小林製薬の紅麹原料を使ったサプリメントで健康被害が相次いでいる問題で、小林製薬が原因物質について、プベルル酸の可能性があると厚生労働省に報告したことがわかった。

原因物質は「プベルル酸の可能性」

小林製薬が、健康被害のあった製品のロットに予定しない物質を検出したため、「高速液体クロマトグラフ」という手法で分析したところ、プベルル酸の数値が高かったという。

“未知の成分”は「プベルル酸の可能性」
“未知の成分”は「プベルル酸の可能性」
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厚労省によると、プベルル酸は青カビの天然化合物で、抗生物質の特性を持つことが知られていて、毒性が非常に高いという。
ただ腎臓に対する障害は現時点では明らかになっていないとしていて、あらゆる可能性を検討し調査を進めていくことにしている。

「プベルル酸」という新たなワードが出てきたが、小林製薬はすでに3月22日の会見の中で、紅麹原料内に想定していない“未知の成分”という言葉を使っていた。これが混入していた可能性が否定できない、これらが腎疾患の原因となった可能性が否定できないというのは事前にあった。

そんな中、29日の会見では…

小林製薬の会見(午後2時過ぎ): 
(“未知の成分”について)この1週間で構造まではだいぶ見えてはきております。もしわれわれが想定している化合物であるとするならば、カビから生成される可能性はある。こちらは現時点、否定はできないと思っておりますが、これから先は、国の研究機関の方々にわれわれが持っているデータを提供しながら、迅速に解明を進めていきたいというふうに考えております。

おそらく、この“未知の成分”というものがプベルル酸であろうということがわかってきたが、このプベルル酸というのは具体的にはどういうものなのか?

名古屋大学・柴田玲特任教授
名古屋大学・柴田玲特任教授

サプリなどにくわしい総合内科専門医・柴田玲名古屋大学特任教授に聞く。

名古屋大学・柴田玲特任教授:
カビから生成される物質ということなんですけども、われわれもあまりなじみのないものなんですね 。そういった意味ではまだ、例えば腎臓に対してどのくらい毒性があるのかとか、そういった部分に関しても多くの報告がありませんから、これからいろいろと検討が必要な、まずは原因の物質であろうというところがようやく判明したというところという段階じゃないかと思いますが、少しなじみのない物質ではありますよね。

これまでは紅麹菌が、そもそもやはりカビ菌というところで、「シトリニン」というカビ毒が発生したのではないかという見立てがあったが、小林製薬として、そういうシトリニンが発生するような紅麹菌を使っていなかったと。製造工程の中で、このプベルル酸というのは出てきてしまうものなのか?

名古屋大学・柴田玲特任教授:
おそらくそういうことだろうと思います。やはり紅麹菌とは別のカビなどの異物が混入して、そこから生成されたものがプベルル酸であるんじゃないかということになっていくかと思いますね。

例えば何者かが製造工程に混入させた、外部から入れた可能性も否定できないというところがあったが、その可能性についてはどうなのか?

名古屋大学・柴田玲特任教授:
なかなか難しいとは思うんですけど、やはりその施設が厳重に管理してあるということであれば、なかなかそのへんはどうなのかということがありますけど、やっぱり想定外のことが起こっているのは間違いないんじゃないかと思いますね。

このプベルル酸、青カビの天然化合物で抗生物質の特性を持ち、なおかつ毒性が非常に高いということだが、例えば人体に対してどのように作用するのか?

名古屋大学・柴田玲特任教授:
このあたり、まだわかってないんですけども、いわゆる抗生物質の作用とか、いわゆるマラリアとかに対しての作用があるんじゃないかとかいう報告は少し出ているんですけども、まだ腎臓に対してどういった機序で発毒性を発揮するのかとかいう部分はちょっとブラックボックスのところが多いです。

まだ特定されたというよりも、可能性があるという段階なので、引き続き調査の結果を注視していかなければならない。

死亡者は5人に 70代〜90代の男女

小林製薬の紅麹を使ったサプリメントで健康被害が相次いでいる問題で、亡くなった方が28日から1人増えて5人になった。

そして29日午後の会見で、70代から90代の男女であるということが明らかになった。
さらに東京都は、都内で25人の健康被害が疑われるということを明らかにした。

亡くなった方は70代から90代の男女である。この健康被害と年齢との因果関係というのはどう見ているか?

