まもなく新学期。「おさがり学生服」という取り組みをご存じだろうか。福井県内では2023年に始まった事業で、不要になった制服をクリーニング店が仲介し、必要な人につないでいる。また、制服だけではなくランドセルでも同様の事業が行われている。
どんな仕組みなのか、取材した。

その学生服捨てるのちょっと待った!

福井・越前市の「カワイクリーニング」。

この記事の画像(10枚)

明治10年創業、約150年続く老舗クリーニング店5代目の河合隆輝(たかてる)社長が「おさがり学生服」の発起人だ。

「おさがり学生服」とは、家庭で不要になった学生服をクリーニング店が無料で引き取り、回収した学生服をクリーニングする。

そして、学生服を必要とする家庭がクリーニング代を負担して、譲り受けることができるというサービスで、現在90店舗で回収し、そのうち30店舗で受け渡しを行っている。クリーニング店はいわば“学生服の橋渡し”役をしている。

カワイクリーニング・河合隆輝社長:
子供のPTAの役をやっていて、学校でやっている学生服のリサイクルを保護者でやれないかと依頼があった。クリーニング店で何か手伝えないかと提案したのがきっかけ。

最初は1店舗で始めたこの事業。予想以上の反響があり、より広いエリアで展開しようと、2023年春から組合全体で動き出した。

クリーニング店ならでは 新品に近い状態

河合社長によると、利用者は「思い出がある学生服を捨てるのはもったいない。捨てるなら違う人に譲ってほしい」という思いから来店しているという。

また、必要としているのは「あと1年だけどサイズが合わなくなった」と短期間の利用を前提としている人が多いという。

河合社長は、学生服を新品にすることはできないが、新品に近い形で次の人に気持ちよく使ってほしいと話す。「どうしても首回は擦れる所なのと、袖口が鉛筆ですれるので黒ずみができやすい。前処理をしてから洗うときれいになる」と話し丁寧に汚れを落としていた。

組合では、卒業などで使わなくなったりタンスに眠ったりしている学生服の提供を広く呼び掛けている。徐々に制服が集まってきている一方で、課題もある。

カワイクリーニング・河合隆輝社長:
在庫情報はHPに記載されているが、学校や地域によっては偏りがあるのが現状。在庫数をもっと増やしたいので、もっと多くの人に知ってもらえたらと思う。

福井市のランドセルリサイクル事業

一方、福井市役所では、家庭で使われなくなったランドセルを集め、必要としている市内の家庭へ無料で譲る事業をしている。

その名も福井弁で「もらってください」を意味する「福井市ランドセルもらってんで事業」。福井市内に住んでいて小学校に1年以内に入学する予定がある、または既に通っている児童がいる家庭が対象となっている。
2018年度にスタートし、これまでの利用者数は約150人とのこと。

福井市こども政策課・手島隆暁さん:
大切な思い出が詰まったランドセルを再利用したいという思いで持ってきてくれている。また持って帰る人はたくさんの色や種類に驚かれて、選んだ後は新しい生活が始まることを喜んで帰って行かれている。

学校用品のリサイクル事業は、子育て世代の負担を減らすだけではなく、物を大切にする子供たちの心を育み、持続可能な社会の実現につながる。

反響の背景には、学校用品を積み重ねて買うことの費用負担や物価高があり、SDGsの観点から「おさがりでもいい」という親が増えているのかもしれない。

(福井テレビ)

福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。