中国のSNSに投稿された、海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」をドローンで撮影したとみられる映像が物議を醸している。撮影は法律で禁止されており、映像が本物だとすれば安全保障上の大きな問題となるが、専門家はAIによるフェイクの可能性が高いと指摘している。
誰が撮影した?護衛艦「いずも」のドローン映像
何者かがドローンで撮影したという15秒の映像。

映っていたのは、海上自衛隊横須賀基地に停泊する護衛艦「いずも」とみられる。全長248mの「いずも」は、海上自衛隊が持つ最大の護衛艦だ。
横須賀基地など防衛施設上空でドローンを飛ばすことは法律で禁止されている行為だ。しかし、映像の投稿者のコメントには「日本の空母をドローン撮影した」という言葉が並んでいた。

映像が投稿されたのは中国のSNS。すでに映像は消されていて「いずも」とみられる画像が3枚だけ残されていた。
この撮影者不明のドローン映像は、たちまちSNSで拡散。こんな過激な書き込みまで登場した。
「中国のスパイがドローンを使って上空を飛行した」
「これが人民解放軍による侵入で、爆発物を積んだドローンで発射していたら、何が起こっていたのか」
専門家は「フェイクの可能性高い」と分析
海の防衛の要と呼ばれる「いずも」。現在、F-35B戦闘機が離着陸できるように改修を進めていて、2026年度中にも事実上の空母になるとみられる。
海上防衛の拠点として、重要な役割を担う横須賀基地の上空をドローンが勝手に飛んだとなれば、安全保障上の大きな問題となる。

映像を見ると、「いずも」に掲げられた旗は風にはためき、海面も波が揺らいでいるのが確認できた。さらに「いずも」の後ろに映る道路には、数台の車が走っていた。しかし、軍事ジャーナリストの高橋浩祐氏は、ある違和感を感じたという。

高橋氏は「いずもの艦番号は183なんですが、船の甲板にはその下2桁の83が必ず記されている。(映像の船には)8はあるが3は書かれていない」と指摘。

問題の映像に映った船の甲板に書かれた「8」という数字。一方、本物のいずもの甲板には「83」と記されていた。こうしたことから専門家は、人工知能=AIで作られたものではないかと推測する。高橋氏は「私はフェイク。まがいものの可能性が高いと見ています」と分析している。
生成AIの技術で可能
では、AIでこのリアルなドローン映像を作成できるのか。

AIに詳しい、東京工業大学の笹原和俊教授は「原理的には現在の生成AIの技術を使えば、土台となる写真だったり動画を持っている方であれば、原理的にはこういうものは作れてしまいますね。AIの技術は進歩したのだなということを印象づける動画ですね」と説明する。
防衛省の関係者からも「フェイクなのではないか」との声が上がっている。海上自衛隊は映像について「コメントは差し控える」としている。
「イット!」は、問題の映像を投稿した人物に話を聞くために取材を申し込んだが、これまでのところ返信はなかった。
(「イット!」 4月1日放送より)