名古屋大学・柴田玲特任教授:
28日の時点では年齢などがはっきりしなかったんですけども、報告の中では高齢者であるということがわかったという点、やっぱり腎臓っていうのは年齢とともに機能が落ちてしまうという特徴があります。そのうえに腎臓に対して毒性があるものが加わるということになると、やはりどうしても腎臓の重症化というものが起こりやすいということになりますので、有害事象が起こる場合というのは、ご高齢の方のほうがどうしても起こりやすいということにはなるかと思います。

そこにこの毒性が非常に高いというプベルル酸だった場合に、死まで至る可能性というのも否定できないのか?

名古屋大学・柴田玲特任教授:
そうですよね。はい。

自主回収を行っている会社は66社に

そして会見では、自主回収の動きに対しても言及があった。

FNNの集計では自主回収を行っている会社は66社(3月29日現在)
FNNの集計では自主回収を行っている会社は66社(3月29日現在)

FNNの集計では、自主回収を行っている会社は29日午後3時半時点で66社ある。

詳細を見ると、スーパーやコンビニエンスストア、酒店であったりとか、食品、お酒、パンなどもある。

小林製薬のように回収命令が出ていなくても、企業で回収するというところや健康被害がまだ確認されていなくても行っているところもあるという状況。

この自主回収についても、29日の会見で言及があった。

小林製薬の会見(午後2時過ぎ): 
(自主回収について)先週の記者会見で申し上げた18億円は、その時点での推計値でありましたけども、今このような状況に想定以上に広がっておりまして、それ以上の費用がかかっていくのではないかと想定しております。

ほかにも、小林製薬の初動の遅れについても記者から追及があった。

小林製薬の会見(午後2時過ぎ): 
(初動の遅れについて)批判に対しては、私ども言葉もございません。当初は原因が何であるのか、そもそも「紅麹」が原因であるのかどうかということがまったくわからない状況でございましたので、ガイドラインに基づいて、また外部のアドバイスも聞きながら、判断をしておりました。われわれとしては、力を注いで急ぎ取り組んでおりましたので。

初動が遅れたことについての「批判に対しては言葉もございません」という会見での発言、2カ月以上かかっているということがあった。

その間にも、その該当商品を摂取していた可能性があるが、この初動の遅れという点をフジテレビ・立石修取材センター室長はどう見ているか?

フジテレビ・立石修取材センター室長:
当初状況がわからず、公表に時間がかかったということで、プベルル酸の存在もあるので時間がかかったということはわかるが、いずれにしても時間がかかったことは否めない。またこのわからないという状況も含めても、これからは即時に情報を公開していく、また29日の記者会見では、中国の記者の方からも質問などが出てきた。そのため国際的な広報の必要性もあるかと思う。

そしてこの問題では、問題となったサプリなどに表示されていた機能性表示食品のあり方も国会で議論された。

武見厚労相も制度の見直しについて検討する可能性を示唆したが、この現在の機能性表示食品というのはどういったものなのか?

名古屋大学・柴田玲特任教授:
同じような食品の中に、いわゆる「トクホ」、特定保健用食品というものがあるんですけど、こちらは安全性や有効性について国の審査がありますが、この機能性表示食品に関しては、これは国の審査が届出のみとなっています。国の審査にの安全性や有効性については含まれないということになるんですよね。そういった意味では、事業者の責任の中で安全性が担保されるっていうところになるため、その安全性の部分がどうなのかという部分が事業者に委ねられるブラックボックスになるという部分は、ちょっと不安な点というのは言えるかと思います。

今後、特定保健用食品の制度の見直しという点も議論されていくことになると思われる。
(「イット!」3月29日放送より)

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