プロ野球が誕生して今年で90年。

プロ野球誕生と同時に生まれ、現存する最古の球団こそ『大日本東京野球倶楽部』。現在の巨人軍だ。巨人軍といえば王貞治、長嶋茂雄ら数々のスター選手を輩出し、1965年から9年連続で日本一を達成したV9は一世を風靡し「巨人・大鵬・卵焼き」という流行語まで生んだ。

そんな巨人がV9真っ只中の1969年に誕生したのが、東京ヤクルトスワローズの前身、『ヤクルトアトムズ』。

後に野村克也さんが監督として「ID野球」を提唱し、古田敦也さんを中心としたチームで1992年、1993年とリーグ連覇を達成した。

同じ東京をホームタウンとし、ライバル関係を築いてきた両球団。

1977年9月3日、巨人の王貞治さんが世界新記録となる756号HRを放ち“世界の王”となったのも後楽園球場でのヤクルト戦。

1997年4月4日、開幕戦でヤクルト・小早川毅彦が3打席連続ホームランを放ったのは、巨人のエース・斎藤雅樹からだった。

数々の名場面を生んだ“東京ダービー”から、さらに3つの球史に残るエピソードを紹介する。

ルーキー上原がマウンドで流した涙

1999年10月5日、神宮球場で行われたヤクルト×巨人の最終戦。

このとき、巨人・松井秀喜が41本塁打。ヤクルト・ペタジーニが42本塁打と、両チームの主砲が熾烈なホームラン王争いを繰り広げていた。

巨人の先発は、ルーキーながら19勝を挙げていた上原浩治。

この試合、松井が敬遠気味に歩かされ勝負を避けられると、迎えたペタジーニの第三打席、ベンチから上原に敬遠の指示が出る。

ここまで2打席、ペタジーニを抑え込んでいた上原。

ボール球を投じると、ヤクルトファンから「勝負しろ!」とヤジが飛んだ。

普通の敬遠なら軽く投げればすむところ、上原は全力で4球のボール球を投げ込むと、振り向きざまにマウンドを蹴り上げた。

そして、ユニフォームの袖で両目を拭うと、次の打者との対戦へと向かっていった。

マウンド上で涙を拭う上原
マウンド上で涙を拭う上原
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結局この試合、両チームの主砲にホームランは出ず。

上原は、9回を投げきり、ルーキーイヤーで20勝の大台に到達した。

自らの手で奪い取った200勝

2004年8月17日、東京ドームで行われた巨人×ヤクルト。

巨人の先発は、当時41歳の工藤公康。史上23人目の通算200勝に王手をかけたいた。

工藤はヤクルト打線に対し、ランナーを出しながらもベテランらしい粘りの投球で7回を2失点。味方の援護を待った。

すると7回裏、巨人はペタジーニのホームランで同点に追いつくと、さらに現監督の阿部慎之助がツーベース。2アウト2塁、勝ち越しのチャンスで打順は9番・工藤に回った。

普通なら代打も十分に考えられる場面…

しかし工藤は自ら打席に向かうと、高めのストレートを思い切り振り抜いた。

打球はライトスタンドに飛び込む勝ち越し2ラン。なんと、これがプロ23年目で初めてのホームラン。一塁ベースを回った41歳のベテランは、まるで野球少年のように喜びを爆発させた。

自らのバットでリードを奪った工藤は、その後もマウンドに立ち続けると、9回138球を投げ抜き、史上23人目の通算200勝を達成した。

200勝を達成した工藤(写真:産経新聞社)
200勝を達成した工藤(写真:産経新聞社)

“ゴジラ松井” 50号の裏にあった真っ向勝負

2002年10月10日。東京ドームでのシーズン最終戦。

オフにメジャー移籍がささやかれていた巨人の主砲・松井秀喜はこの時、史上8人目のシーズン50本塁打にあと2本と迫っていた。

第1打席。松井はレフトスタンドに49号ホームランを放ち、50号に王手をかける。しかしその後は2打席続けて凡退し、迎えた8回。

このまま行けば、この日の松井の最終打席。さらに、オフに海を渡る松井にとっては本拠地でのレギュラーシーズン最後の打席。ヤクルトのマウンドには、この回から当時23歳の五十嵐亮太が上がっていた。

五十嵐は、松井に対し全球ストレートの真っ向勝負を挑む。

それに松井もフルスイングで応える。

4球目、松井が高々と打ち上げた打球は三塁側のファウルゾーンへ。

誰もがファウルフライだと思った次の瞬間、キャッチャーの米野が目測を誤りまさかの落球…2人の真っ向勝負は終わらない。

そして迎えた6球目。

五十嵐が全力で投げ込んだ150キロに松井がバットを振り抜くと、打球は左中間スタンドへ。

本拠地最終戦の最終打席。松井は史上8人目の50本塁打に到達した。

試合後のヒーローインタビュー。松井は大観衆の前で、真っ向勝負を挑んだ五十嵐へ感謝と敬意の言葉を口にした。

数々の名場面を生んできた“東京ダービー”。

近年では、2018年10月14日、巨人のエース・菅野智之がクライマックスシリーズでは史上初のノーヒットノーランを達成したのもヤクルト戦。

そして、球界を代表する4番として切磋琢磨する巨人・岡本和真とヤクルト・村上宗隆など、そのライバル関係は今も脈々と受け継がれている。

節目を迎える両チームが鹿児島で激突

そんな巨人90周年、ヤクルト55周年を記念して今シーズン初対決となるヤクルトスワローズvs読売ジャイアンツの1回戦が4月9日に行われる。

中継解説は巨人時代にメモリアルな200勝目をヤクルトから飾った工藤公康さんと、日米通算906登板、あのゴジラ松井にストレート一本勝負を挑んだ剛腕・五十嵐亮太さん。両チームのメモリアルな歴史を作ってきた2人が新たな歴史の瞬間を見守る。

そして最前線のバックネット裏からは昨シーズンまで巨人のコーチを務めた元木大介さんが超現場目線でリポートを行う。

両チームの主砲は村上宗隆と岡本和真、令和のホームラン王を分かち合う2人。

巨人・岡本和真は今回の対戦、村上宗隆に対して「(対戦する平和リース球場は)土のグラウンドだから1塁ゴロだけは勘弁してください」と茶目っけたっぷりのコメント。

対してヤクルトの主砲・村上宗隆は「野球が注目されているので勝てる試合を皆さんにお見せできればと思います」と24歳ながらチームを引っ張る。

ヤクルトVS巨人 2024年初対決。試合の合間には両球団の歴史を遡る懐かし映像をお届けするメモリアルナイターは、4月9日(火)鹿児島・平和リース球場(鴨池球場・フジテレビ生中継)で開催される

ヤクルトスワローズvs読売ジャイアンツ
メモリアルナイターin鹿児島
4/9(火) 19時からフジテレビで生中継