切り盛りするのは6代目の濱田芳雄さん。濱田さんは「明治に創業して、ここの建物を昭和8年に建てて、その時に裏もあったんだけど裏も改装して。少しずつ形を変えながら」と語る。

サクサクの食感 “とじない”カツ丼

地域の歴史とともに歩んできた濱田屋の看板メニューの1つが「カツ丼」だ。70年ほど前に誕生したメニューで、濱田屋ならではの特長がある。

卵でとじているイメージがあるカツ丼だが、卵でとじないのだ。濱田さんは「うちはカツ丼はタレをかけるだけです。昔からこれです」と語った。

この「カツを卵でとじない」カツ丼は、濱田さんの父・芳正さんが考案したという。

濱田さんは、「天丼なら卵でとじずタレだけ。カツ丼はカツにタレかけてるだけ。松山で卵とじのカツ丼を食べたりして、父も多分知ってるはず。だけど、このスタイルを通した。普通は小麦粉つけて溶き卵つけてパン粉ですけど、うちは卵と小麦粉をあわせたものでつけている」と話す。

昔と変わらない作り方で揚げたサクサクのカツを熱々のごはんに乗せ、特製の少し濃い、醤油の甘いタレをたっぷりとかけて完成だ。

カツの衣はサクサクで、かむと肉の甘みがじゅわーっとあふれる。タレがかかっているカツも、かかっていないところと混然一体。ごはんも甘めのタレがしみていて、シンプルだが深い一品になっている

歴史ある老舗 かつては結婚式も

ここからは、濱田屋に伝わる老舗のアイテムやポイントを紹介する。

宴席で使われたという「太鼓」に「火鉢」。濱田さんは「宴会してる時にたたいて楽しくやっていた」「冬になって、宴会があるときは火を入れている」と説明してくれた

さらに風格のある階段を上り2階へ移動すると、50畳を超える広さの座敷が広がっていた。宴会はもちろん、30年ほど前までは結婚式も行われていたそうで、濱田さんもここで式を挙げたという。

懐かしい味わいで人気の「中華そば」

そんな濱田屋のもう1つの看板メニューが、60年ほど前から親しまれる「中華そば」。昭和を感じる懐かしい味わいが特長の一杯だ。

味付けは「ムロアジ節」としょうゆ。まろやかで少し甘めのダシと一緒にモヤシやキャベツ、ニンジンに豚肉など盛りだくさんの具材を煮込む。熱々のダシと具材を食べ応えのある中太麺と絡ませて完成だ。

具だくさんで、琥珀色のスープが美しい。スープはやさしく、田舎に帰ってきたような、「帰省してきました」というくらいの心が落ち着く味だ。太めでモチモチの麺とやさしいスープが混然一体となっている。

明治から続く濱田屋。守っていきたい、つないでいきたいことを尋ねると、濱田さんは「地域に密接した店が一番良いですね。仕入れ先も変わっているが同じ味が出ている。昔から食べてる人は『あぁ同じだね』と来てくれる。うれしいですね」と語った。

時代とともに移り変わる町並みや文化の一方で、変わらない味も…。老舗店に受け継がれるおいしさに癒されてみてはいかがだろうか。

(テレビ愛媛)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(23枚)
テレビ愛媛
テレビ愛媛

愛媛の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。