2024年、15年ぶりに復活を果たした社会人の野球部「日産自動車九州・硬式野球部」。夢を追う選手たちに密着した。

15年の休部を経て…チーム再結成

2024年1月―。福岡・苅田町の「日産スターグラウンド」で汗を流す男たちの姿があった。チーム最年長の古川大晃選手(30)も若手に負けじと汗を流す。

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古川大晃選手(チーム最年長):
気合です。「ベテランやけん遅い」とか、そういうの嫌なんで。背中を見せるじゃないですけど、一生懸命走ったら下の子も一生懸命走る

練習を再開した日産九州野球部。しかし、このチームには長い「空白」があった。

植山文彦監督:
こうやって平日の昼間に練習できてることが、ちょっと信じられないね。長かったけど、「やっとここまで来れたかな」っていうところがありますね

野球部復活を待ち続けてきた植山文彦監督(55)。かつて日産九州野球部は、日本選手権9回出場するほどの強豪だった。

しかし、2009年の「リーマン・ショック」による業績不振などにより、野球部は休部。OBを中心に「苅田ビクトリーズ」という地域のクラブチームとして活動を継続していたが、企業からの金銭的支援はなくなっていた。

2023年9月、業績の回復などを理由に日産は、15年ぶりとなる野球部の復活を発表。苅田ビクトリーズの選手を中心にチームは再結成された。企業の名前を背負い野球ができるようになったのだ。

選手たちの日常も一変した。クラブチーム時代は日勤、夜勤など仕事を終えた後に各自で練習だったが、現在は、午前中は仕事、午後からはチームで集まって野球という生活に変化している。

「6月の都市対抗で西部ガス(福岡)とかホンダ(熊本)とか、やっつけるために何をするべきか(小川正洋コーチ)」「トーナメントなので、一発勝負の厳しさがあるのが社会人野球。その中で戦い抜かなきゃいけない(植山文彦監督)」と、首脳陣にも気合が入る。

新たな“覚悟”で最高峰の舞台を目指す

再び動き出した野球部のスローガンは、「覚悟」だ。

植山文彦監督:
基本を作らなきゃいけない。重要な1年目だと思っていたので、やはりそういう厳しい状況を長く知ってる古川(選手)の力が必要だと判断したので

古川大晃選手は、苅田ビクトリーズの時から13年目のベテラン選手だ。若手を育てるためコーチも兼任している。

古川大晃選手:
若い子たちの方が成長も早いので、(私の)一番の役割っちゅうのは、やっぱりチームが落ち込んだ時に流れを変える一打とか、そういったところ

日産九州野球部の目標は、東京ドームでの都市対抗野球大会出場。全国約320チームから勝ち残った32チームが、各都市の代表として戦う社会人野球、最高峰の舞台だ。

企業の名前を背負うことの厳しさもある。
神田ビクトリーズの解散式で、植山文彦監督は「今回を機に次のチームに進めなく、退部となった8名の方がいらっしゃいます」と挨拶した。
日産九州の野球部となったことで、チームから離れざるを得ない選手もいるのだ。

現役を引退した野村尚樹さんは、「そういう世界なので僕も受け入れるしかないところがあるので、『そこは分かりました』と」と振り返った。

同じく現役を引退した福留大志さんも「言われた時は結構辛かったんですけど、やっぱり良い先輩たちと後輩に恵まれたんで、次は応援する側として頑張ろうかなと」と語った。

復活後初の公式戦 勝負の行方は…

そして3月25日、復活した日産九州野球部として初の公式戦を迎えた。九州地区の社会人野球は、ホンダ熊本や西部ガス、JR九州など強豪揃いだ。
この日は、古川選手の妻・優海さんも応援に駆けつけた。

古川優海さん:
「身体がついて行ければ良いかな」と思うんですけど。本人の満足行くところまでやってもらって、悔いが残らないように

「さあ、行こう! うおーーい!」、試合前の円陣にも熱がこもる。

初戦の相手はKMGホールディングス(福岡市)だ。
古川選手はベンチスタートで、1塁ランナーコーチを務める。

試合は序盤、なかなか出塁できず、無得点が続く。5回までに2失点の試合展開だった。
しかし6回、2、3塁とチャンスを作ると相手のミスで得点し、1点差に迫る。

最終回、1点差の場面で末石選手の打球の行方は…
最終回、1点差の場面で末石選手の打球の行方は…

そして迎えた最終回。先頭は、苅田ビクトリーズ時代からチームを支えてきた末石選手。その5球目、フルスイングの一発が飛び出した。

場内アナウンス:
日産自動車九州、末石選手、同点のソロホームランでございます!

同点のソロホームランだったが、延長で追加点を許し、初戦を落とした。
古川選手は、この日の出場はなかった。

試合後の挨拶で植山監督は、「失敗して悔しがって帰ってくるくらいないと(ダメ)。都市対抗だったら、もっとプレッシャーかかるよ」と語った。

古川大晃選手:
「日産のユニフォームを着られた」という、うれしさはあるんですけど、いろんな反省が出たんで、(きょうの)悔しさを忘れずに

日産九州野球部の復活は、地元の苅田町も歓迎している。
町の担当者は「成長する苅田町の象徴になってほしい。都市対抗野球大会に出場できたら町代表になるので期待しています」と、今後の戦いに胸を膨らませている。

15年ぶりに復活した日産九州の野球部。社会人野球の頂点、東京ドームへの道のりは始まったばかり。都市対抗野球の予選は、4月27日から行われる予定だ。

(テレビ西日本)

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