2023年のバレーボールW杯で、パリ五輪への出場権を獲得した男子バレー日本代表。
3月には、パリでのメダル獲得を目指す『龍神NIPPON』の登録メンバー、32選手が発表され、石川祐希、髙橋藍、西田有志といったトップ選手が名を連ねた。今回選抜されたメンバーが、パリ五輪までの合宿や大会に参加し、決戦の舞台に立つ。
そのメンバーの中に、未来の日本代表エース候補がいた。西山大翔(ひろと)選手21歳。
身長193センチ。バレーボール界のエリート街道を歩みながら、バレーを辞め自宅に閉じこもるという苦しい経験を経てコートに戻って来た若き選手だ。
その歩みと将来への可能性を、本田真凜さんが取材した。
髙橋藍「彼のサーブは破壊力がある」
この日、大阪にあるパナソニックの本拠地を本田真凜さん訪ねました。練習が行われている体育館に足を踏み入れるとこんな感想が。
「フィギュアスケートの練習だと静かで、曲が流れている感じなんですけど、ボールの音が想像以上に響いてますね」(本田)
この記事の画像(12枚)西山大翔選手は、日本の絶対的エース・石川祐希選手にも引けを取らない跳躍力を誇り、その高いスパイクは、多くの先輩も一目おく存在です。
パナソニックでチームメイトの西田有志選手はこう語ります。
「僕がケガをしている時にずっと試合に出てチームを勝たせているので、日本代表に絶対に入ると思いますよ」
イタリアで活躍する日本代表の髙橋藍選手は「彼のサーブは破壊力もありますし、サーブスキルは非常に高いですね」と評価。
髙橋藍選手が絶賛したのは、西山の強烈なジャンプサーブ。
そのサーブの特徴を日本代表の守備のスペシャリスト、山本智大選手に受けてもらい印象を聞いてみました。
「ジャンプサーブって、普通は回転がかかって来るんですけど、(西山のサーブは)あまり回転がかからないので、捕りづらいですね」「今のサーブもだいぶ曲がってきたので。ちょっとウザい。仲間で良かったです」(山本)
日本のトップリベロの反応に、西山選手は「相手が嫌がってくるのはすごく感じたので、頑張りたいと思います」控え目ながらもこう語り、手応えを感じていました。
バレー部を退部、大学中退。挫折からの復帰
西山選手は、高校時代には東海大相模高校で、春高バレー日本一に青春を捧げ、大学も名門・東海大学に進学。エリートコースを歩んで来ました。
しかし、そのわずか半年後にはバレー部を辞め、大学も中退。
バレーに対する情熱を失い、ボールに触れることすら避けていたと言います。
本田:
一度バレーから離れようと思ったのか、完全に辞めようと思ったのか。どちらですか?
西山:
完全に離れようと思って家でダラダラしてました。本当になにもやることがなくて、仕事を探そうと思っていました。
自宅にこもり、漫画やアニメに没頭する日々。心を閉ざすその姿に、見守った家族も苦しんだといいます。
バレーボールを辞めて9カ月。そんな西山選手に声をかけ、バレーへの情熱を取り戻すきっかけをくれたのが、現在の所属チーム・パナソニックでした。
白澤健児コーチはこう語ります。
「辞めた背景は分からなかったが、バレーのプレーを見てポテンシャルは凄くあったので辞めるのはもったいないと思いました」
名門チームにその能力を買われた西山選手は、この時の誘いを受けてバレーボールに復帰。すると徐々に、閉ざしていた心を開き始めます。
「(以前は)あまり自分から言葉を発さなくて、本当に『はい』『いいえ』ぐらいしかなかったんですけど、去年のプレーオフですかね。サーブを決めた時に地面を叩いてまで喜んでいる姿を見て、こんなことをするんだと。強い成長を感じました」(白澤コーチ)
3月31日に出場した決勝戦でも、西山選手は高さのあるスパイクを決めれば、大きなガッツポーズ。
一番の武器であるサーブは決まらず、試合に敗れると涙。そこには感情を全面に出す西山選手の姿が。バレーへの情熱を完全に取り戻しているように見えました。
試合後、本田さんが話を聞くとーー。
「(今日は)いいプレーが出来ませんでした。この悔しさを日本代表でぶつけて行きたいと思っています」西山選手は表情に悔しさをにじませながら、こう語りました。
若くして将来を期待されながら、バレーボールも大学も一度は辞めてしまった苦しい時代からの復帰。挫折を知る選手だからこそ学んだ“強さ”を糧に、日本代表としての飛躍が期待されます。
『すぽると!』
4月20日(土)24時35分
4月21日(日)23時15分
フジテレビ系列で放送