愛媛・松山市の沖にある「中島」。ここで巡回診療を続ける1人の歯科医がいる。「誰かがやらないといけない」と、高齢化と人口減少が進む離島の医療を守る男性の思いと活動を取材した。
週に1回の巡回診療を続ける歯科医
4月19日、中島に向かうフェリーにその人の姿はあった。歯科医・澤田大定さん(43)だ。
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歯科医・澤田大定さん:
2015年4月から2023年2月まで中島で歯科医院を開業していました
現在は松山市三津で歯科クリニックを開業している澤田さんは、2023年まで「島で唯一の歯医者さん」だったのだ。松山の沖合10kmほどのにある離島「中島」は、温暖な気候や自然に恵まれ、かんきつ栽培や漁業が盛んだ。
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赤ちゃんを連れた島の女性:
中島は小児科もないので、予防接種の度に船に乗っていかないといけない
中島の推計人口は2700人ほどと、約20年前の半分近くにまで減少し、高齢化率も6割を超えている。澤田さんは、脆弱(ぜいじゃく)な島の医療体制を守りたいと8年間、歯科医院を営業したが、経営は簡単ではなかった。
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歯科医・澤田大定さん:
将来的なことを考えたときに高いレベルで医療を維持することが難しいなと。人口も減ってますし、そういう意味で設備投資も難しいし。立ち上げの時からお世話になった中島の方に申し訳ない気持ちもありました
澤田さんは悩んだ末に2023年、松山市内への移転を決めた。しかし「島の歯医者さん」としての道を捨てたわけではない。島に到着した澤田さんが向かったのは、中島の元「みなと歯科医院」だ。松山市内まで来るのが難しい患者のため澤田さんは今、週に1回巡回診療を続けているのだ。
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(Q.結構大荷物だが、何が入っている?)
歯科医・澤田大定さん:
レントゲンとか。あと巡回診療先に薬品とか置けない、在庫を置いちゃダメなんですよ。なので全部持っていかないと。全部一人で
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(Q.歯科衛生士や助手は?)
歯科医・澤田大定さん:
人件費の関係で連れて行けないですね。船代だけで往復1万円ぐらいかかります
歯科医院は看板も当時のままだ。
歯科医・澤田大定さん:
高齢者がメインです。75歳以上。最低限の設備でも患者さんが喜んでもらえるので
島にとって“なくてはならない存在”
機材のセッティングが済むと早速、予約の患者がやってきた。
澤田さんは「きょうは(上の)取れてる所に歯を足すのと、入れ歯がちょっと緩いからきつく調整しておきます」と説明し、治療を行った。
簡易な設備のため高度な治療はできないが、それでも島の高齢者にとってなくてはならない存在だ。
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女性患者:
これから自分の歯で食べられる。いい先生よ。私らの言う通りにしてくれる
別の女性患者:
(先生は)優しい、いつもお世話になっとります。(巡回診療が)なかったら船で行かんといかんけんな。よう行かんわいな。なかったら大変なことになる。私らの年になったら
歯科医・澤田大定さん:
(1人で)予約と会計と入力と片付けと治療と、あと書類を作らないといけない
“情熱”を持って「地域医療に貢献」
手際よく診察を済ませた澤田さんは、休む間もなく車に診療器具を積み込み始めた。
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(Q.今から向かうのは?)
歯科医・澤田大定さん:
(高校の)歯科検診ですね。他にも小学校も中学校もやってます
島の学校で「学校歯科医」を務める澤田さんがこの日向かったのは、中島唯一の高校・松山北高校中島分校だ。
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中島分校の生徒:
時間をかけて来ているので、ありがたいなって思います
歯科医・澤田大定さん:
ここで小さいうちに(虫歯が)見つけられるのは子供さんにとってはいいこと
頻繁に通うことができない島だからこそ、澤田さんは、日頃から歯をケアする「予防歯科」の取り組みが重要と考えている。
「みなと歯科医院」に戻った澤田さんは、再び診療を行う。
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男性患者:
人間はどこでも大事だけど、特に歯は大事だと思う。以前は歯石が多かったんですけど、先生が電動ブラシを使用してみたらと勧めてくれて
歯科医・澤田大定さん:
(高齢者は)体を壊すので、口の中が汚れてると肺炎にもなるし、あと心筋梗塞の原因になったりとか、糖尿病が悪化したりとかそういうのが全部じゃないが、かなり防げてるんじゃないかなと思います
島の人たちのため、澤田さんは今後も巡回診療を続けるつもりだ。
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歯科医・澤田大定さん:
自分が歯科医師になった時の「情熱」を大切にして、かつ「地域医療に貢献する」ところを自分のできる限りやっていきたい。たまに離島に来て診療するっていう先生がいてもいいと思いますけどね
この他、島民への歯科医療に関しては、市の歯科医師会が松山市と連携して立ち上げている公的サービスもある。市内全域を対象に通院が難しい人向けに歯科医師を派遣する訪問診療事業で、離島の人たちも利用できるということだ。
(テレビ愛媛)