近年、世界各地で、大雨による洪水や命に関わる暑さなど、自然災害が毎年のように起きている。実際日本では、大雨の発生回数が明らかに増えている。“強度の強い雨”が降る頻度は、1980年頃と比べておおむね2倍程度になっているのだ。
※1時間降水量80mm以上(息苦しくなるような圧迫感があり、車の運転は危険なほど)、3時間降水量150mm以上、日降水量300mm以上などが“強度の強い雨”。気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」より
この記事の画像(9枚)そんな雨が降った時に懸念されるのが、土砂災害だ。NPO法人「土砂災害防止広報センター」のサイトなどをもとに、土砂災害の前触れを知る方法、危険な場所を確認する方法を紹介する。いざという時に備え、役立てて欲しい。
原因の多くは雨 雨量の目安をチェック
土砂災害の多くは大雨が原因で起こる。1時間に20ミリ以上の強い雨が降ったり、降り始めてからの雨量が100ミリを超えると、土砂災害が起こりやすくなるという。
雨量の目安は、次の通り。
【5~10ミリ】
地面のところどころに水たまりができる。家の中にいても、雨の音がよく聞こえる
【10~20ミリ】
地面一面に水たまりができる。家の中にいても、雨の音で話し声がよく聞こえなくなる
【20~30ミリ】
土砂降りの雨。小川や下水があふれたり、崖崩れが起こる危険がある
【30ミリ以上】
洪水や土砂災害の危険が大きい所では、避難を始める
土砂災害は雨が降っている時だけでなく、雨がやんだ後に起こることもある。大雨の後は、何日か注意が必要だ。
土砂災害タイプ別の“前触れ”
前回記事で、土砂災害には主に「土石流」「地すべり」「崖崩れ」の3種類があることをお伝えした。
(前回記事はこちら:巻き込まれると即「命の危険」も…忘れてはいけない“土砂災害大国”日本での地形と気候がもたらすリスク )
これらはどのような場所で起こりやすいのか、そして実際に起こる前にはどんな前触れがあるのかを、以下にまとめた。前兆現象に気付いたら、周りの人と声を掛け合い、いち早く安全な場所に避難することが大切だ。
1)土石流
山や谷の土砂が崩れ、水と混ざりながら、すごい勢いで山の下へと流れていく現象
【起こりやすい場所】
山から流れてくる傾きが急な川で、岸や上流に崩れやすい土砂がたくさんあるところ
※普段は水が流れていなくても、大雨が降ると急に流れが激しい川になるところもある
※谷の出口に大きな石がゴロゴロしているところは、前にも土石流が起こっていると考えられる
【主な前触れ】
・川の中で石がぶつかり合いゴロゴロという音がしたり、火花が見えたりする
・山全体がうなっているような音がしたり、地震のように震えたりする(山鳴り)
・「土の臭い」や「下水の臭い」、「腐敗臭」といった異常な臭いがする
・川の水が濁り、倒れた木が水と一緒に流れてくる
・雨は降り続いているのに、川の水が減る(土砂などにより、上流の水がせき止められているため。せき止めていた土砂が崩壊すると、一気に土石流として流れ落ちる)
もし巻き込まれそうになった場合、土石流が流れる方向(下向き)に逃げたら巻き込まれてしまう。すぐに川から離れて、高いところに逃げよう。
2)地すべり
傾きが比較的緩やかな斜面が、家や生えている木なども一緒に塊のまま、広範囲にわたってすべり落ちていく現象。
【起こりやすい場所】
・水を通しにくく滑りやすい、粘土の地層が広がっている
・水のしみこみやすさが、大きく違う地層が重なっている
・斜面の傾きと、地層の傾きが同じ
【主な前触れ】
・湧き水が増える
・風もないのに山の木がザワザワしたり、木が裂ける音・木の根が切れる音がする
・地鳴りや山鳴りが聞こえる
・池の水が濁ったり、急に増えたり減ったりする
・地面にひび割れや段差ができる
3)崖崩れ
雨や雪解け水、地震などにより、急な斜面が突然崩れ落ちる現象
【起こりやすい場所】
・5m以上の高さがある
・傾きが30度以上で急である
・ひびが入っていたり、表面に大きな石が飛び出している
・湧き水が多い
・崖の下よりも、上の方が張り出している
(雨でなくても、地震や強風などでも崩れる危険)
【主な前触れ】
・崖から急に水が湧き出たり、今までと違う場所から新しく水が湧き出たりする
・湧き水の量が急増したり、噴き出したり、逆に止まったりする
・湧き水が濁る
・崖にひび割れができたり、崖が膨らんだりする
・崖の上の木が、揺れたり傾いたりする
・地鳴りがする
・崖から小石がパラパラ落ちてくることもある
※ただし崖崩れは、前触れがなくいきなり崩れてくることもある
ただし大雨や雷雨の中では、地鳴りや山鳴りなどの音はかき消されてしまうかもしれない。また、川の濁りや湧き水の発生・亀裂といった現象も、大雨が降っている時や夜間では見えにくいだろう。前兆現象はあったとしても、感じ取ることが難しいこともある。
自治体や気象庁から発令される「土砂災害警戒情報」などをチェックすると共に、早めの避難を心がけることが大切だ。
ハザードマップは必ず入手して
ただ、実際に土砂災害の恐れがある場所かどうかは、パッと見ただけではわかりにくいだろう。日頃からハザードマップなどで、住んでいる場所・滞在する場所に土砂災害の恐れがあるかどうかを確認し、どこにどのように逃げればいいのか確認しておくことが必要だ。
ハザードマップは、都道府県や市町村のホームページで確認できるほか、市町村役場や役所の窓口で直接もらうことも出来る。危険箇所や、実際に災害が起きそう・起きた場合の避難場所、災害の備えなどの情報が載っている。必ず手に入れて、家の近くの危険箇所や避難場所を確認してほしい。
また、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」などでもチェックすることができる。
ただし、土砂災害警戒区域等でない場所でも、土砂災害が発生する場合もある。付近に崖や、小さな沢などがあれば注意が必要だ。
また、土砂災害が起きる危険がある場所には、看板が立てられていることもある。いつも通っている場所だと特に、当たり前の風景として見過ごしがちかもしれない。
自宅や職場、学校の近くにこのような看板はないか改めて調べ、こういう場所には、大雨や地震の際には近づかないようにしよう。
また、その土地に昔から住んでいるお年寄りに話を聞いたり、図書館にある「市史」や「町史」などで地域の災害について調べたりするのも、どこが危険かを知る良い方法だ。
大雨や土砂災害の頻度が高くなっている今、改めて住んでいる土地の危険性を知り、もしもの時に備えることが大切だ。
次回は、実際に避難をする時の方法や注意点を紹介する。
特集「今すぐ始める 我が家を守る防災」の記事一覧はこちらから↓
https://www.fnn.jp/articles/-/701567
【出典・参考】
・NPO法人「土砂災害防止広報センター」HP
・気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」
【参考URL】
・NPO法人「土砂災害防止広報センター」
危険(きけん)な場所を知る - 土砂災害防止広報センター (sabopc.or.jp)
・国土交通省 ハザードマップポータルサイト
ハザードマップポータルサイト (gsi.go.jp)