4月3日、東京・恵比寿にオープンしたのは、サッポロビールが仕掛ける新たなビール体験拠点ヱビスブルワリートウキョウ。
35年ぶりにビールの醸造を恵比寿で再開し、そのすぐそばで味わえるのはここでしか体験できないオリジナルのビールだ。
客からは「美味しいです」「結構すっきりしてて飲みやすかったです」「醸造釜が置いてあるからかもしれないけど、出来たてを味わっている感が強い」との声が上がった。
このブルワリーで復活したビール造りを今回、αプラスの堤礼実キャスターが、特別に体験取材した。
堤キャスターがヱビスブルワリートウキョウを訪れると、サッポロビールのトップである野瀬裕之社長自らが出迎えた。
最初に案内してくれたのはミュージアムエリアだ。そこには、ヱビスビールの製造が始まった1890年当時の「この場所」の写真が展示してあった。今の恵比寿からは想像ができないほど、工場の周辺には何もなかった。野瀬社長は「ここにヱビスビールがスタートして、ビールの名前が先にあって街の名前が恵比寿になっていきました」と説明した。
『恵比寿さま』をモチーフに日本人に愛されたヱビスビールは恵比寿の街とともに発展してきた。1988年に恵比寿工場は閉鎖されたが、今回、35年の時を経て、ヱビスブルワリートウキョウとしてビール造りが復活した。
この場所で醸造責任者を務めるのが有友亮太さん、38歳だ。
入社後、ビール造りを学ぶためドイツに留学し、その経験が買われ2年前、当時36歳の若さでヱビスブルワリートウキョウの醸造責任者に抜擢され、新しいビールを開発してきた。
野瀬社長は若手の抜擢について「新しいビールを『やっぱりビールっておいしいね』って伝えていくには、古いブランド、歴史のあるブランドだからこそ、新しいことにチャレンジをしたい。そのためには若い感性が必要だが、当然経験も必要だという中で、有友にチャレンジしてほしいと」と語った。
今回、特別にその醸造の仕込みを堤キャスターが体験取材した。体験するのは、麦芽とお湯の混ざった物をろ過したり煮沸したりして麦汁を作る工程で、堤キャスターがグラスビール3000杯分ほどの麦芽を投入した。
有友さんからは、「ゆっくり入れないと中で玉になってしまうのでそういうところも気にしながら」とのアドバイスを受け、堤キャスターも「どうしよう、緊張する。違ったら教えて下さい」と緊張しながらも、何とか麦芽を投入。有友さんからは、「うまいです。大丈夫です」とお墨付きを貰った。
麦芽をお湯に投入し1時間ほど煮出し、ろ過すると麦汁が完成する。このままでも飲めるということなので一口飲んだ堤キャスターは「ジュース！こんなに甘いんですか！ ビックリした！」と声を上げた。これにホップを加えると苦みが増し、さらに発酵させると、ビールが出来上がるという。
有友さんは今回の抜擢について、「こういった場所で作ったビールが、お客さんにダイレクトに飲んで評価をいただくので、そこのプレッシャーはすごく大きい」としながらも、「やってみるとあまり発酵がうまくいかなかったり、思った味にならなかったり。そこはおもしろいと思うところでもあるし、お酒造りが難しいと思うところでもある」と話した。
失敗を繰り返しても成功への過程として楽しむことが大事だという。
では、なぜ今このタイミングでサッポロビールは醸造所を復活させたのか。野瀬社長はその狙いについて、「最近若者のビール離れなんていう話もでてきますけども、ビールに触れる機会を我々ビールメーカーもやってこなかった反省がある」「これからのお酒は体験型価値というか物としての消費というより、事だったり時を共にしていく」と話す。
狙いは目の前で造られたビールを、その場で味わう体験を通じての需要拡大。
そのために開発された新たなビールが、若手醸造家の有友さんが2年間の構想を経て完成させたヱビス∞（インフィニティ）だ。
35年前に使われていた酵母などを使用し、かつ現代ならではの味わいを表現している。
試飲した堤キャスターは、「個人的なイメージだとヱビスビールって割とコクがあってしっかりとしたビールの味を楽しめるという印象だった。そこを残しつつ、ちょっとフルーティーさだったり軽やかさがあいまって、おつまみがいらない」との感想だった。
長い歴史と若い感性の融合の先にはサッポロビール、そしてヱビスビールが目指す場所があるという。
野瀬社長は、「当社の歴史的ないろんな思いを込めている場所に是非お客様におこしいただきたいんですよね。地元だけでなく日本、世界のお客様に『あのビール会社に行ってみたい』と思っていただけるようなビール会社になっていきたい。是非多くのお客様にお越しいただけるようお願いしたい」と話した。
